ライヴ・アット・ジ・アポロ (B.B.キングのアルバム)

B.B.キング『ライヴ・アット・ジ・アポロ』（Live at the Apollo）

『ライヴ・アット・ジ・アポロ』は、キング・オブ・ブルースと称されるアメリカの偉大なミュージシャン、B.B.キングが1990年にニューヨークの格式高いアポロ・シアターで披露したパフォーマンスを記録し、翌1991年に公式に発表されたライブ作品です。

制作背景

このアルバムの録音は、1990年11月10日にアポロ・シアターで行われました。特筆すべきは、B.B.キングのバックを当時ジーン・ハリスが率いていたビッグバンド、「フィリップ・モリス・スーパー・バンド」が務めた点です。このバンドは、同日、B.B.キングに続いて同会場で公演を行ったレイ・チャールズのステージでも演奏を担当しています。この共演は、ブルース界の伝説的人物と、ジャズ/フュージョン界で活躍するミュージシャンを含むビッグバンドとの、異色の組み合わせとして注目されました。

収録曲の一つである「ラヴ・カムズ・トゥ・タウン」は、元々アイルランドのロックバンド、U2とのコラボレーションから生まれた楽曲です。この曲は1987年11月24日のU2のフォートワース公演で既に披露されていた他、メンフィスのサン・スタジオでのスタジオ録音も存在しており、本作ではライブバージョンとして収録されています。

評価と受賞歴

本作はリリース後、高い評価を獲得しました。特に、音楽業界で最も権威ある賞の一つであるグラミー賞において、第34回（1992年開催）で「最優秀トラディショナル・ブルース・アルバム賞」を受賞するという快挙を達成しました。これはB.B.キングにとって、キャリア通算6度目となるグラミー賞受賞であり、彼の長年にわたる功績と、このアルバムの質の高さを証明するものとなりました。

音楽評論家の間でも様々な評価が寄せられました。オールミュージックのスコット・ヤナウは、5点満点中3点を付与しています。彼はサポートを務めたオールスター級のバンドのアンサンブル自体は良好だとしながらも、彼らの個性が十分に際立っていない点や、せっかくのビッグバンドとの共演という機会にもかかわらず、B.B.キングがよりジャズ的なアプローチを試みなかった点を惜しい点として指摘しています。一方で、アルバム全体としては、B.B.キングのパワフルなライブパフォーマンスが見事に捉えられた、素晴らしい例であると高く評価しています。また、シカゴ・トリビューン紙のChris Heimは、4点満点中3点と評価し、サポートバンドであるジーン・ハリスとフィリップ・モリス・スーパー・バンドが功績の一部を担っていることを認めつつも、このショーの真の主役はB.B.キング自身であり、彼の愛器「ルシール」、そして彼ならではの深いブルースであると強調しています。これらの評価は、ビッグバンドとの共演という特殊な状況下での、様々な視点からのこのアルバムへの受け止め方を示唆しています。

収録曲

本作には以下の楽曲が収録されています。

1. ラヴ・カムズ・トゥ・タウン (When Love Comes to Town) - Bono, U2 (4:53)
2. スウィート・シックスティーン (Sweet Sixteen) - B.B. King, Joe Josea (7:25)
3. スリル・イズ・ゴーン (The Thrill Is Gone) - Roy Hawkins, Rick Darnell (3:33)
4. エイント・ノーバディーズ・ビジネス (Ain't Nobody's Bizness) - Porter Grainger, Everett Robbins (2:43)
5. ペイング・ザ・コスト・トゥ・ビー・ザ・ボス (Paying the Cost to Be the Boss) - B.B. King (2:29)
6. オール・オーバー・アゲイン (All Over Again) - B.B. King, C. Adams (7:32)
7. ナイトライフ (Nightlife) - Willie Nelson (4:03)
8. シンス・アイ・メット・ユー・ベイビー (Since I Met You Baby) - Ivory Joe Hunter (3:54)
9. ゲス・フー (Guess Who) - Jesse Belvin, Jo Anne Belvin (5:03)
10. ピース・トゥ・ザ・ワールド (Peace to The World) - Trade Martin (2:55)

参加ミュージシャン

アルバムに参加した主なミュージシャンは以下の通りです。

B.B.キング - ボーカル、ギター
ジーン・ハリス - ピアノ、指揮
ケニー・バレル - ギター
レイ・ブラウン - ベース
ハロルド・ジョーンズ - ドラムス
ジェイムス・モリソン - トランペット
ジョー・モゼロ - トランペット
グレン・ドリューズ - トランペット
ハリー・エディソン - トランペット
ジョージ・ボハノン - トロンボーン
アービー・グリーン - トロンボーン
ロビン・ユーバンクス - トロンボーン
ポール・フォウリーズ - トロンボーン
ジェフ・クレイトン - アルト・サックス
ジェリー・ドジオン - アルト・サックス
プラス・ジョンソン - テナー・サックス
ラルフ・ムーア - テナー・サックス
ゲイリー・スマリアン - テナー・サックス

このアルバムは、B.B.キングの円熟期の力強いライブパフォーマンスと、豪華なビッグバンドとの共演が生み出した、トラディショナル・ブルースの傑作として、今なお多くのファンに愛されています。

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