ライセンスの互換性

ライセンスの互換性（License compatibility）とは、著作権に基づく著作物に適用されるライセンス、特にソフトウェアパッケージのライセンスにおいて、異なるライセンスを持つ著作物を組み合わせることが可能かどうかを判断する概念です。複数のソフトウェアのソースコードやコンテンツを組み合わせて新たな著作物を生成し、著作権法に則って合法的に頒布するためには、ライセンス間の矛盾がないことが必要です。もしライセンス同士の要求が相反する場合、その組み合わせは非互換となり、法的な配布が不可能になります。

概要

例えば、あるライセンスが「改変バージョンは開発者を明示する必要がある」と規定し、別のライセンスが「改変バージョンに追加の告知を求めることはできない」と規定しているとします。これらのライセンスが適用されたソフトウェアを組み合わせると、両方の要求を同時に満たすことは不可能です。このような場合、ライセンスは非互換であり、組み合わせた著作物を合法的に配布できません。ただし、各ソフトウェアの著作権者から個別に許可を得られれば、この限りではありません。しかし、特に大規模なオープンソースソフトウェアの場合、著作権者が多数に及ぶため、個別の許可を得ることは現実的ではありません。

Open Source Initiative (OSI) やフリーソフトウェア財団 (FSF) が承認しているライセンスであっても、必ずしも互換性があるわけではありません。例えば、Mozilla Public License (MPL) 1.0または1.1でリリースされたコードと、GNU General Public License (GPL) で許諾されるコードを組み合わせた場合、GPLまたはMPL 1.0/1.1の条項に違反しないように配布することは不可能です。Mozilla製品はマルチライセンスで提供されているため、このような問題は発生しませんが、一般的にはライセンスの組み合わせに注意が必要です。いくつかのよく利用されるライセンスについては、互換性の有無がリスト化されています。

GPLとの互換性

デイヴィッド・A・ウィーラーは、GPLとの互換性がソフトウェアライセンスにおいて重要であると述べています。多くの自由ソフトウェアライセンス、例えばオリジナルのMIT/Xライセンス、現在の3条項または2条項BSDライセンスとその変種は、GPLと互換性があります。これらのライセンスのコードは、GPLと矛盾することなく組み合わせて一つのプログラムにすることが可能です。この場合、結合した著作物全体は、コピーレフト性が最も強いGPLのもとで許諾されます。

コピーレフトライセンスは通常GPLと互換性がない場合が多いですが、例外条項によって、異なるライセンスやバージョンを持つソフトウェアの結合を許可することがあります。また、GPL自身のように、例外条項の追加を予め許可しているライセンスも存在します。

FSFが承認したソフトウェアライセンスの一覧には、互換性があるライセンスと非互換なライセンスの例が掲載されています。

GPLの互換性については、コピーレフトの性質が大きく影響します。例外条項がない限り、GPLを含む強いコピーレフト性を持つライセンスは、相互に両立しなくなる可能性があります。例えば、GPLの条文を直接変更したライセンスは、通常非互換になります。

コンテンツのライセンス

オープンコンテントやフリーコンテントも、ソフトウェアと同様にライセンスの互換性を考慮する必要があります。クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの講演では、自由利用可能なコンテンツに関しても標準化されたライセンスを使用すべきだと述べられています。これは、独自ライセンスを策定することでコンテンツ間の互換性が失われ、自由利用の利点が損なわれる可能性があるためです。

ライセンスの更新

著作物に適用されるライセンスがバージョン指定されていない場合や、特定のバージョン以降のライセンスが指定されている場合、新しいバージョンのライセンスを導入することで、それまで非互換であったライセンスとの互換性を実現することができます。例として、GNU Free Documentation Licenseのバージョン1.3では、ウィキペディアでGFDLライセンスされていた文書をCC BY-SAとしてリリースできるようになりました。また、Affero General Public Licenseは、フリーソフトウェア財団が作成したGNU Affero General Public Licenseへの移行のために、Affero General Public License version 2が作成されました。

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