リソフォン

リソフォン（石琴）

リソフォンは、文字通り「石の音」を意味する打楽器です。岩石そのもの、あるいは板状やその他の形に加工された石を音源として用い、これを叩いて演奏します。一般的には、音階を持つように配列され、メロディーや伴奏パートを担当します。

歴史と各地の例

リソフォンの起源は古く、加工されていない天然の岩を直接叩いて音を出す「ロックゴング」などがその原型とされています。ケニアのビクトリア湖に浮かぶMfangano島では、先住民族が古くからこのような楽器を用いていた例があります。

東アジアでは、石材を用いた楽器が古くから存在します。ベトナムでは、約3000年前の石器時代の遺跡からリソフォンの一種が出土しており、đàn đá（ダンダー）と呼ばれるこの楽器は20世紀に入ってから復元・研究が進められています。中国では、特定の形状に加工した石片を吊り下げて並べた編磬（へんけい）が知られており、儒家の祖である孔子もその演奏を得意としたと伝えられています。曾侯乙墓からは大規模な編磬が出土し、当時の精巧な技術がうかがえます。この中国の編磬は、後に朝鮮半島に伝わり、韓国の雅楽で用いられる編磬（pyeongyeong、ピョンギョン）の由来となりました。

近代以降も、様々な形のリソフォンが制作されています。イギリスの作曲家ウィル・メンターは、スレート石の音板を用いたマリンバ型の楽器「Llechipone」を北ウェールズで制作しました。アメリカ合衆国では、ジム・ドーブルがリサイクルされたスレート製屋根材を用いて「Stonaphones」という楽器を生み出しています。ドイツの作曲家カール・オルフは、後期の作品で「Steinspiel（シュタインシュピール）」と名付けた楽器を使用しました。これは直径約21cm、厚さ約2cmの円盤状の石が用いられ、約1オクターブの音域をカバーします。

世界で最も有名なリソフォンの一つに、アメリカ合衆国ヴァージニア州のルーレイ洞窟にある「グレート・スタラクパイプ・オルガン」があります。これは洞窟内の鍾乳石を音源として利用したもので、37本の鍾乳石が西洋音階に合わせて調律されています。イングランドのカンブリア地方で産出する岩を用いた「ミュージカル・ストーンズ・オブ・スキッドー」も有名で、ケズウィック博物館やアメリカのリンギング・ロックス公園などで見ることができます。日本国内では、香川県などで産出するサヌカイトを使用したリソフォンも制作されており、その独特な音色を公共施設のBGMなどで耳にすることができます。

多様な形態と類似楽器

現代では、電気ピックアップを備えた「エレキリソフォン」も存在します。これは石の振動を電気信号に変え、アンプを通して音を出力するもので、インスタレーション作品などで利用されることがあります。

リソフォンと同様に、音階を持つ打楽器には様々な種類があります。音源の素材が異なる楽器として、金属板を用いる鉄琴やグロッケンシュピール、金属管を用いるチューブラーベル、木製の音板を用いるシロフォンやマリンバなどが挙げられます。ガラスを音源とする打楽器もありますが、ガラスをこすって音を出すベロフォンのような楽器は、リソフォンのように叩いて音を出す楽器とは演奏方法が異なるため、類似楽器とは見なされません。リソフォンは、その名の通り、石という自然素材ならではの響きと特性を持つユニークな楽器と言えるでしょう。

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