レジオネラ症

レジオネラ症（Legionnaires' disease）

レジオネラ症は、レジオネラ菌による非定型肺炎で、特に高齢者や免疫力が低下した成人に影響を与えることが多い病気です。主な症状には、咳、息切れ、高熱、筋肉痛、頭痛があり、さらには吐き気、嘔吐、下痢などの消化器系の症状も見られることがあります。感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は2日から10日で、その後急速に状態が悪化することがあります。

疫学の背景

この病気は、1976年にアメリカのフィラデルフィアで発生した集団感染をきっかけに発見されました。日本では、感染症の予防や管理に関する法律に基づき、レジオネラ症は四類感染症として分類されています。この規定は2003年に見直され、汚染施設の消毒などの行政対応が可能になりました。レジオネラ菌は自然の淡水に広く存在し、温水タンクやエアコンの冷却装置などで繁殖することがあります。感染は、菌を含んだ水のエアロゾルを吸引することで起こり、人から人へは感染しません。感染のリスクが高い要因には、年齢、喫煙歴、慢性疾患、免疫の低下などがあります。そのため、特に高リスクの人は、定期的な検査を受けることが推奨されます。

診断と治療

診断は、尿や喀痰の検査によって行われます。レジオネラ症は、抗生物質によって治療されます。推奨される薬剤には、ニューキノロン系、アジスロマイシン、ドキシサイクリンなどがあります。重篤な症状が出ることが多く、入院が必要となる場合もあります。感染者の約10%は死亡する可能性があるという高い致死率を持つ病気です。

感染の機会と予防

レジオネラ菌は、新型コロナウイルス感染症と異なり、人から人へ直接感染しませんが、特に夏や秋に感染が多く見られます。危険な環境は、入浴施設や冷却塔、超音波加湿器などです。日本国内では、特に入浴施設での感染が多く、衛生管理が重要です。過去には、家族経営の温泉施設でずさんな管理が問題とされました。適切な消毒や定期的な浴槽の清掃が必要不可欠です。具体的には、塩素消毒を行い、また湯を定期的に入れ替えることが求められています。

主な感染事例

日本国内では、過去にいくつかの大規模な感染事例が報告されています。1996年には東京都で、新生児が感染しうち1名が死亡する事件があり、加湿器が感染源と考えられました。また、2000年には静岡県での温泉で23名が発症し2名が死亡するなど、感染の危険性が常に存在しています。特に地域社会や公共施設における感染予防は重要です。さらに、2012年にはカナダのケベック州で165人が感染し、11人が死亡する集団感染が発生したこともあります。

予防措置

レジオネラ症の予防には、入浴施設や冷却装置の適切な衛生管理、清掃が求められます。リスクが高い環境での感染を避け、定期的な水質検査を行うことが重要です。高齢者や基礎疾患を持つ人々は特に注意が必要です。さらに、感染を防ぐための教育や啓発活動が求められており、公共の場所での感染防止対策が広まることが期待されています。

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