ランク (アルバム)

ザ・スミスのライブアルバム『ランク』

『ランク』は、イギリスのロックバンド、ザ・スミスが1986年に録音し、解散後の1988年にリリースしたライブアルバムです。このアルバムは、バンドの転換期を捉えた貴重な記録であり、ファンにとって特別な意味を持つ作品となっています。

背景

1986年、ザ・スミスは一時的にベーシストのアンディ・ルークを解雇し、クレイグ・ギャノンを後任に迎えました。しかし、ルークは最終的に復帰し、ギャノンはセカンドギタリストとしてバンドに残留するという変則的な編成となりました。この時期に「パニック」や「アスク」といったシングル曲が録音され、アルバム『ザ・クイーン・イズ・デッド』のリリースに伴うツアーが行われました。本作『ランク』には、そのツアー中の10月23日にロンドンのキルバーンで行われた公演が収録されています。しかし、同年12月12日のロンドン公演にはギャノンは参加せず、翌1987年1月には彼の脱退が公表されました。

この時期のライブ演奏の特徴として、「マリーは恋人」と「ラショーム・ラフィアンズ」のメドレーが挙げられます。これはエルヴィス・プレスリーのカバーとバンドのオリジナル曲を組み合わせたもので、「ラショーム・ラフィアンズ」自体が「マリーは恋人」のジャムセッションから生まれたという経緯があります。

リリースと選曲

実際のコンサートでは21曲が演奏されましたが、『ランク』にはそのうち14曲が収録されています。選曲はボーカルのモリッシーによって行われました。また、BBCが制作した非売品アルバム『In Concert-399』には、本作と同日のライブ音源が収録されており、こちらには『ランク』に未収録の「ゼア・イズ・ア・ライト」、「フランクリー、ミスター・シャンクリー」、「ハウ・スーン・イズ・ナウ?」が含まれている一方、「マリーは恋人/ラショーム・ラフィアンズ」、「セメタリー・ゲイツ」、「スティル・イル」は収録されていません。

アルバムのジャケットには、テレビドラマ『電撃スパイ作戦』などで知られる女優アレクサンドラ・バステードの写真が使用されています。

反響と評価

『ランク』は、全英アルバムチャートで7週トップ100入りし、最高2位を記録。バンドにとって7作目の全英トップ10アルバムとなりました。また、日本のオリコンLPチャートでは5週トップ100入りし、ザ・スミスのアルバムとしては過去最高の30位を記録しました。

批評家からの評価も高く、オールミュージックのTim DiGravinaは5点満点中3.5点を付け、「プロダクションはモリッシーの歌声を強調しすぎているきらいもあるが、演奏は魅力的で、ヒット曲が満載だ」と評しました。ローリング・ストーン誌のジム・ファーバーは5点満点中3点を付け、「収録された曲はスタジオバージョンよりもスピードが速く、力強くなっている。このアルバムはザ・スミスが他の場所には残してこなかった彼らの憤怒を取り込んでいる」と評価しました。

収録曲

1. ザ・クイーン・イズ・デッド
2. パニック
3. ヴィカー・イン・ア・テュテュ
4. アスク
5. マリーは恋人/ラショーム・ラフィアンズ
6. 心に茨を持つ少年
7. ラバー・リング/ホワット・シー・セッド
8. イズ・イット・リアリー・ソー・ストレンジ
9. セメタリー・ゲイツ
10. ロンドン
11. アイ・ノウ・イッツ・オーヴァー
12. ザ・ドレイズ・トレイン
13. スティル・イル
14. ビッグマウス・ストライクス・アゲイン

コンサートのオープニングでは、セルゲイ・プロコフィエフ作曲の「ロメオとジュリエット」、エンディングにはシャーリー・バッシーが歌う「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」が使用されました。

参加ミュージシャン

モリッシー - ボーカル
ジョニー・マー - ギター
クレイグ・ギャノン - アディショナル・ギター
アンディ・ルーク - ベース
* マイク・ジョイス - ドラムス

『ランク』は、ザ・スミスのライブパフォーマンスの魅力が凝縮された作品であり、バンドの熱気とエネルギーを感じることができる貴重な一枚です。

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