リタイ

リタイ王（พระเจ้าลิไทย, 生年不詳 - 1368年/74年）は、スコータイ王朝の第6代国王として、1347年から1368年または1374年まで在位しました。仏教に深く帰依した学者としても知られ、「マハータンマラーチャー1世」とも呼ばれています。彼は第4代国王ルータイの長子であり、第3代国王ラームカムヘーンの孫にあたります。

生涯

リタイ王は、父王ルータイの存命中にはシー・サッチャナライの総督を務めていました。父王の死後、ジャングラオ（現在のカムペーンペット）の総督であった弟との間で王位を巡る争いが起こりますが、これに勝利し、スコータイ王国の王位を継承しました。

リタイ王の治世は、衰退していたスコータイ王朝の勢力が一時的に回復した時代でした。かつてスコータイから離反した周辺のムアン（都市）を再び支配下に置き、その勢力を拡大しました。しかし、新興勢力であるアユタヤ王朝やラーンサーン王朝に対抗する必要が生じ、1362年には首都をピッサヌロークへ遷都しました。この遷都は、アユタヤ王朝との友好関係を維持し、スコータイの独立を保つための戦略的な判断でした。

また、リタイ王はインフラ整備にも力を注ぎました。特に、北部のシー・サッチャナライと南部のカムペーンペット、スコータイを結ぶプラ・ルアン街道は、彼の治世中に整備され、現在でもその痕跡が残っています。この街道の整備は、国内の交通網を円滑にし、経済活動の活性化に貢献しました。

宗教活動

リタイ王は、熱心な仏教徒であり、その治世下では多くの仏教寺院や仏像が建立されました。この時代の仏像制作技術は非常に高い水準に達しており、現在でもその芸術性の高さが評価されています。彼はセイロン島から高僧を招聘し、国内の仏教僧をガマヴァシ（町で研究と教育に携わる僧）とアルンヤヴァシ（森林地域で宗教生活を送る僧）に二分しました。また、自ら「正法王（タムマラーチャーティラート）」を称し、仏教に関する深い知識を有していたことが知られています。

彼は仏教の世界観を記述した『三界経』を著しており、これはタイ語による文学作品としては、ラームカムヘーン大王碑文に次いで古いものとされています。この著作は、仏教的な宇宙観や倫理観を民衆に広める上で大きな役割を果たしました。また、民衆の規範となるため、リタイ王自身も一時期出家しています。この出家の習慣は、後のアユタヤ王朝やチャクリー王朝の国王、そしてタイの男子に受け継がれていくことになります。

リタイ王の治世は、スコータイ王朝の文化や宗教において重要な時代であり、彼の功績は現代においても高く評価されています。

参考文献

柿崎一郎「リタイ」『タイ事典』収録（日本タイ学会編, めこん, 2009年9月）
ロン・サヤマナン『タイの歴史』（二村龍男訳, 近藤出版社, 1977年6月）

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