ヨシフ・ブロツキー

ヨシフ・ブロツキー

ヨシフ・ブロツキー（Ио́сиф Бро́дский、1940年5月24日 - 1996年1月28日）は、ロシアの著名な詩人であり随筆家です。彼は、1987年にノーベル文学賞を受賞し、1991年から1992年にはアメリカの桂冠詩人に指名されました。アカデミックな世界でも高く評価され、シレジア大学からは名誉学位を授与されています。

幼少期と教育

ブロツキーは、ソビエト連邦下のレニングラードでユダヤ人家庭に生まれました。父親はソ連海軍の写真家であり、彼は第二次世界大戦のレニングラード包囲戦を生き延びた経験を持っています。15歳で学校を卒業した後、彼は潜水艦乗組員の養成校への進学を試みますが、実現することはありませんでした。その後、彼は旋盤工としての職に就き、内科医になる夢を追い求めてクリスティ刑務所の死体安置所で働くことになります。このように、彼の職業人生は多様であり、病院や船のボイラー室、地質調査など多くの仕事を経験しました。

文学の道へ

独学で学び続けたブロツキーは、1957年頃から詩を執筆し始め、文学作品の翻訳にも取り組みます。彼の作品は常に政治的な要素から離れており、若い作家として知られるアンナ・アフマートヴァに識られ励ましを受けながら、彼の詩業は徐々に発展していきました。彼は英語、ポーランド語を学び、著名な詩人チェスワフ・ミウォシュの作品翻訳にも携わっています。

権威との対立

1963年、ブロツキーはソ連当局に逮捕され、「寄生」という罪で告発され、5年間の国内流刑と強制労働が言い渡されました。彼はアルハンゲリスクでの18ヶ月の服役を経て、国内外の著名人たちの抗議によって1965年に刑は減刑されます。ブロツキーはその後も多くの作品を西側諸国や地下出版を通じて発表しました。

1987年にはノーベル文学賞を受賞し、英国の作家ジョン・ル・カレとの昼食中にその知らせが届いたとされています。1989年には名誉回復が成し遂げられ、1991年のソ連崩壊後には彼の著作がロシア国内で正式に出版されました。

アメリカでの活動

ブロツキーは1972年にソ連から国外追放された後、1980年にアメリカ市民権を取得しました。ミシガン大学で教鞭を執り、その後コロンビア大学やニューヨーク市立大学、スミス大学、さらにはケンブリッジ大学でも教壇に立つことになります。これらの大学での教職は、彼の文学的影響力をさらに広げることに寄与しました。

受賞歴と晩年

ブロツキーは、1986年に全米批評家協会賞を受賞し、1991年にはストルガ詩の夕べ金冠賞も手にしています。彼は1995年にサンクトペテルブルク市から名誉市民称号を授与されましたが、ロシアから帰国することは生涯ありませんでした。

1996年1月28日、心臓発作によりブルックリンの自宅で亡くなります。享年55歳。彼の遺体は紆余曲折を経て、1997年にヴェネツィアのサン・ミケーレ島に埋葬されました。ブロツキーはその独創的な詩とエッセイを通じて、世界中の文学界に深い影響を与え続けています。

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