ラウターブルンネン-ミューレン山岳鉄道Be4/4 21-23形電車

ラウターブルンネン-ミューレン山岳鉄道 Be4/4 21-23形電車

スイス中央部、ベルナーオーバーラント地方に位置するラウターブルンネン-ミューレン山岳鉄道（Bergbahn Lauterbrunnen–Mürren、略称BLM）は、独特の地理条件を持つ路線です。氷河によって形成されたU字谷の底にあるラウターブルンネン（標高813m）を起点とし、かつてはケーブルカー（2006年まで）で谷の断崖上にあるグリューシュアルプ（標高1487m）へ連絡。そこから崖上の平坦地を走り、ミューレン（標高1639m）へと至る山岳鉄道（軌間1000mm、距離4.274km）が続いています。現在、ケーブルカー区間は索道に置き換えられています。

このBLMで使用されるBe4/4 21-23形電車は、老朽化が進んでいた1913年製や1925年製の旧型木造車体を置き換える目的で、1967年に導入された車両です。特に、1964年に発生した事故で使用不能となり廃車されたBDe4/4 13号機の代替としても必要とされました。導入されたのはBe4/4形の21号機から23号機までの3両で、同時に運行を開始しています。

本形式は、BLMの特殊な運行環境に合わせて設計されました。架線電圧525Vという比較的一般的でない電圧や、最高速度30km/hという速度制限、そして他の鉄道網から孤立し、終点のグリューシュアルプにある小規模な工場でのメンテナンスが必須という立地条件に対応するため、専用に開発されました。製造は、車体と台車をSIG、電機品と主電動機をBBCおよびSAASが担当しています。全3両とも1967年に製造されました。

車両構造

Be4/4 21-23形は、両運転台を備えた鋼製車体を採用しています。同時期にSIGが製造したヴェンゲルンアルプ鉄道の車両とも共通する、丸みを帯びたスタイリッシュな外観が特徴です。正面はなだらかなカーブを描く丸妻で、2枚窓の構成です。前照灯は丸型で3箇所に設置され、右側の灯具には標識灯も併設されています。連結器は車体に取り付けられた+GF+ピン・リンク式自動連結器です。前面下部には暖房や重連総括制御用の電気連結器、圧縮空気ホースが配置され、台車前部にはスノープラウが装備されています。

車内は、前後運転室、乗降デッキ、2等室（かつては喫煙/禁煙に分かれていたが、現在は全室禁煙）、荷物スペース付きのデッキという配置です。窓は幅1200mmの大型下降窓で、乗降扉は両開きの外開き戸、2段ステップ付きです。客室の座席は2+2列のクロスシートで、計48名の座席定員に加え、補助席が8名分設けられています。内装は木目調の壁面と明るい天井で、座席は製造時の青/赤系モケットからダークグレーに変更されています。

運転室は左側運転台で、デッキとの間に仕切り壁がある半開放式です。円形ハンドル式のマスターコントローラーが特徴的で、側窓には小型のバックミラーがあります。正面窓のうち運転席側は熱線入りです。屋根上には、両端部にシングルアーム式のパンタグラフがあり、その間に大型の主抵抗器が設置されています（後に前位側のパンタグラフは撤去）。

制御方式は抵抗制御で、主電動機は直流直巻整流子電動機を4基搭載し、1時間定格出力は各52kW、牽引力は31kNです。最高速度30km/hに対応します。電気ブレーキとしては発電ブレーキを使用します。台車は鋼板溶接構造で、円筒案内式の軸箱支持を採用し、動輪径は740mmです。

車体塗装は、下部が濃いオレンジ、上部がベージュ、扉が銀色です。「BLM」のロゴや機番はクロームメッキの切抜文字などで表示されています。台車や床下機器はダークグレーです。

改造

1980年代までに、前位側の屋根上集電装置（パンタグラフ）が撤去されました。2000年代前半には、後位側の荷物スペース側面に荷物扉が増設されています。21号機は左右両側面、22・23号機は車体左側側面に外吊り式のプラグドアが追加されました。この改造後、形式呼称がB(D)e4/4形やBDe4/4形と称されることもあります。

主な仕様

軌間: 1000mm
電気方式: DC525V 架空線式
軸配置: Bo'Bo'
最大寸法: 全長16960mm、車体長15920mm
動輪径: 740mm
自重: 24.3t
定員: 2等座席 56名（改造後48名）
主電動機: 直流直巻整流子電動機 × 4台（1時間定格出力：52kW × 4）
最高速度: 30km/h
ブレーキ装置: 発電ブレーキ、空気ブレーキ、手ブレーキ

運行

BLMの鉄道線は、前述の通り断崖の上に位置し、他の鉄道網とは接続していません。かつてはラウターブルンネンで解体・輸送された車両をケーブルカーの搬器に搭載して引き上げるという特殊な方法で車両を搬入していました。現在は索道がその役割を担っています。

通常、Be4/4形は単行（1両）で運行されます。シーズンオフには2両、冬季・夏季の繁忙期には3両全てが使用され、15分または30分間隔で運転されています。本形式の検査時など、予備としてBDe2/4 11号機が使用されることがあります。また、2010年にはアーレ・ゼーラント交通からBe4/4 102号機を購入し、Be4/4 31号機として導入しています。

終着駅のミューレンはエンジン付き自動車の乗り入れが禁止されているため、生活物資や建材などは全て鉄道で輸送されます。本形式は、グリューシュアルプ側に貨車を連結して運行することが多く、索道のゴンドラで運ばれてきた貨物パレットを、グリューシュアルプ駅に設置されたフォークリフトで貨車に積み替えるという方法が取られています。

BLMの主力として、このBe4/4 21-23形電車は、ミューレンの村の生活を支える重要な役割を担っています。

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