ルノー・カングー

ルノー・カングー：小型MPVの進化と魅力

ルノー・カングーは、フランスの自動車メーカー、ルノー社が1997年から製造・販売する小型MPV（多目的乗用車）です。当初は商用車としての側面が強かったものの、その広い室内空間と高い機能性から、瞬く間にヨーロッパで人気を博し、現在では世界中で愛されるモデルとなっています。本稿では、カングーの歴史、特徴、日本市場での展開、そして数々の魅力的な特別仕様車について詳しく解説します。

カングーの誕生と初代モデル

カングーのルーツは、1960年代に開発されたルノー4にまで遡ります。その系譜を受け継ぐ小型貨物車「エクスプレス」の後継として開発されたカングーは、エクスプレスのユーティリティ性を大幅に向上させました。スムーズなハイルーフデザイン、両側スライドドアによる4ドア化（商用モデルは2ドアも設定）、セニックで好評だった独立型後部座席、充実した室内装備などにより、乗用車としての完成度を高めました。1997年の発売当初は乗用モデルと商用モデルの販売比率がほぼ同じでしたが、次第に乗用モデルの人気が高まり、ヨーロッパ市場で大きな成功を収めました。

初代カングー（1997年～2007年）は、広い荷室、運転席上部のストレージスペース、高い直進安定性、優れたハンドリング、快適な乗り心地などが評価され、人気モデルとなりました。安全面でも、ABSと4エアバッグを標準装備し、欧州の衝突安全テスト「ユーロNCAP」で4つ星を獲得するなど、高い安全性能を誇っていました。エンジンはガソリン、LPG、ディーゼルと様々な選択肢が用意され、トランスミッションは4速ATと5速MTが設定されていました。車椅子対応モデルやパノラミックサンルーフをオプション設定するなど、バリエーションも豊富でした。また、イギリスの人気キャラクター「ウォレスとグルミット」を起用したテレビCMも話題となり、同キャラクターをモチーフとした限定車も発売されました。

日本市場への進出とカングーの成功

日本市場においては、2002年3月に導入されました。当初は1.4Lガソリンエンジンと4速ATの組み合わせ、跳ね上げ式バックドアのモデルのみでしたが、その後、1.6Lエンジン、観音開きタイプの「ダブルバックドア」、5速MTモデルなどが追加されました。輸入車としては低価格で、充実した装備を誇ったカングーは、ヤングファミリーを中心に高い人気を獲得し、月間100台以上の販売を記録するなど、輸入車市場において異例の成功を収めました。その広い室内空間と使い勝手の良さから、レクリエーショナルビークル（RV）としての利用やキャンピングカーへの架装にも人気がありました。

2代目カングー：さらなる進化

2007年に登場した2代目カングー（カングーII）は、初代モデルの優れた点を継承しつつ、居住性、積載性、衝突安全性などの向上を目指して開発されました。ボディサイズは拡大され、プラットフォームも変更されました。居住空間の拡大、欧州規格1200×800mmのパレット積載に対応するなど、ユーザーからの要望に応える進化を遂げました。2016年には累計生産台数100万台を達成しました。

日本市場では、2009年にフルモデルチェンジを行い、ボディサイズが大型化（3ナンバー化）、1.6L DOHCエンジン搭載、ダブルバックドアのみの設定など、変更が加えられました。また、日本の保安基準に適合したサイドアンダーミラーの装着も特徴的です。その後もマイナーチェンジや特別仕様車の投入が繰り返し行われ、人気を維持し続けました。個性的な派生モデルである「カングービボップ」も一時販売されました。

3代目カングー：新たなプラットフォームと電動化

2021年5月に発売された3代目カングーは、CMF-C/Dプラットフォームを採用し、ボディサイズをさらに拡大しました。「マキシ」や「コンパクト」といったグレードは廃止されましたが、1.3Lガソリンターボ、1.5Lディーゼルターボエンジンに加え、EV仕様も設定されています。日本市場においても2023年に導入され、乗用モデルをベースとしながらも、商用モデルの特徴である観音開きゲートや無塗装バンパーを組み合わせたモデルが設定されるなど、日本市場特有のニーズに対応しています。

カングーの個性：特別仕様車

カングーは、その人気を支える要素として、数々の魅力的な特別仕様車を投入してきたことにもあります。「クルール」シリーズでは、日本市場限定色のボディカラーを採用したモデルが人気を博しました。その他にも、様々なコラボレーションモデルや、機能を充実させたモデルなどが設定され、ユーザーの多様なニーズに応えてきました。

まとめ

ルノー・カングーは、その誕生から現在に至るまで、常に進化を続け、世界中の人々から愛されるモデルとなっています。広い室内空間、高い機能性、そして個性あふれるデザインは、カングー最大の魅力です。今後も、新たな技術やデザインを取り入れながら、カングーは進化を続けることでしょう。

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