ラジオファクシミリ

ラジオファクシミリ（RFAX）とは

ラジオファクシミリ（RFAX）とは、無線通信を利用してファクシミリ（FAX）の送受信を行う技術です。短波帯を利用したものが広く知られており、かつては世界中で利用されていました。

歴史

ラジオファクシミリの歴史は古く、1924年にはRCAの科学者リチャード.H.レンジャーが開発した「フォトラジオ」システムによって、ニューヨークからロンドンへ写真が送信されました。これは、写真における世界初の大西洋横断無線送信でした。同年には、AT&Tのハーバート.E.アイブスが初のカラー写真の送信に成功しています。

1930年代後半には、ウィリアム・フィンチが開発した「フィンチファクシミリ」システムが登場し、家庭用ラジオ受信機で新聞を印刷する「ラジオ新聞」として利用されました。しかし、印刷速度が遅く、1ページ印刷するのに約20分、1晩で6時間もかかっていたため、タイマーを使って深夜に受信する必要がありました。

1940年代後半には、ラジオファックス受信機は小型化され、ウエスタンユニオンの電報配達車両に搭載されるようになりました。

現在の利用

画像配信手段が多様化した現在では、ラジオファクシミリの利用機会は減少しています。しかし、気象庁が船舶向けに高層天気図などの専門的な天気図を配信したり、共同通信社がファックス新聞「共同ニュース」を送信したりするなど、特定の分野では依然として利用されています。

変調方式

ラジオファクシミリでは、主に以下の3つの変調方式が用いられます。

周波数偏移変調（FSK）
RTTYと同様に、画像を白黒の2段階に量子化したデジタル信号を、それぞれに対応する周波数に割り当てて送信する方式です。
中間調（グレー）を表現できないため、網点を利用して濃淡を表現します。

周波数変調（FM）
FMラジオのように、画像の濃淡の変化を周波数の変動に対応させて送信する方式です。
連続的な濃淡の変化を表現できるため、写真のようなグラデーションを表現できます。
占有周波数が大きくなるため、フィルタ回路で周波数変動の上限と下限を制限します。
受信側の同調がずれると、白飛びや黒つぶれが起こる可能性があります。

副搬送波周波数変調（SCFM）
SSTVのように、振幅変調の副搬送波に、原稿の濃淡信号を周波数の変化に変換した信号を入力して送信する方式です。
短波帯で用いられることが多く、黒レベルを1500Hz、白レベルを2300Hzとし、黒または白レベルを同期信号に用います。
走査線は1分間に60本または120本送られることが一般的で、A4サイズの原稿を送信するのに120rpmで約12分かかります。

自動画像送信フォーマット（APT）

APT（Automatic Picture Transmission）形式は、サービスの無人監視を可能にするフォーマットで、ほとんどの地上気象ファクシミリ局や静止気象衛星で採用されています。

スタートトーンを受信するとシステムが起動します。これは、機械システムのドラムが回転速度を上げるのに十分な時間を与えるためのもので、特徴的なラスプのような音を発します。
周期的なパルスで構成される位相信号は、受信機を同期させ、画像が崩れないようにします。
オプションで、黒が続くストップトーンは、送信の終了を示します。

脚注

参考文献

文部科学省「気象庁気象無線模写通報規則」
羽鳥光俊ほか『通信技術』コロナ社 p.143 無線機器 （2007年2月15日）ISBN 4-339-08723-8

関連項目

ラジオテレタイプ
ファクシミリ放送
SSTV（スロースキャンテレビジョン）
気象通報
ナブテックス

外部リンク

気象庁　船舶向け天気図（放送スケジュール） - コールサイン JMH・JMH2・JMH4
共同通信社 - 鹿児島県漁業無線局（コールサイン JSC）とテレコムマレーシアのペナン送信所（コールサイン 9MG）から、ニュース・海況図・航行警報などを配信
福島県無線漁業協同組合 - コールサイン JFW
鹿児島県無線漁業協同組合 - コールサイン JFX

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