リジェ・JS P320

リジェ・JS P320：進化したLMP3マシン

リジェ・JS P320は、フランスの老舗レーシングカーメーカー、リジェ・オートモーティブが開発したル・マン・プロトタイプ3（LMP3）カテゴリーのレーシングカーです。国際自動車連盟（FIA）が定めるLMP3規定に準拠し、世界各地のLMP3選手権で活躍することを目指して設計・製造されました。

開発の背景と改良

リジェ・JS P320は、同社の前モデルであるリジェ・JS P3をベースに、大幅な改良が加えられたモデルです。リジェ・JS P3は、初期のLMP3規定に基づいて開発されたため、空力性能の最適化が十分ではありませんでした。特に、高速サーキットでは最高速度が競合他社に劣ることが課題でした。

そこで、リジェ・オートモーティブは、JS P320の開発において、空力性能の向上に重点を置きました。計算流体力学（CFD）ソフトウェアなどを駆使し、ボディワークの大部分を刷新。Exaコーポレーションとの協力の下、徹底的な空力解析を実施し、あらゆるサーキットで高い走行性能を発揮できるよう設計されました。

ボディワークの変更以外にも、サスペンションシステムの見直し、冷却システムの改良、安全装備の強化など、多岐にわたる改良が施されています。具体的には、オーリンズ製のダンパーを採用し、ハンドリング性能の向上を図りました。また、冷却システムの改良により、過酷なレース環境下でも安定したエンジン性能を維持できるようになっています。

安全面においても、ドライバーの保護を強化するため、ヘッドレストとシートの設計を見直し、サイドパネルにはザイロン素材を採用しました。さらに、最新のLMP3規定に準拠したトラクションコントロールシステムを搭載しています。

新型エンジンとパフォーマンス向上

リジェ・JS P320には、日産製のVK56型エンジンが搭載されています。このエンジンは、旧モデルに搭載されていたエンジンに比べて35馬力のパワーアップを実現しており、より力強い加速性能と最高速度を実現しています。

これらの改良により、リジェ・JS P320は、旧モデルであるリジェ・JS P3と比較して、大幅なパフォーマンス向上を果たしました。空力性能、ハンドリング、パワー、そして安全性の全てにおいて、より高いレベルに到達しています。

参戦選手権

リジェ・JS P320は、世界中の様々なLMP3選手権で活躍できるよう設計されています。ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ、IMSAプロトタイプチャレンジ、アジアン・ル・マン・シリーズなど、多くの国際的なレースシリーズでその姿を見ることができます。

発売と歴史

リジェ・JS P320は、2019年6月4日に正式に発表されました。これは、ACO（フランス西部自動車クラブ）が発表した第2世代LMP3規定に準拠した最初のマシンでした。ACOは2018年5月23日、2020年からの第2世代LMP3規定の概要を発表し、リジェ・オートモーティブを含む4メーカーのシャーシが新規定のホモロゲーション（型式承認）を取得したと発表しました。この新規定は、2021年までに完全に施行され、2020年から2024年までレースで使用される予定です。発表に先立ち、フランスのマニクール・サーキットでシェイクダウンテストを実施し、その性能を実証しました。

リジェ・JS P320は、最新の技術と徹底的な開発によって生まれた、高い競争力を持つLMP3マシンです。今後も世界中のレースシーンで活躍し、多くのファンを魅了していくことでしょう。

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