レッドウッド国立公園

レッドウッド国立州立公園：巨木の森と歴史が息づく場所

レッドウッド国立州立公園（Redwood National and State Parks, RNSP）は、アメリカ合衆国カリフォルニア州北部の沿岸に位置する、複数の州立公園と国立公園が統合された広大な保護地域です。この公園は、原生の温帯雨林、特に巨大なセコイア（レッドウッド）の森を特徴とし、その壮大な自然景観と豊かな生態系で知られています。

公園の構成と保護

RNSPは、レッドウッド国立公園（1968年指定）と、カリフォルニア州のデルノルト・コースト州立公園、ジェデダイア・スミス州立公園、プレーリー・クリーク・レッドウッド州立公園（1920年代指定）から構成されています。総面積は約139,000エーカー（560平方キロメートル）に及び、この地域に現存するレッドウッド原生林の約45%を保護しています。これらのセコイアは、地球上で最も高く、最も古い木の一つであり、その巨体は見る者を圧倒します。

多様な生態系

レッドウッドの森林だけでなく、RNSPは多様な生態系を誇ります。大草原、文化的資源、河川や小川の流域、そして約60キロメートルに及ぶ原始時代の海岸線が保護されています。この地域には、絶滅危惧種を含む様々な動植物が生息しており、その生物多様性の高さが評価されています。

歴史と先住民

1850年頃、カリフォルニアの海岸には200万エーカー以上のレッドウッド原生林が広がっていました。この地域には、ユロック族、トロワ族、カロク族、チルラ族、ウィヨット族などの先住民が古くから住んでおり、彼らはレッドウッドを生活の糧として利用していました。彼らの文化と歴史は、この公園の重要な一部となっています。

19世紀後半、材木商や金鉱夫の進出により、レッドウッドの森林は急速に伐採されました。この状況を憂慮した人々は、保護活動を開始し、1920年代には州立公園が設立され、1968年には国立公園が指定されました。1994年には、国立公園と3つの州立公園が統合され、現在のRNSPが成立しました。

世界遺産と生物圏保護区

RNSPの希少な生態系と文化的歴史は国際的に認められ、1980年に世界遺産に登録されました。また、1983年にはユネスコの生物圏保護区にも指定されましたが、2017年に登録解除となりました。

レッドウッドと先住民の関係

先住民は、レッドウッドを単なる木材としてではなく、生活、文化、そして精神的な存在として捉えていました。彼らはレッドウッドを使い、家や船を建て、その恵みの中で暮らしていました。また、レッドウッドは神聖な存在とされ、先住民の信仰の中で重要な役割を果たしていました。

研究者のゲイル・L・ジェンナーは、「レッドウッドは彼らの物質的な文化の多くの源であったが、彼らの生活は単なる木材以上のものであったし、今もそうである。彼らの生活は、まさに木の持つ特性と構造物に囲まれていたのである。」と述べています。チルラ部族の長老であるミニー・リーブスは、「レッドウッドの木の中の人々」であり、「これらの木々を破壊すれば、創造主の愛を破壊することになる。」と語っています。先住民にとって、木は神聖な生き物であり、精霊を宿す存在とされていたのです。

保護活動と公園の拡大

19世紀後半から始まったレッドウッドの伐採は、1910年までに大規模化し、自然保護活動家や市民は残された森林の保護を強く求めるようになりました。1911年には、レッドウッド国立公園を創設する法案が提出されましたが、当時は実現しませんでした。

1918年には、セーブ・ザ・レッドウッズ・リーグ（Save the Redwoods League）が設立され、レッドウッド保護のための活動が本格的に始まりました。この団体は、ブーン・アンド・クロケット・クラブ（Boone and Crockett Club）のメンバーによって設立され、土地の購入や公園設立を支援しました。1920年代には、州立公園の設立に尽力し、レッドウッドの森林保護に貢献しました。

1968年にレッドウッド国立公園が設立されましたが、その頃にはレッドウッド原生林の約90%が伐採されていました。その後も、セーブ・ザ・レッドウッズ・リーグなどの活動により、公園の拡大が続けられ、現在では、伐採から保護された森林が広大な面積を占めています。

公園の運営と課題

レッドウッド国立公園の本部はクレセントシティにあり、サービスオフィスはアルカタに、オペレーションセンターはオリックにあります。公園は、資金不足や外来種の侵入などの課題に直面しています。

特に、伐採後の地域に植林された外来種や、森林火災の抑制によって侵入した外来種が問題となっています。公園では、管理された野焼きを実施し、生態系の回復に取り組んでいます。

また、伐採された森林が原生林の状態に戻るには長い年月が必要とされ、今後も継続的な保護活動が求められています。

公園の自然環境

レッドウッド国立州立公園は、北部カリフォルニア沿岸の森林生態系の中で最も重要な保護地域の一つです。

植物

レッドウッドの原生林は、かつてカリフォルニア州北部の沿岸地帯に広がり、現在ではそのほとんどが伐採されました。しかし、RNSPでは、原生林の約45%が保護されており、貴重な自然が守られています。レッドウッドは、少なくとも2000万年前からこの地に存在し、地球上で最も背の高い木として知られています。

コースト・レッドウッド（Sequoia sempervirens）は、最も高くなる樹木であり、ハイペリオンと呼ばれる個体は115.5メートルにも達します。成熟したレッドウッドは、平均して500年から700年、中には2000歳を超えるものも存在します。レッドウッドは、厚い樹皮と高いタンニン含有量により、病気への耐性が非常に高く、その長寿を支えています。

レッドウッドの森には、ベイマツ、シトカトウヒ、タンオーク、マドローネ、ヒロハカエデなど、様々な樹木が生育しています。ハックルベリー、ブラックベリー、サーモンベリーなどの下層植生も豊富で、多くの動物の食料となっています。特に、プレーリークリーク・レッドウッド州立公園にあるファーンキャニオンは、シダで覆われた美しい渓谷として有名です。

動物

RNSPは、多様な動物たちの生息地です。太平洋沿岸にはハゼ、内陸にはハクトウワシ、ニシアメリカフクロウ、トドなど、絶滅危惧種も生息しています。

40種以上の哺乳類が確認されており、アメリカクロクマ、コヨーテ、ピューマ、ボブキャット、アメリカビーバー、カナダカワウソ、オグロジカ、ワピチなどがいます。海岸沿いには、カリフォルニアア[[シカ]]、ゼニガタアザラシなどが生息し、沖合ではイルカやコククジラも見られます。

鳥類は400種以上が記録されており、カッショクペリカン、ミミヒメウ、シギ、カモメ、アメリカマダラウミスズメなどが生息しています。内陸の淡水には、カワアイサ、ミサゴ、オオアオサギなどが生息しています。

爬虫類や両生類も多く、クビワヘビ、アカアシガエル、オオトラフサンショウウオ、サメハダイモリなどがいます。

外来種

現在、RNSPには200種以上の外来種が生息しており、そのうち10種が在来種や生態系に脅威を与えています。外来種は、森林地域よりもプレーリー地域で多く見られ、セイヨウキヅタ、ヤグルマギク、ドクニンジンなどがその例です。

地質と気候

RNSPは、地震活動が活発な地域に位置しています。太平洋プレート、北アメリカプレート、ゴーダプレートが交わる地点に近いため、頻繁に地震が発生します。海岸線や河川は、地震や地滑りなどの影響を受けやすい場所です。

公園の大部分は、海底から隆起した堆積岩で構成されています。これらの岩石は、侵食されやすく、峡谷や海岸線で見ることができます。

RNSPは、大西洋温帯雨林気候と地中海性気候の特徴を併せ持っています。夏は涼しく、冬は温暖で、年間を通して霧が発生します。この霧は、レッドウッドの成長にとって重要な水分源となっています。

防火とレクリエーション

野火は、生態系にとって自然な現象であり、公園では管理された野焼きを実施しています。野火は、枯死した植物を除去し、土壌を肥沃にする役割があります。

公園内には、デマーティン・レッドウッド・ユースホステルがありますが、現在は閉鎖されています。近隣の地域にはホテルや宿があります。

キャンプ場は各州立公園内にありますが、国立公園内にはありません。ハイキングコースは200マイル以上あり、乗馬やマウンテンバイクも楽しめます。カヤックやカヌーは、スミス川やクラマス川で人気があります。スミス川とクラマス川では、サーモンやスチールヘッドの釣りが楽しめます。

公園内には3つのビジターセンターがあり、ガイド付きの自然散策や情報提供を行っています。

世界遺産登録

RNSPは、その優れた自然美と生態系が評価され、世界遺産に登録されています。登録基準は以下の通りです。

(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。

その他

映画「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還|スター・ウォーズ エピソード6_ジェダイの帰還」のロケ地としても使用されました。

レッドウッド国立州立公園は、壮大な自然と歴史、そして多様な生態系が共存する場所です。この貴重な自然を守り、未来へと引き継いでいくことが、私たちに課せられた使命です。

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