ルータン バリ・イージー

ルータン バリ・イージー：革新的なエンテ型航空機の先駆け

ルータン バリ・イージーは、アメリカの航空エンジニア、バート・ルータンによって設計された小型航空機です。この機体は、エンテ型と呼ばれる独特な形状と、推進式プロペラを持つことが特徴です。元々はルータンが開発したバリ・ビゲンの改良型として誕生し、その後、組み立て式飛行機として一般に販売されました。また、この機体はルータンが後に開発するロング・イージーの基礎となり、他の設計者にも影響を与え、エンテ型航空機の普及に貢献しました。さらに、機体材料に繊維強化プラスチックを採用した先駆けとしても知られています。

開発と販売の経緯

バリ・イージーの開発は1974年に始まり、最初の試作機（モデル31）は1975年5月に初飛行を成功させました。この機体には、フォルクスワーゲン・タイプ1のエンジンが搭載されていました。主翼は後退翼を採用し、垂直尾翼は主翼端にウィングレット状に配置されています。降着装置は三輪式ですが、前輪は引き込み式、後輪は固定式でした。初飛行から3ヶ月後、この機体はオシュコシュ航空祭で、500kg級の航空機として2,636kmの航続距離記録を達成しました。

当初、ルータンはキット販売を考えていませんでしたが、航空祭での反響を受け、量産型キット（モデル33）の販売を開始しました。モデル33では、主翼の付け根部分（ストレーキ）が拡大され、エンジンもコンティネンタルO-200に変更されています。量産型の原型となった2号機は1976年に発表され、同年7月からキットの受注が始まりました。1980年代には約2000機が組み立てられ、バリ・イージーはロング・イージーと共に、この時代で最も売れた組み立て式飛行機となりました。機体には繊維強化プラスチックが使用されており、この機体の成功が、後の組み立て式航空機における同素材の普及につながりました。キットの販売は1985年まで続けられました。

設計思想

バート・ルータンは、失速やスピン（きりもみ）に陥りにくく、高効率な飛行が可能な航空機を目指していました。その一つの答えがエンテ型でした。エンテ型は離着陸速度が速くなるという欠点がありますが、前翼（カナード翼）が主翼よりも先に失速することで機首が下がり、速度が増すため、危険な状態に陥る前に安定した状態に回復できるという利点があります。

初期の機体では、カナード翼に補助翼と昇降舵の両方の機能を持たせていましたが、後のモデルでは、カナード翼に昇降舵、主翼に補助翼というように役割を分担させています。販売開始後には、一部のユーザーから、横滑り角が大きい場合に主翼端の垂直尾翼が失速し、横滑りが加速される現象が報告されました。これに対処するため、垂直尾翼を延長したり、主翼下面に垂直板を追加するなどの改良が行われました。これにより、横滑りの加速はある程度抑制されました。

ただし、失速に強い設計ではあったものの、他の組み立て式航空機と比較して事故率が低いというわけではありませんでした。1976年から2005年までに130件の事故が報告され、そのうち46件は致命的なものでした。ちなみに、2005年時点での登録機数は691機でした。

性能諸元（モデル31）

搭乗員: 2名
全長: 3.78 m
全幅: 6.40 m
翼面積: 5.48 m²
空虚重量: 180.7 kg
最大離陸重量: 339.0 kg
エンジン: フォルクスワーゲン・タイプ1（1,834cc、62hp、プロペラ推進）
巡航速度（75%出力時）: 281.6 km/h
最大速度: 340.0 km/h
失速速度: 103.0 km/h
着陸速度: 117.5 km/h
航続距離: 1,078 km (正規), 1,448 km (巡航速度時)
燃料: 標準約90L、航続距離記録時は約150L

脚注

エンテ型航空機
バート・ルータン
ルータンの製作した組み立て式飛行機
ルータン バリ・ビゲン
ルータン ロング・イージー

参考文献

en:Rutan VariEze - 本頁は左記頁の内容を基にしている。
Rutan VariEze Prototype - N7EZ - ベンチャーエアーミュージアムのサイト内の記事で、特徴やモデル31の各性能値を参考にした。


ルータン バリ・イージーは、その革新的な設計と組み立て式飛行機としての普及により、航空史における重要な存在となりました。この機体は、後の航空機開発に大きな影響を与え、特にエンテ型航空機の可能性を広げたと言えるでしょう。

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