「ル・ファンタスク」(Le Fantasque)は、
フランス海軍が建造した大型
駆逐艦であり、同型艦の
ネームシップです。艦名は
フランス語で「幻想的な、空想」を意味し、その名を受け継いだ艦としては6代目にあたります。
艦歴
ル・ファンタスクは、
1931年11月15日に
ロリアン海軍工廠で起工され、
1934年3月15日に進水、
1935年3月10日に就役しました。
1936年5月1日には、同型艦であるル・テリブル、ローダシューと共に第10軽部隊を編成し、
ブレストを拠点とする第2軽戦隊に配属されました。
1937年4月12日には、他の
駆逐艦部隊と同様に、第10駆逐隊に改編されました。
第二次世界大戦
第二次世界大戦が勃発すると、ル・ファンタスクは、ダンケルクやストラスブールといった近代的な
戦艦と共に襲撃部隊を構成しました。
1940年1月まで
ダカールを拠点に哨戒活動に従事し、
ドイツの
通商破壊艦の捜索を行いました。
1939年10月16日、ル・ファンタスクは
ダカール南西海上で
ドイツの商船ハーレを沈めました。また、同年10月25日には、ル・テリブル、
重巡洋艦デュプレクスと共に哨戒中、
ドイツ船サンタフェを捕獲しました。
1940年9月、フランスが降伏した後、ヴィシー政府はル・ファンタスクを含む第10駆逐隊を
ダカールへ移動させました。9月23日には、
自由フランス軍が
イギリス海軍の支援を受けて
ダカールに上陸しようとした
ダカール沖海戦が発生しました。この海戦では、僚艦ローダシューが
オーストラリア海軍の
重巡洋艦の砲撃により座礁しましたが、ル・ファンタスクとル・マランは高速で
煙幕を展開して巡洋艦を援護し、
イギリス海軍空母からの空襲を撃退しました。
1942年、
トーチ作戦後に
アルジェリアのヴィシー・フランス軍が
自由フランス軍に加わったことで、ル・ファンタスクも自由
フランス海軍に所属することになりました。
1943年2月14日、ル・ファンタスクとル・テリブルは近代化改修のためアメリカの
ニューヨークへ向かいました。
ボストン海軍工廠で大規模な改修が行われ、対空兵装の強化、対潜兵装の追加、
レーダー装備の搭載、無線強化などが行われました。
1943年5月13日に改修が完了し、同年6月25日に
カサブランカへ向けて出港しました。これらの改修により重量は増加しましたが、改修後も40
ノットの高速を発揮しました。改装後、ル・ファンタスクのような大型
駆逐艦は、米英の基準に合わせて「
軽巡洋艦」に艦種変更されました。
北アフリカに戻ったル・ファンタスクは、
アヴァランチ作戦(
サレルノ上陸)の支援に参加し、艦砲射撃や対空戦闘を行いました。
1943年9月13日から14日には、
コルシカ島のレジスタンス支援のため、第1強襲空挺大隊の兵員を
アジャクシオに上陸させました。その後も、武器弾薬や増援部隊の輸送に従事しました。12月24日には、
ドイツの商船ニコライン・マースクを捕捉し、座礁させる戦果を挙げています。
1944年初め、ル・ファンタスクを含む第10駆逐隊は、第10
軽巡洋艦隊に改編されました。3隻の
軽巡洋艦は、
イギリス海軍第24
駆逐艦戦隊に加わり
アドリア海を哨戒し、
イタリアとユーゴスラビア間の海上輸送を阻止しました。フランスの大型
駆逐艦は、その高速性能を活かして
アドリア海北部まで進出し、夜間に高速で哨戒を行っていました。機関の故障も頻繁に発生したため、2隻を行動状態、1隻を整備とするローテーション運用が実施されました。
1944年3月18日から19日にかけての夜、ル・ファンタスクはル・テリブルと共に
ドイツの輸送船団を攻撃し、複数の舟艇を撃沈破しました。同年6月17日未明には、クヴァルネル湾で小型
タンカー「ジュリアーナ」を撃沈するなど、数多くの戦果を挙げました。
南フランス上陸作戦
1944年8月15日、ル・ファンタスクは南フランスへの上陸作戦(
ドラグーン作戦)に参加し、艦砲射撃で上陸部隊を支援しました。
戦後
終戦後の
1945年10月27日、ル・ファンタスクは
フランス領インドシナのサイゴンに入港し、姉妹艦ル・トリオンファンと再会しました。両艦が顔を合わせるのは
1940年以来のことでした。ル・ファンタスクとル・トリオンファンは、
1946年3月まで
ベトミンとの戦闘を支援し、フランス本国へ帰還しました。
1950年まで現役を務めましたが、艦の状態不良により予備役となりました。その後、「一等
護衛駆逐艦」、「高速護衛艦」と再分類されましたが、現役復帰は果たしませんでした。
1957年5月2日に除籍され、Q98と改名されました。艦体はスクラップとして売却された後、解体されました。
参考文献
M・J・ホイットレー、岩重多四郎『第二次大戦
駆逐艦総覧』大日本絵画、2000年
John Jordan、Jean Moulin (2001). French Destroyers: Torpilleurs d'Escadre and Contre-Torpilleurs, 1922–1956. Seaforth Publishing.
O'Hara, Vincent P. (2009). Struggle for the Middle Sea. Anova Books.
F-Contre-torpilleurs classe Le Fantasque, CLAUSUCHRONIA, (8 May 2013).
CONTRE-TORPILLEURS de classe "Le Fantasque", WorldWarTwo, (25 December 2004).
Zvonimir Freivogel, Achille Rastelli, Adriatic Naval War 1940-1945, Despot Infinitus, 2015
注釈
脚注
関連項目
駆逐艦
ル・ファンタスク級大型駆逐艦
フランス海軍艦艇一覧
外部リンク
*
FR Le Fantasque at uboat.net