ロイヤル・サブリン級戦艦

ロイヤル・サブリン級戦艦：近代戦艦の先駆け

ロイヤル・サブリン級戦艦は、イギリス海軍が1889年の海軍計画に基づいて建造した戦艦の艦級であり、7隻が一挙に建造されました。この艦級は、近代戦艦の始祖として位置づけられ、後の前弩級戦艦の基本設計を確立したことで知られています。また、日本の富士型戦艦の原型ともなりました。

概要

本級は、前級である砲塔装甲艦トラファルガー級の設計を基に、運用実績から得られた教訓を反映して、当時の造船局長ウィリアム・ホワイトによって改設計されました。前級では防御能力を重視して主砲を密閉型の砲塔に収めた結果、砲塔の重量が増加し、船体形状を凌波性に欠ける低乾舷にせざるを得ませんでした。これは、地中海よりも荒れる大西洋での航行において深刻な問題となりました。

そこで、本級では防御能力をある程度犠牲にして露砲塔を採用することで軽量化を図り、前後の乾舷を従来の艦よりも高くしました。艦首部の甲板を水面上5.5mとし、凌波性を向上させたことで、前弩級戦艦の特徴の一つである「高い乾舷」を実現しました。また、対水雷艇兵器として速射砲を採用し、その搭載数を10門に増加したことも特徴です。

しかし、設計段階で想定されていた戦術は、徹甲弾を敵艦の舷側に撃ち込んで破孔を開けるというものでしたが、速射砲による榴弾を上部構造物に撃ち込む戦術が普及すると、露砲塔では砲身や砲員が重大な損害を受ける危険性が高まりました。さらに、平時の外洋航行時には、露砲塔から波が浸入して浸水を招くという問題も発生しました。

また、本級は乾舷が高くなったことで船体重量が増加し、重心が上がったためにローリングが激しくなりました。1894年以降には、ビルジキールを装備して外洋航行時の横揺れ防止対策を講じました。

1889年に発注が行われ、1892年から1894年にかけてロイヤル・サブリン、エンプレス・オブ・インディア、ロイヤル・オーク、ラミリーズ、レパルス、レゾリューション、リヴェンジの7隻と、準同型艦であるフッドの合計8隻が就役しました。しかし、弩級戦艦の登場により陳腐化したため、1911年から1915年にかけてスクラップや標的艦として退役しました。

フッドの改設計

本級の8番艦であるフッドのみは、軍令部長フッド大将の強い要求により密閉式砲塔を備えています。これは、主砲の全周を防御する大重量の砲塔構造を再び採用した結果、船体前後の乾舷を低くせざるを得なかったためです。そのため、フッドは本級の最終艦でありながら、近代以前の戦艦に分類されることがあります。密閉型旋回砲塔を採用し、かつ乾舷を高くするという設計は、次代のマジェスティック級戦艦で実現しました。

艦形

本級の船体形状は、乾舷の高い平甲板型船体で、衝角の付いた艦首から艦首甲板上に34.3cm連装砲を搭載したバーベットが1基配置されています。その後方には上部構造物が始まり、司令塔を乗せた操舵艦橋の両脇には船橋が付いています。艦橋の後方にはミリタリーマストが立っており、これは上部または中段に軽防御の見張り台を配置し、そこに37mm～47mmクラスの機関砲（速射砲）を配置したものです。当時、水雷艇による奇襲攻撃を迎撃するために、遠くまで見張らせる高所に対水雷撃退用の速射砲または機関砲を置くことが一般的でした。本艦のミリタリーマストは、頂部と中段に見張り台が設けられています。

前部ミリタリーマストの後方には2本の煙突が左右に並列配置されており、これは本級が最後となりました。煙突の周囲は煙管型の通風筒が立ち並ぶ艦載艇置き場となっており、ミリタリーマストを基部とするクレーン2基と、2本1組のボート・ダビッドが片舷2組ずつ、計4基で運用されました。艦載艇置き場の後部には、基部にクレーンの付いた後部ミリタリーマストが立ち、後部甲板上に2番主砲1基が配置されています。

副砲の15.2cm速射砲は、舷側甲板上に防盾付きの単装砲架で片舷3基ずつ、舷側の中央部にケースメイト（砲郭）配置で片舷2基ずつ、計10基が配置されました。

武装

主砲

本級の主砲は、前級に引き続き「アームストロング 1885年型 34.3cm（30口径）後装砲」を採用しました。600kgの砲弾を使用し、最大射程は10,930m、発射速度は2分間に1発でした。この砲を連装砲架に据え付け、露砲塔に収めました。砲身は砲架に直接固定され、砲の俯仰角を変えるには砲架ごと上下させ、最大仰角13.5度、俯角3度でした。砲架の旋回角度は、単体首尾線方向を0度として左右135度の旋回角度を持ち、これらの砲身（砲架）の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は蒸気ポンプによる水圧で行われ、補助に人力を必要としました。

砲塔は、上方から見て洋ナシ形状の奥に向けて尖った楕円形となっています。これは、奥部に砲弾の装填機構や弾薬庫から砲弾を輸送する揚弾筒がバーベットとは別に備えられた形式であったためです。そのため、揚弾の際には首尾線方向に砲塔の向きを戻す必要がありました。

その他の備砲・水雷兵装

副砲には、「アームストロング 1892年型 15.2cm（40口径）速射砲」を採用しました。その性能は、45.4kgの砲弾を仰角20度で9,140mまで届かせることができました。この砲を単装砲架で舷側に片舷5基ずつ、計10基配置しました。俯仰能力と旋回角度は装備形式により異なり、甲板上は仰角20度・俯角5度で旋回角度は300度、舷側ケースメイト配置は仰角15度・俯角3度で旋回角度は180度でした。砲身の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は主に人力を必要としました。発射速度は毎分5～7発の設計でした。

他に近接戦闘用にフランス製の「オチキス 4.7cm（43口径）単装機砲」を採用しました。その性能は、1.5kgの砲弾を仰角12度で5,944mまで届かせられる優秀砲で、イギリスでライセンス生産され、この時代の主流対水雷艇砲として第一次世界大戦末期まで用いられました。この砲を単装砲架で12基装備しました。俯仰能力は仰角25度・俯角5度です。砲身の俯仰・砲塔の旋回・砲弾の揚弾・装填は主に人力を必要としました。発射速度は毎分20発でした。他に対艦攻撃用に45.7cm魚雷発射管を単装7基装備しました。

艦名

ロイヤル・サブリン Royal Sovereign：「王の統治」といった意味を持つ伝統的艦名。トラファルガーの海戦の副将コリンウッドの乗艦の名でもある。
エンプレス・オブ・インディア Empress of India：「インド女帝」。当時のヴィクトリア女王のこと。
ロイヤル・オーク Royal Oak：清教徒革命のとき、後のチャールズ2世が隠れて追手から逃れたオークの木。
ラミリーズ Ramillies
レパルス Repulse
レゾリューション Resolution
リヴェンジ Revenge
フッド 本型の準同型Hood（準同型）：18世紀の提督、初代フッド子爵サミュエル・フッド。

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