リーグルの詩

リーグルの詩

『リーグルの詩』は、北欧神話を伝えるエッダ詩の重要な一篇であり、『リーグルの唄』、『リーグの歌』、『リグの歌』といった異称でも知られています。この詩は、10世紀中頃から12-13世紀頃に、ノルウェーまたはアイスランドで成立したと考えられています。

概要

この詩は、北欧神話に登場する神ヘイムダルが、リーグ（古アイルランド語で「王」を意味する）と名乗って人間の世界を旅し、社会の3つの階級、すなわち奴隷、農民、貴族をどのようにして作ったのかを物語っています。

物語の内容

物語の中心人物であるリーグル（リグ）は、神ヘイムダルが人間界を旅する際に用いた名前です。

ある日、リーグルは老夫婦であるアーイ（「曾祖父」の意）とエッダ（「曾祖母」の意）の家に3晩滞在し、彼らに様々な知恵と助言を授けました。その後、エッダは息子スレール（「奴隷」の意）を産み、スレールは後にスィール（「下女」の意）という女性と結婚し、多くの子孫をもうけました。これが奴隷階級の起源とされています。

次に、リーグルはアヴィ（「祖父」の意）とアンマ（「祖母」の意）の夫婦の家に3晩滞在し、同様に助言を与えました。アンマは息子カルル（原義は「自由農民」）を産み、カルルはスネール（「嫁」の意）という女性と結婚し、多くの子をもうけました。これが自由農民階級の起源です。

さらに、リーグルはファジル（「父」の意）とモージル（「母」の意）の夫婦の家を訪れ、同じように3晩滞在し、助言を与えました。モージルは息子ヤルル（「王侯」の意）を産みました。ヤルルの元に再びリーグルが現れ、自分の名前を与えて後継者としました。また、ルーン文字を教え、ヤルルは周辺地域を征服して支配を広げ、獲得した富を人々に分け与えました。その後、ヤルルはエルナ（「器用な女」の意）という女性と結婚し、ブル（「息子」の意）をはじめとする多くの子をもうけ、彼らが貴族階級の起源となりました。

物語の最後に、ヤルルとエルナの末息子であるコン（「末裔」「息子」の意、コヌング（王）の語源）が登場します。コンは多くのルーン文字に通じ、自らもリーグと名乗ったと伝えられています。

ヘイムダルの子ら

『巫女の予言』の冒頭で、人類が「ヘイムダルの子ら」と呼ばれるのは、ヘイムダルが人間の守護神と考えられていたためでしょう。この考えに基づき、社会の階級制度もヘイムダルによって定められたと解釈された可能性があります。このことから、ヘイムダルはオーディンよりも古い時代の神であるという説も存在します。

この「ヘイムダルの子ら」というケニング（隠喩的な表現）は、『巫女の予言』にのみ見られます。『リーグルの詩』が後世に伝わらなかった場合、なぜ人間がそのように呼ばれるのかが不明のままだったと考えられています。

参考文献

V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。
シーグルズル・ノルダル『巫女の予言 エッダ詩校訂本』菅原邦城訳、東海大学出版会、1993年、ISBN 978-4-486-01225-2。
山室静 『北欧の神話 神々と巨人のたたかい』筑摩書房〈世界の神話 8〉、1982年、ISBN 978-4-480-32908-0。

関連項目

ヘイムダル
ヴォルム写本 - 『リーグルの詩』を収録

外部リンク

Poetic Edda/Rígsþula - 英語版ウィキソース
Rigstula - スウェーデン語版ウィキソース
リーグルの詩 - ウィキメディア・コモンズ

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