リスペクト (映画)

映画『リスペクト』（Respect）

2021年に公開されたアメリカの伝記ドラマ映画で、「ソウルの女王」と称される偉大な歌手、アレサ・フランクリンの激動の人生を主題としています。本作は、長編監督デビューとなるリースル・トミーがメガホンを取り、トレーシー・スコット・ウィルソンとカーリー・クーリが脚本を手がけました。主演のアレサ・フランクリンを演じるのは、圧倒的な歌唱力を持つジェニファー・ハドソン。他にもフォレスト・ウィテカー、マーロン・ウェイアンズ、オードラ・マクドナルドといった実力派俳優が出演しています。

物語の概要

敬虔な牧師の娘として生まれたアレサ・フランクリンは、幼少期から並外れた歌の才能を発揮し、父の伝道活動を歌で支えていました。両親の別居、そして10代での二度の出産という困難を経験するなど、彼女の子供時代は独特なものでした。

19歳となった1961年、アレサはコロムビア・レコードと契約しプロの世界へ足を踏み入れます。当初は大きなヒットに恵まれませんでしたが、マネージャーのテッドと結婚し、3人目の子供を授かります。キャリアの転機が訪れたのは1967年、アトランティック・レコードへの移籍でした。移籍後すぐにリリースした「貴方だけを愛して」が大ヒットし、アレサはその名を広く知られるようになります。妹たちをバックコーラスに従え、マディソン・スクエア・ガーデンでの公演を成功させるなど、「ソウルの女王」への道を駆け上がっていきます。

音楽活動の傍ら、公民権運動を推進するキング牧師の活動にも積極的に協力しますが、束縛の強い夫テッドは収益にならない慈善活動に反対し、仕事仲間との間に軋轢を生み、ついにはアレサに暴力を振るうようになります。1969年にテッドと離婚したアレサは、さらに精力的に活動し、新たなパートナーとの間に4人目の息子を迎えます。

「ソウルの女王」としての地位を守るため、過密なスケジュールをこなすうちに心身のバランスを崩し、ついには倒れてしまいます。アルコール依存に苦しむ時期を乗り越えるため、彼女は幼い頃から親しんできた教会音楽に救いを求めます。そして1972年、ロサンゼルスのバプテスト教会で行われた聖歌隊とのライブは、伝説的なアルバム『至上の愛』としてリリースされ、アレサのキャリアの中で最も成功した作品となりました。この物語は、成功の裏にあった苦悩、そして自己を再発見し再生する道のりを描き出しています。

キャスト

アレサ・フランクリン：ジェニファー・ハドソン（日本語吹替：志田有彩）
子供時代のアレサ・フランクリン：スカイ・ダコタ・ターナー（日本語吹替：山下音彩）
C・L・フランクリン：フォレスト・ウィテカー（日本語吹替：立木文彦）
テッド・ホワイト：マーロン・ウェイアンズ（日本語吹替：東地宏樹）
バーバラ・シガーズ・フランクリン：オードラ・マクドナルド（日本語吹替：アナンド雪）
ジェリー・ウェクスラー：マーク・マロン（日本語吹替：多田野曜平）
ジェームズ・クリーヴランド：タイタス・バージェス
アーマ・フランクリン：セイコン・センブラ
キャロリン・フランクリン：ヘイリー・キルゴア
ジョン・ハモンド：テイト・ドノヴァン（日本語吹替：木下浩之）
ダイナ・ワシントン：メアリー・J. ブライジ（日本語吹替：ニケライ・ファラナーゼ）
サム・クック：ケルヴィン・ヘアー
クララ・ウォード：ヘザー・ヘッドリー
スモーキー・ロビンソン：ロドリック・D・コリンズ
* ママ・フランクリン：キンバリー・スコット（日本語吹替：斉藤貴美子）

製作背景と公開

アレサ・フランクリン自身は、20年以上にわたり自身の伝記映画化を望んでいましたが、企画が具体化する前に2018年に世を去りました。彼女の死後、ジェニファー・ハドソンが主演を務める形でプロジェクトは進行し、2019年にリースル・トミーが監督に決定、主要キャストも発表されました。撮影は2019年9月からジョージア州アトランタで行われ、2020年2月に完了しました。音楽はクリス・バワーズが担当し、主演のハドソンが歌う楽曲「Here I Am (Singing My Way Home)」などが話題となりました。

当初2020年夏に予定されていた全米公開は、新型コロナウイルスの影響などで度々延期され、最終的に2021年8月13日に封切られました。公開初週末の興行収入は予想をやや下回る880万ドルで、週末ランキング4位となりました。

評価

本作は批評家からは概ね好意的な評価を受けています。映画批評集積サイトRotten Tomatoesでは支持率62%、Metacriticでは加重平均63/100を記録しています。特に主演のジェニファー・ハドソンの演技と歌唱力は高く評価されており、「ジェニファー・ハドソンの名演はリスペクトに値する」というコメントも見られます。観客からの評価はCinemaScoreで「A」を獲得しており、幅広い層に受け入れられたことがうかがえます。

もう一度検索