リアルビジネスサイクル理論

リアルビジネスサイクル理論（RBC理論）は、経済学の中でも重要なマクロ経済理論の一つで、景気循環の原因を生産技術や財政政策などの実質変数に絞って説明します。この理論は、ジョン・ミュースの構想に基づいてロバート・ルーカスが初めてモデル化したもので、新しい古典派経済学の代表的な枠組みとして位置付けられています。経済には名目変数が一切関与せず、モノに関連した要因のみが景気変動を引き起こすとされるのです。

理論の前提

RBC理論の基盤を支えるのは、合理的期待を形成する代表的な個人の存在です。モデルは、1人の「最適化」を行う個人を主軸に構築されており、その行動が全体の経済を代表する形で解釈されます。この点が、RBCモデルの大きな特長となっています。また、この理論は貨幣中立性も前提としており、合理的期待から導かれる結論の一部です。

生産性に変動が生じると、個人の実質所得にも影響があります。つまり、生産性が落ち込むと、それに伴い実質的な収入も低下します。この現象は、ロビンソン・クルーソーの状況に例えることができます。代表的個人がすべての生産活動を担っているため、完全競争の労働市場においては、賃金がその人の限界生産物に一致します。

経済の動き

合理的期待のもとでは、生産性が低下する状況でも次期には再び実質所得が向上することが予想されると、選択的行動を取るようになります。つまり、代表的個人は余暇を選ばず次期に備えて働くことを選択するのです。集計的に見れば、負の生産性ショックが発生すると、自然な失業と経済活動の減少、すなわちGDPの低下がもたらされます。

この理論の重要な結論は、景気循環は市場の効率的な働きに完全に合致しているという点です。経済の動きは常にパレート効率的であり、非自発的失業は存在しないとされます。また、経済に対する財政的な介入は基本的に無効であるとされることから、政府の介入が市場の動向を改善することはないと結論付けられています。

批判と疑問

RBC理論に対する主な批判は、その前提に関するものです。合理的期待の仮定や代表的個人の存在が非現実的だとの意見が多いです。その結果、非自発的失業の否定や、短期的な貨幣の中立性に疑問を持つ声も上がっています。また、長期的な経済的な停滞の原因を生産性ショックだけに求めることに対して、様々な視点からの反論が行われています。

参考文献

- Kydland, F.E. and E.C. Prescott (1982), 'Time to Build and Aggregate Fluctuations,' Econometrica 50, 1345-1370.
- 中谷巌 (2000), 『入門マクロ[[経済学]]』（第4版）、日本評論社。
- 齊藤誠 (1996), 『新しいマクロ[[経済学]]』、有斐閣。

このように、リアルビジネスサイクル理論は、経済循環を理解する上での重要なフレームワークですが、その前提や結論には賛否が分かれる部分も多く、今後も議論が続くでしょう。

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