レディ・ソウル

『レディ・ソウル』（Lady Soul）は、1968年1月に発表されたアメリカ合衆国の偉大な歌手、アレサ・フランクリンによるスタジオ・アルバムです。アトランティック・レコードへ移籍してからの作品としては3作目にあたり、彼女のキャリアを代表する重要な一枚として位置づけられています。このアルバムは、アレサの圧倒的な歌唱力と、ソウル、R&B、ゴスペルの要素が融合したサウンドで、当時の音楽シーンに大きな影響を与えました。

制作背景

本作には、今日に至るまで愛される数々の名曲が収録されています。中でも特筆すべきは、シングルとしても大きな成功を収めた「ナチュラル・ウーマン」と「チェイン・オブ・フールズ」です。

「ナチュラル・ウーマン」は、作詞家のジェリー・ゴフィンとキャロル・キングのソングライター夫婦が、本作のプロデューサーであるジェリー・ウェクスラーと共に生み出した楽曲です。ウェクスラーがまず曲のアイデアとタイトルを提示し、それにゴフィンが歌詞を付け加える形で完成しました。この曲はアルバムに先立つ1967年9月7日にシングルとしてリリースされ、全米シングルチャート（Billboard Hot 100）で最高8位、R&Bシングルチャートでは2位に達しました。

一方、「チェイン・オブ・フールズ」は、シンガーソングライターのドン・コヴェイが書き下ろした作品です。プロデューサーのウェクスラーは、当初この曲をオーティス・レディングに歌わせることを検討していましたが、コヴェイが作成したデモ音源を聴き、アレサ・フランクリンこそが適任だと判断し、彼女に提供することを決めました。「チェインズ・オブ・フール」は1967年11月22日に先行シングルとしてリリースされ、Hot 100で2位、R&Bチャートでは首位を獲得する大ヒットとなりました。

これら先行シングルの成功を受け、アルバムに収録される残りの8曲は、主に1967年12月にレコーディングが行われました。録音には、南部マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオの卓越したセッション・ミュージシャンたちが参加したほか、ボビー・ウーマックやエリック・クラプトンといった著名なギタリストも名を連ねています。また、アレサの才能豊かな妹、キャロリン・フランクリンもバッキング・ボーカルとして参加し、さらに自身が作曲した感動的なバラード「エイント・ノー・ウェイ」を提供しています。アレサ自身も多くの楽曲でピアノ演奏を披露しており、アルバム全体のサウンドに深いグルーヴと情感を加えています。アレンジメントは、アトランティック・レコードの屋台骨を支えた名アレンジャー、トム・ダウドとアリフ・マーディンが手掛けています。

商業的成功と反響

アルバム『レディ・ソウル』は、発表されるやいなや大きな反響を呼びました。主要なアルバムチャートであるBillboard 200で最高2位を獲得したほか、R&Bアルバムチャートでは首位、ジャズ・アルバムチャートでも3位に入るなど、ジャンルを超えた幅広い層に支持されました。イギリスでも前作『貴方だけを愛して』（1967年）以来となる全英アルバムチャート入りを果たし、最高25位を記録しています。

アルバムからのシングルカットも成功を収めました。1968年2月9日にリリースされた「愛する貴方を失くして」は、Hot 100で5位、R&Bチャートで首位を獲得するヒットとなりました。このシングルのB面に収録されていた「エイント・ノー・ウェイ」も単独でチャート入りを果たし、Hot 100で16位、R&Bチャートで9位を記録しています。

評価

『レディ・ソウル』は、批評家からも高く評価されています。グラミー賞では、収録曲である「チェイン・オブ・フールズ」が最優秀女性R&Bボーカル・パフォーマンス賞を受賞し、アレサの圧倒的な表現力が讃えられました。

音楽評論家のジョン・ブッシュは、オールミュージックにおいて本作に満点の5つ星を与え、「彼女の歌には以前にも増して情熱が込められている上、楽曲そのものも力強く、ソウル界やポップ界の最高のソングライターたちによるオリジナル曲とカバー曲が見事に溶け合っている」と絶賛しました。特に「ナチュラル・ウーマン」については、「ポップ・ミュージックの歴史において象徴的なパフォーマンスの一つ」と評しています。

また、後世の音楽メディアによって選ばれる名盤リストにも頻繁に登場しています。VH1が2001年に選出した「100 Greatest Albums」では41位にランクインし、『ローリング・ストーン』誌が選んだオールタイム・グレイテスト・アルバム500（2020年改訂版）では75位に位置づけられています。これらの評価は、『レディ・ソウル』が単なるヒット作に留まらず、世代を超えて聴き継がれる音楽遺産であることを証明しています。

収録曲

オリジナル盤には以下の10曲が収録されています（括弧内は作曲者）。

- チェイン・オブ・フールズ - "Chain of Fools" (Don Covay)
- マネー・ウォント・チェンジ・ユー - "Money Won't Change You" (James Brown, Nat Jones)
- ピープル・ゲット・レディ - "People Get Ready" (Curtis Mayfield)
- ニキ・ホーキー - "Niki Hoeky" (Jim Ford, Lolly Vegas, Pat Vegas)
- ナチュラル・ウーマン - "(You Make Me Feel Like) A Natural Woman" (Gerry Goffin, Carole King, Jerry Wexler)
- 愛する貴方を失くして - "(Sweet Sweet Baby) Since You've Been Gone" (Aretha Franklin, Ted White)
- グッド・トゥ・ミー - "Good to Me As I Am to You" (A. Franklin, T. White)
- カム・バック・ベイビー - "Come Back Baby" (Walter Davis)
- グルーヴィン - "Groovin'" (Felix Cavaliere, Eddie Brigati)
- エイント・ノー・ウェイ - "Ain't No Way" (Carolyn Franklin)

『レディ・ソウル』は、アレサ・フランクリンが「クイーン・オブ・ソウル」としての地位を揺るぎないものにした決定的な作品です。彼女のパワフルかつ感情豊かなボーカル、卓越したソングライティング能力、そして一流のミュージシャンたちによる演奏が融合したこのアルバムは、ソウル・ミュージックの金字塔として、今後も多くの人々に感動を与え続けるでしょう。

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