ラリー・コリエル

ラリー・コリエル：ジャンルを超越した革新的なギタリスト

ラリー・コリエル（Larry Coryell, 1943年4月2日 - 2017年2月19日）は、アメリカが生んだ偉大なフュージョン・ギタリストです。彼は、ジャズとロックという異なるジャンルの融合を初期から試み、独自の音楽性を確立しました。また、アコースティック・ギターを用いたジャズとクラシック音楽の融合にも挑戦するなど、常に音楽の可能性を追求し続けました。

生い立ちと初期の活動

テキサス州ガルベストンで生まれたコリエルは、1965年にジャズ・ロックバンド「フリー・スピリッツ」を結成し、翌年にはアルバム『アート・ロックの夜明け (Out Of Sight And Sound)』を発表しました。このバンドは、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズやマイルス・デイヴィスに先駆けてジャズとロックの融合を試みたグループとして、今日高く評価されています。1967年には、ゲイリー・バートンとの共演も果たしました。

ザ・イレヴンス・ハウスでの活躍

1972年、コリエルはランディ・ブレッカーらと共にフュージョン・バンド「ザ・イレヴンス・ハウス」を結成し、1975年まで同バンドを中心に活動しました。イレヴンス・ハウスとしては最後のアルバムとなった『アスペクツ』では、日野皓正と共演しています。

アコースティック・ギターへの傾倒

1975年、スティーヴ・カーンと共にアコースティック・ギターのみによるツアーを行い、以後1980年代中期までアコースティック・ギターの演奏を中心とした活動を展開しました。1978年1月には、盟友ランディ・ブレッカーと共にチャールズ・ミンガスのレコーディングに参加しています。

マイルス・デイヴィスとの幻のセッション

1978年3月2日、コリエルはコロムビアのニューヨーク・スタジオで行われたマイルス・デイビスのセッションに、T.M.スティーヴンス、菊地雅章、ジョージ・パヴリス、アル・フォスターらと参加しました。この時の音源は公式には発表されていませんが、2010年頃から非公式に出回っています。

ジャンゴ・ラインハルトへのトリビュートとアコースティック・ギター・トリオ

1979年初頭、コリエルはステファン・グラッペリと共にジャンゴ・ラインハルトのトリビュート・アルバム『ヤング・ジャンゴ』を制作しました。同年には、ジョン・マクラフリンやパコ・デ・ルシアと共にアコースティック・ギター・トリオでのツアーを行いましたが、その後コリエルに代わってアル・ディ・メオラが加入しました。自身のリーダー・アルバム『トリビュータリーズ』（1979年）では、ジョン・スコフィールドやジョー・ベックと共にアコースティック・ギター3本によるバトルを披露しています。

クラシック音楽への挑戦

1980年代前半には、イーゴリ・ストラヴィンスキーの三大バレエ音楽「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」や、「シェヘラザード」、「ボレロ」といったクラシック音楽の楽曲を取り上げました。1984年には、山下和仁との連名でヴィヴァルディ作品を取り上げたアルバム『ギター・オデッセイ - 四季』を発表しています。

その後の活動と晩年

1980年代中期以降は、エレクトリックとアコースティックの両面で活動を続けました。1994年には、渡辺香津美のアルバム『OYATSU』にゲスト参加し、1986年にはアル・ディ・メオラとのアコースティック・ギター・デュオで来日公演も行っています。

コリエルは、1980年代頃に一時日本に在住していたことがあり、多少の日本語を理解できたようです。井上陽水とも親交があり、陽水のライブでサポート・ギタリストを務めたこともあります。

2017年2月19日、ツアー滞在先のニューヨークのホテルで死去。73歳でした。

音楽的遺産

ラリー・コリエルの音楽は、ジャズ、ロック、クラシックといった様々なジャンルを融合した、革新的で創造性豊かなものでした。彼の音楽は、多くのギタリストやミュージシャンに影響を与え、今もなお愛され続けています。彼の功績は、音楽史に永遠に刻まれることでしょう。

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