ルータン バリ・ビゲン

ルータン バリ・ビゲン

ルータン バリ・ビゲンは、アメリカの航空技術者バート・ルータンが最初に開発した小型航空機であり、彼の特異な航空機設計の原点とも言える機体です。この機体の最大の特徴は、推進式のエンテ型という、当時としては珍しい設計を採用した点にあります。

開発の背景と特徴

バート・ルータンは、失速やきりもみに陥りにくい航空機に関心を抱き、カリフォルニア科学技術大学在学中の1960年代初頭から研究を重ねていました。1968年からは自宅のガレージで機体の製作を開始し、試行錯誤を繰り返しました。その過程では、実機の1/5スケールの模型を自らのステーションワゴンに設置し、高速道路を走行させるというユニークな方法で風洞実験の代用としたという逸話も残っています。

4年後の1972年、ライカミング製のO-320航空機用レシプロエンジン（150馬力）を推進式に搭載したエンテ型機体が完成し、同年4月に初飛行に成功しました。この機体には「モデル27」という型番が与えられ、機体形状の着想を得たスウェーデンの戦闘機サーブ37ビゲンにちなんで「バリ・ビゲン」と命名されました。

バリ・ビゲンは、縦列2席の座席を備え、比較的広い内部空間と良好な視界を確保していました。機体構造には、合板が主要部や翼の小骨、外皮に使用され、縦通材にはトウヒが用いられました。機体外側はポリウレタンをドープしたガラス繊維シートで覆われています。降着装置は、短いスパンの3車輪式で、それぞれ引き込み可能です。ルータンは、高速性よりも低速時の安定性と操縦性を重視したため、主翼面積は大きめに設計されました。主翼は翼端を切り落としたデルタ翼で、後縁の翼根と翼端の中間に垂直尾翼を備えています。また、組み立てを容易にするため、胴体外殻は厚く、翼の底面は平らな設計となっています。

試作機（連邦航空局登録番号N27VV）は、1988年に実験機協会（EAA）のエアベンチャー博物館に寄贈され、現在は展示されています。この機体の設計は、後にルータンが開発するルータン バリ・イージーやルータン ロング・イージーへと引き継がれていきました。

販売と現状

バリ・ビゲンは、組み立て式飛行機としても販売され、「モデル32」または「バリ・ビゲンSP」として知られています。量産型では、主翼端にウィングレットが追加され、胴体が若干長くなりました。ルータン航空機製作所（スケールド・コンポジッツの前身）から、組み立てキットが600セット以上販売されましたが、実際に飛行可能な機体として組み立てられたのは20機程度です。現在飛行可能な機体はさらに少なく、2006年9月にカナダのニューブランズウィック州で墜落事故を起こしたこともあり、その数は5機にも満たないとされています。

性能諸元

搭乗員：2名
全長：5.12 m
全幅：5.79 m
翼面積：11.42 m²
空虚重量：463.6 kg
最大離陸重量：772.7 kg
エンジン：ライカミング O-320（150馬力、プロペラ推進）
最大速度：265.5 km/h
失速速度：77.25 km/h
航続距離：645 km
上昇率：14.6 km/h

関連情報

バリ・ビゲンは、バート・ルータンの革新的な航空機設計思想を体現した機体であり、その影響は後継機にも色濃く受け継がれています。また、映画『デス・レース2000年』の終盤には、実機が登場するシーンもあります。

関連項目

エンテ型飛行機
バート・ルータン
ルータン バリ・イージー
ルータン ロング・イージー
デス・レース2000年

外部リンク

Aviation Photos: Rutan 27 VariViggen - AIRLINERS.NET
Rutan Variviggen - Kiwi Aircraft Images

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