ラズウェル・ラッド

ラズウェル・ラッド：ジャンルを超越したトロンボーン奏者

ラズウェル・ラッド（Roswell Rudd、1935年11月17日 - 2017年12月21日）は、アメリカのジャズ界において、トロンボーン奏者、作曲家として独自の足跡を残しました。彼は、伝統的なディキシーランド・ジャズから、前衛的なフリー・ジャズ、さらにはワールドミュージックまで、ジャンルにとらわれない幅広い音楽性で知られています。

生涯と音楽的探求

コネチカット州で生まれたラッドは、イェール大学在学中にディキシーランド・バンド「イーライズ・チョーズン・シックス」に参加し、音楽キャリアをスタートさせました。その後、アーチー・シェップ、セシル・テイラー、スティーヴ・レイシーといった先駆的なジャズミュージシャンとの共演を通じて、フリー・ジャズの世界へと足を踏み入れます。1960年代には、ニューヨーク・アート・カルテットへの参加や、ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラとの共演など、数々の重要なフリー・ジャズ作品に参加しました。

ラッドの音楽的探求は、ジャズの枠にとどまりませんでした。彼は、音楽民族学の研究者として、アラン・ローマックスのワールドミュージック・プロジェクトを支援し、世界各地の音楽に触れる中で、自身の音楽に取り入れていきました。2000年代には、マリのミュージシャンとの異文化コラボレーションアルバム『MALIcool』を発表し、ワールドミュージックの要素を取り入れた新たな音楽性を開花させました。また、モンゴルの音楽グループとの共演アルバム『Blue Mongol』など、様々な文化圏の音楽家との交流を通じて、音楽の可能性を追求し続けました。

セロニアス・モンクへの敬愛

ラッドは、セロニアス・モンクの音楽を深く敬愛しており、スティーヴ・レイシーとともにモンクの楽曲を演奏、録音しました。モンクの独特な音楽性を理解し、自身の演奏に取り入れることで、モンクへのトリビュート作品を発表しています。グラミー賞にノミネートされたアルバム『モンクス・ドリーム』は、ラッドのモンクへの深い愛情と理解が込められた作品として評価されています。

教育活動と晩年

ラッドは、音楽家としての活動に加えて、バード大学やメイン大学で音楽民族学を教え、後進の育成にも尽力しました。また、アメリカ国内外でマスタークラスやワークショップを開催し、自身の音楽理論や演奏技術を伝えました。2017年12月21日、ラズウェル・ラッドは前立腺がんのため、ニューヨーク州の自宅で逝去しましたが、彼の音楽と精神は、後世の音楽家たちに受け継がれています。

主要なコラボレーション

アーチー・シェップ
スティーヴ・レイシー
セシル・テイラー
ドン・チェリー
ガトー・バルビエリ
トゥマニ・ジャバテ

受賞歴

グラミー賞ノミネート（最優秀男性ボーカル・パフォーマンス賞、最優秀ジャズ・インストゥルメンタル・アルバム賞『モンクス・ドリーム』）
ジャズ・ジャーナリスト協会 トロンボーン・オブ・ザ・イヤー
* ダウン・ビート誌批評家投票 最優秀トロンボーン奏者

ラズウェル・ラッドは、その革新的な音楽性と幅広い活動を通じて、ジャズの可能性を押し広げた偉大な音楽家でした。彼の音楽は、これからも多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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