レオ13世 (ローマ教皇)

レオ13世

レオ13世（1810年3月2日 - 1903年7月20日）は、19世紀後半に在位したローマ教皇であり、カトリック教会の司祭です。本名はヴィンチェンツォ・ジョアッキーノ・ラッファエレ・ルイージ・ペッチ。彼の教皇としての業績は、カトリック教会と近代社会との関係改善、社会問題への積極的な取り組み、そして教会内の刷新に及びます。

生涯と業績

レオ13世は、ローマ近郊のカルピネート・ロマーノで、ルドヴィーコ・ペッチ伯爵の六男として生まれました。ペルージャの司教としての名声が、彼を1853年の枢機卿任命へと導き、1878年のコンクラーヴェで教皇に選出されました。

当時のカトリック教会は、1864年の『誤謬表』に代表されるように、近代思想や科学思想を否定することで、そのアイデンティティーを保持しようとしていました。レオ13世は、このような状況を憂慮し、トマス・アクィナスの「理性と信仰の調和」という思想に着目しました。彼は、トマス・アクィナスの思想を示すことで、信仰と科学思想が共存可能であることを訴え、教会と近代社会の溝を埋めようとしました。

レオ13世は、バチカン図書館の資料を一般に公開し、神学校の設立にも尽力しました。また、フランス革命以来、共和制フランスを初めて認めた教皇でもあります。しかし、教皇庁自らが規定してきた「バチカンの囚人」という枠組みは崩さず、イタリア王国を認めず、信徒に国政選挙の投票権を放棄するよう求めました。

レールム・ノヴァールム

レオ13世の最大の功績は、初の社会回勅『レールム・ノヴァールム』を発表したことです。この回勅は、労働問題を取り扱い、労働者の権利を擁護し、搾取と過度な資本主義に警鐘を鳴らす一方で、台頭しつつあったマルクス主義や共産主義を批判しました。

『レールム・ノヴァールム』は、カトリック社会教説の先駆けとして、その後の社会思想に大きな影響を与えました。労働者の権利、公正な賃金、労働組合の結成の自由など、現代社会においても重要なテーマを扱っており、その意義は今日でも失われていません。

その他の業績

レオ13世は、聖公会の聖職者按手の使徒継承を否定する教皇書簡を発表しました。また、ローマ教皇として初めて映画の被写体となり、1898年にウィリアム・K・L・ディクソンによって撮影されました。

彼の時代、カトリック教会には再び世界宣教の情熱が強まり、多くの修道会が発足・拡大し、宣教師が世界各地に派遣されました。世界中で多くの司教区が誕生したのも、この時代です。

レオ13世は、25年という長きにわたって教皇の座にあり、1903年に93歳で死去しました。教皇離任時の年齢は、1295年以降では歴代最高齢であり、2020年に退位後のベネディクト16世が上回るまでは、1295年以降で最も長生きした教皇経験者でした。

彼の功績は、カトリック教会を近代社会に適応させ、社会正義の実現に貢献したことにあると言えるでしょう。

関連項目

新トマス主義
分配主義
* レオ13世による回勅のリスト

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