リチェルカーレ

リチェルカーレ（伊: ricercare）は、ルネサンス音楽および初期バロック音楽において見られる器楽曲の様式の一つです。 "ricercare"という語はイタリア語で「探求」を意味し、英語の"research"と同語源です。この名称は15世紀にはすでに使用されており、楽曲の旋法や調を「探し求める」前奏曲としての機能を示唆していました。

形式

リチェルカーレには主に2つの形式が存在します。

ホモフォニック様式: 即興的な性格を持ち、ホモフォニックなスタイルで書かれています。この形式は、いわゆるトッカータに近いものとされています。
模倣様式: フーガと同様に、複数の声部から構成され、各声部が主題を模倣し合う形式です。楽曲の冒頭で提示された主題が、次々と他の声部によって模倣されます。ただし、ファンタジアやカンツォーナと比較すると、段落が少なく、拍子が途中で変化することは少ない傾向にあります。主題は一つである場合が多いですが、2つまたは3つの主題が用いられることもあります。また、主題は楽曲の進行につれて変形されたり、装飾が加えられたりすることがあります。

主な作曲家

リチェルカーレの作曲家として、以下の人物が挙げられます。

フランチェスコ・ダ・ミラノ（Francesco Canova da Milano, 1497-1543）: 彼は多数のリュート用リチェルカーレを作曲しました。これらの作品は、ルネサンス期のリュート音楽における最高の作品群の一つとされています。
ジローラモ・フレスコバルディ（Girolamo Frescobaldi, 1583-1643）: 彼は鍵盤楽器のためのリチェルカーレを数多く作曲しました。彼の作品は、鍵盤音楽の発展に大きく貢献しました。
ドメニコ・ガブリエッリ（Domenico Gabrielli, 1651 or 1659–1690）: 彼は無伴奏チェロのためのリチェルカーレを作曲しました。これは、チェロ音楽の初期における重要な作品として知られています。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ（Johann Sebastian Bach, 1685-1750）: バッハの『音楽の捧げもの』（BWV 1079）に収録されている2つのフーガは、「リチェルカーレ」と題されています。これらの作品は、バッハの対位法技術の粋を示すものとして高く評価されています。

リチェルカーレは、ルネサンスからバロックにかけての音楽史において、重要な位置を占める器楽曲の形式です。その多様な形式と、作曲家たちの創造性によって、今日でも多くの人々に愛されています。

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