ユーゴトン

ユーゴトン：旧ユーゴスラビアを代表するレコードレーベル

ユーゴトン（Jugoton）は、かつて存在したユーゴスラビア社会主義連邦共和国において、最大のレコードレーベルであり、レコード販売店チェーンでした。本社はクロアチア社会主義共和国のザグレブに置かれ、ユーゴスラビアの音楽文化を大きく支えました。

歴史

1947年に創設されたユーゴトンは、ユーゴスラビアを代表する数多くのロック、ポップスアーティストの作品を世に送り出しました。ビイェロ・ドゥグメ、アズラ、エレクトリチュニ・オルガザム、イドリ、ハウストル、プラヴィ・オルケスタル、レブ・イ・ソルなどのアルバムや、重要なコンピレーション・アルバム『Paket Aranžman』などをリリースし、ユーゴスラビアの音楽シーンを彩りました。

また、ユーゴトンは海外の著名アーティストの作品をユーゴスラビア国内で販売するライセンスも取得していました。ビートルズ、エルヴィス・プレスリー、ローリング・ストーンズ、マドンナ、U2、デヴィッド・ボウイ、ユーリズミックス、ケイト・ブッシュ、パブリック・イメージ・リミテッド、クラフトワーク、クイーン、ディープ・パープル、ピンク・フロイド、アイアン・メイデンなど、錚々たるアーティストのアルバムがユーゴトンを通じてユーゴスラビアの人々に届けられました。さらに、ユーゴトンはユーゴスラビア連邦全域に広がるレコード販売網を築き上げ、音楽文化の普及に大きく貢献しました。

ユーロビジョン・ソング・コンテスト1989の優勝者であるリヴァをはじめ、数多くのユーロビジョン・ソング・コンテストのユーゴスラビア代表がユーゴトンと契約を結んでいました。

ユーゴスラビア崩壊が進む1990年、ユーゴトンは社名をクロアチア・レコーズへと変更し、現在もクロアチアの音楽シーンを支え続けています。

競合相手

ユーゴスラビア社会主義連邦共和国時代、ユーゴトンと競合した主なレコード会社としては、以下のものが挙げられます。

PGP-RTB（本社ベオグラード、後にPGP-RTSに改名）
スージー（本社ザグレブ）
ディスコトン（本社サラエヴォ）
ZKP RTLJ（本社リュブリャナ、後にZKP RTVSに改名）

ユーゴノスタルギヤ

ユーゴトンはユーゴスラビアの大衆文化の重要な一部であり、その名前はユーゴノスタルギヤ（ユーゴスラビアへの郷愁）の対象となっています。

マケドニア共和国のスコピエにあるショッピング・モール「Gradski Trgovski Centar」にあったユーゴトンのレコード販売店は、マケドニアのレコード会社Lithiumによって、現在も同じ商号で営業を続けています。また、オーストリアのウィーンに拠点を置くユーゴスラビア系移民が運営するインターネットラジオ、WebTVの放送局は「ユーゴトン」と名付けられています。同局では、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国時代の楽曲のほか、現代の旧ユーゴスラビア各国のポップス、ロック、民俗音楽などを放送しています。ただし、この放送局はレコード会社のユーゴトンとは無関係であり、放送される楽曲もユーゴトンのものではありません。

『Yugoton』

ユーゴトンは、西側諸国への旅行が困難であった鉄のカーテンの東側の国々でも人気がありました。東側諸国では、西側の音楽を入手する数少ない方法の一つが、東側諸国と同じ社会主義体制をとりながらも、西側諸国からの影響に寛容であったユーゴスラビアを訪れることでした。ユーゴスラビアのレコード会社は、東側諸国ではカルト的な人気を博し、西側の大衆文化の象徴となっていたのです。

ユーゴトンを偲んで、ポーランドでは2001年に「ユーゴトン」（Yugoton）と名付けられたコンピレーション・アルバムが制作されました。アルバムには、エレクトリチュニ・オルガザム、イドリ、バヤガ・イ・インストルクトリ、ハウストル、プルリャヴォ・カザリシュテ、パルニ・ヴァリャクなどのユーゴスラビアのアーティストの楽曲のカバーが収録されています。これらの楽曲は、カタジーナ・ノソフスカ、パヴェウ・クキス、オラーフ・デリグラソフ、ティモン・ティマンスキなどのポーランドのアーティストによってポーランド語で録音されました。

東側諸国におけるユーゴスラビアのレコードやユーゴトンに関する描写は、東ドイツの映画『Sonnenallee』にも見られ、レコードを密輸するシーンが登場します。

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