ルノー・モデュス

ルノー モデュス (Modus)

モデュスは、フランスの自動車メーカーであるルノーが2004年から2013年まで生産・販売したハッチバック型のコンパクトカーです。日産自動車とのアライアンスに基づき、両社が共同で開発したBプラットフォームを基盤として設計されました。このプラットフォームは日産側ではマーチなど多くの車種で用いられましたが、ルノーの開発車両としては初めての採用例となりました（ルノーの子会社であるダチアが開発したロガンに次ぐ、アライアンスBプラットフォーム採用の2例目です）。特に、このプラットフォームを共有する日産・ノートとは、一部の部品や車両のコンセプトを共通させていました。

モデュスは、そのコンパクトな外観からは想像できないほど高い室内空間設計を特徴としていました。これにより、ミニバン（MPV）と一般的な街乗り用コンパクトハッチバックの中間的な存在として位置づけられました。しかし、後にこの種のコンセプトを持つ車種が増加したことで、デザイン面だけでなく、使い勝手などの実用性においてもライバルとの差別化を図ることが販売上の重要な課題となっていきました。

アジア太平洋地域を含むいくつかの国での販売が計画されていましたが、残念ながら日本市場への導入は実現しませんでした。当時、後継モデルにあたる3代目クリオ（日本名：ルーテシア）が全幅1,700mmを超える3ナンバーサイズとなったため、一部の販売店からは5ナンバーサイズのモデュスの導入を望む声もありましたが、最終的に日本での正規販売は見送られることになりました。

開発は当初、クリオの上級モデルとしてスタートしました。2004年春のジュネーブ・モーターショーでコンセプトカーが披露され、特に開口部の広いサンルーフが注目を集めましたが、これは市販モデルには引き継がれませんでした。実際の生産と販売は同年秋から開始されています。

モデュスのリアゲートには、非常に特徴的な機能がありました。通常の跳ね上げ式ハッチドアに加え、リアウィンドウの下部のみが開く小さなドアが設けられていたのです。これにより、荷物の量や状況に応じて使い分けが可能で、特に狭い場所での荷物の出し入れや、車内への外気や騒音の侵入を最小限に抑えたい場合に便利でした。

販売期間中には何度か改良が行われました。2007年には、全車にボディ同色バンパーを標準装備とするなど、細部の仕様変更が実施されています。そして同年秋にはマイナーチェンジモデルが登場し、同時にホイールベースを延長した新型ミニバン「グランドモデュス」も発表されました。これら改良型およびグランドモデュスは、翌2008年2月から販売が開始され、どちらも共通のBプラットフォームを基盤としていました。

しかし、その生産には終止符が打たれます。2011年12月には、経営効率化策の一環として、ラグナやエスパスといった他のモデルと共にイギリス市場での販売が打ち切られました。そして2013年夏、スペインのバリャドリッド工場における生産ラインを、後継となる小型クロスオーバーSUV、キャプチャーに譲る形で、モデュスとその派生モデルの歴史は幕を閉じました。ルノーからモデュスのような小型MPVコンセプトを直接的に継承する新型モデルは登場しておらず、市場においてはキャプチャーが実質的な後継モデルとして位置づけられています。

このBプラットフォームは、1998年に発表され具体化されたルノー・日産アライアンスにおける車台共通化計画に基づき共同開発されたものです。2001年の日産・マーチでの採用を皮切りに利用が始まりました。プラットフォームの初期モデルは走行性能に対する厳しい評価もありましたが、その後登場したティーダやノートで大幅な改良が施され、モデュスもルノー車らしい優れたロードホールディングと高いハンドリング性能を実現していました。

ルノーはモデュスが登場した当時、Bセグメントにコンパクトハッチバックのクリオ（ルーテシア）と、より実用的で手頃な価格のMPVであるカングーを展開していました。クリオが伝統的なハッチバックとしてスポーティなモデルも擁する一方、カングーが商用車ベースの実用性を前面に出していたのに対し、モデュスは開発時のコンセプトに「小さなセニック」（ルノーのMPV、セニックを小型化したような意味合い）という言葉があったように、全高を生かした広々とした室内と荷室によって、多様な使い方ができることを強みとして、これら二つのモデルとは異なる立ち位置を占めました。後に全面改良されたクリオも、同じくアライアンスBプラットフォームを基盤に開発されています。

欧州のBセグメント市場は競争が非常に激しく、モデュスにも多くのライバルが存在しました。しかし、フォルクスワーゲン・ポロやフォード・フィエスタといった一般的なコンパクトカーよりも、フィアット・イデア、プジョー・206SW、トヨタ・ヤリスヴァーソ（日本名ファンカーゴ）など、積載性や室内空間の広さを重視したモデルを主な競合相手として想定して開発されていました。

車名はラテン語で「様式」や「方法」を意味する「modus」に由来しています。これは、多様なライフスタイルに対応できるシートアレンジや荷室の使い勝手にちなんで名付けられました。

モデュスは各国の市場で独自の広告キャンペーンを展開したことでも知られます。特にドイツで放映されたテレビCMは、同じ登場人物とストーリーながら、雰囲気やBGMが全く異なる2種類のバージョンを、異なる民放チャンネルで同時に放送するという革新的な手法を採用し、高く評価されました。このCMはカンヌ国際広告祭のダイレクト部門でグランプリを受賞しています。このユニークな手法は、視聴者がもう一方のバージョンに興味を持ち、ウェブサイトへのアクセスを促すマーケティング戦略としても機能しました。

モデュスは、その独特なボディスタイルと機能、そして日産との連携によって生まれたプラットフォームを持つ、ルノーのラインナップにおいて個性の光る一台でした。

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