ラズヤリョーンヌイ (駆逐艦)

ラズヤリョーンヌイの生涯：ソ連駆逐艦の軌跡

ラズヤリョーンヌイ（ロシア語: Разъярённый）は、「激怒した、猛り狂った」という意味を持つソ連の駆逐艦です。ソ連海軍では艦隊水雷艇に分類され、その生涯は多くの困難と変遷に彩られています。

起工から竣工まで

1936年9月15日、ラズヤリョーンヌイは当初「ペレドヴォーイ（先進的な）」という艦名でニコラーエフの第198工場で起工されました。この艦は7号計画型艦隊水雷艇の39番艦として、太平洋艦隊への配備が計画されていました。しかし、1937年9月17日にはコムソモーリスク＝ナ＝アムーレの第199工場に移設されます。1940年9月25日には「ラズヴィトーイ（高度に発達した、教養のある、成長した）」と改名されましたが、1941年5月16日には最終的に「ラズヤリョーンヌイ」と改名されました。

1941年5月22日に進水し、11月27日に竣工。12月14日付けで太平洋艦隊に正式に編入されました。竣工までの間、同型艦の安定性問題に対応するため、72トンの固形バラストが搭載されました。

北方艦隊への回航と試練

1942年6月から7月にかけて、ラズヤリョーンヌイは僚艦ラズームヌイと共に、北方艦隊への派遣準備を開始しました。7月15日には、嚮導艦バクー、艦隊水雷艇ラズームヌイ、レーヴノスヌイと共に第18特務遠征隊（EON-18）を編成し、ウラジオストクを出港。北極海航路を経由して北方艦隊の根拠地を目指しました。

しかし、航海は困難の連続でした。7月30日には、プロヴィデーニヤ湾で青銅製スクリューを海底に接触させ、深刻な損傷を受けます。ラズームヌイから予備のスクリューを提供してもらい交換するも、右プロペラシャフトの撓みが発覚。船体の激しい振動により、航行速度は8ノットまで低下しました。

さらに、チュクチ海では厚い氷に行く手を阻まれ、砕氷船ミコヤンとカガノーヴィチによる救出を余儀なくされました。アムバールチク湾からジクソンまでの大半の区間は、嚮導艦バクーに曳航されることになります。ジクソンでは左スクリューを青銅製のものに交換し、右側は完全に撤去。片側のスクリューだけで航行を続けながらも、試験で25ノットの速度を発揮できることが示されました。

コラ湾到着後、ラズヤリョーンヌイはアブラム＝カルガ岬で浮きドックに入渠し、1943年1月1日までに損傷箇所は修復されました。北方艦隊では「09」という識別番号が与えられ、艦首に表記されました。

北方艦隊での活動と度重なる損傷

1943年1月2日、ラズヤリョーンヌイは北方艦隊で最初の作戦行動となる連合国輸送船団の護衛任務に参加。しかし、霧の中でサーリヌイ島に接近し、船首を海底に接触させる事故を起こします。

そのわずか数日後の1月8日には、速度試験中に第2タービン発電機の故障により一時的に電力を喪失。舵が操作不能になり、サーリヌイ島の岩に乗り上げてしまいました。自力で離礁しムルマンスクへ向かいましたが、艦首は大きく損傷。修理には1943年6月25日までを要しました。

この事故の責任を問われ、艦長のN・I・ニコーリスキイ海軍大尉は懲罰大隊へ送られますが、後に名誉を回復し、終戦まで複数の艦の艦長を務め、最終的には海軍少将にまで昇進しました。

1943年後半から1944年にかけては、船団護衛や偵察哨戒任務に従事し、1944年10月のペツァモ＝キルケネス進攻作戦にも参加しました。

魚雷攻撃と大破、そして修復

1945年1月23日、ラズヤリョーンヌイはラズームヌイと共にリイナハマーリへの船団護衛任務中、ドイツ海軍のUボートU293が発射した魚雷を受けます。艦尾は205肋材まで事実上捥ぎ取られ、火災も発生。乗員38名が死亡、17名が負傷する大惨事となりました。

損傷が激しく曳航は難航。艦尾が脱落し海底へ沈んでしまいます。幸い、天候が良かったためペーチェンガまで曳航され、その後ムルマンスクへ移動しました。損傷した艦尾は、独ソ戦で戦没した同型艦ストレミーテリヌイの艦尾部分を移植することで修復されました。修復作業は1946年に完了しました。

戦後の活動と最期

戦後、ラズヤリョーンヌイには国産のレーダーやソナー、新型魚雷発射管が装備されました。76mm高角砲や37mm単装自動砲は撤去され、代わりに4基の37mm連装機関砲が搭載され、マストや上部構造も修正されました。基準排水量は1900トンに増加し、速力は34～35ノットに低下しました。

1950年代中盤には、7号計画型艦艇の旧式化が進み、新造艦の整備に伴い次々と退役することになります。ラズヤリョーンヌイも1956年2月17日に現役を退き、同年12月27日には試験船（OS-4）に類別変更されました。

そして1957年9月7日、ラズヤリョーンヌイは核実験に使用され、同年10月にノーヴァヤ・ゼムリャー沿岸に沈められ、その波乱に満ちた生涯を終えました。


ラズヤリョーンヌイは、その名の通り激動の時代を生き抜いたソ連海軍の駆逐艦でした。度重なる損傷や困難を乗り越え、戦争の終結とその後の時代まで、その姿を見届けた艦であったと言えるでしょう。

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