ハマシギ

ハマシギ（浜鷸）

ハマシギは、チドリ目シギ科に分類される鳥で、学名は Calidris alpina です。「alpina」はラテン語で「アルプスの」という意味を持ちますが、本種は実際にはアルプス地方よりも北の地域に多く生息しています。

分布

ハマシギは、ユーラシア大陸と北アメリカの北極海沿岸のツンドラ地帯で繁殖します。冬になると、中国南部、中東、地中海沿岸、アフリカ西海岸、北アメリカの東西海岸へと渡り越冬します。日本では、旅鳥または冬鳥として全国各地に飛来し、特にシギ類の中では最もよく見られる種の一つです。日本に渡来するハマシギの多くは、アラスカ北部で繁殖した個体群であると考えられています。

藤前干潟の調査では、一度に1,500羽もの飛来が確認されることもあります。

形態

ハマシギは、全長約21cm、翼を広げると約37cmになります。体重は37〜88gと個体差があります。他のシギ類と同様に、くちばしと足が長く、特徴的な体型をしています。冬羽は灰白色で細かいまだら模様ですが、夏羽になると頭と翼が赤っぽくなり、腹部が黒くなるのが特徴です。特に夏羽で腹部が黒くなるシギはハマシギだけであるため、この時期は容易に識別できます。雌雄は同色です。

生態

ハマシギは、その名前が示す通り、干潟や砂浜、河口などの海岸部に生息していますが、海岸部だけでなく、大規模な湖沼の沿岸部や水田、干上がった溜池でも見られます。数万羽にも及ぶ大群を形成することがあり、群れが同調して飛ぶ姿は非常に壮観です。

足環調査の結果から、これらの大群は毎年ほぼ同じ個体で構成されており、群れ間での交流は少ないことがわかっています。古くは、浜辺に住むチドリ類（シギ類を含む）を「ハマチドリ」と呼んでいましたが、このことが和名の由来となっています。

食性は肉食性で、貝類、甲殻類、ゴカイ、昆虫類、干潟表面のバイオフィルムなどを捕食します。干上がった溜池でも餌を探すことがあります。

繁殖期には、2つから6つの卵を産みますが、4つが一般的です。オスとメスが交代で抱卵し、ヒナの世話はオスが単独で行います。ヒナは約1ヶ月で飛べるようになります。

鳴き声は「ジューイ」「ジリリリ」といった濁った声や、「ピリーッ」という澄んだ声で鳴きます。

種の保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、軽度懸念（LC）に分類されていますが、日本では飛来数が減少傾向にあります。環境省や各都道府県がレッドリストに指定しており、地域によっては絶滅の危機に瀕している場所もあります。

環境省レッドリスト

準絶滅危惧（NT）

都道府県別レッドリスト

千葉県：重要保護生物（B）（環境省の絶滅危惧IB類相当）、千葉市ではA最重要保護生物（環境省の絶滅危惧IA類相当）
神奈川県：絶滅危惧II類
東京都：北多摩・南多摩・西多摩：絶滅危惧II類（区部は準絶滅危惧）
大阪府、島根県、広島県、香川県、高知県、福岡県：準絶滅危惧
奈良県：希少種（環境省の準絶滅危惧相当）
愛知県：地域個体群（ハマシギの越冬群）

近縁種

サルハマシギ Calidris ferruginea
ヒメハマシギ Calidris mauri

参考文献

日高敏隆監修、樋口広芳、森岡弘之、山岸哲 編『日本動物大百科 第3巻 鳥類Ⅰ』平凡社、1996年7月。ISBN 458254553X。
大橋弘一『鳥の名前』東京書籍、2003年10月。ISBN 4487798825。
叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7 日本の野鳥』（第2版）山と溪谷社、2006年10月1日。ISBN 4635070077。
安部直哉『野鳥の名前』山と溪谷社、2008年10月1日。ISBN 978-4635070171。
中川雄三（監修） 編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年1月。ISBN 978-4415305325。

関連項目

* 日本の野鳥一覧

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