ロキの口論

ロキの口論（Lokasenna）

『ロキの口論』（古ノルド語：Lokasenna）は、『古エッダ』に収められた詩であり、北欧神話におけるロキの悪辣な一面が際立つ物語です。この詩は、神々が集う宴の席で、ロキが他の神々を容赦なく侮辱し、それぞれの秘密や弱点を暴露していく様子を描いています。

あらすじ

物語は、バルドルの死後、エーギルの館で催された宴から始まります。多くの神々やアールヴが集まり、エーギルの従者であるフィマフェングとエルディルが神々の称賛を受けていました。しかし、ロキは彼らの人気に嫉妬し、フィマフェングを殺害してしまいます。追い出されたロキは、エルディルと言葉を交わした後、会場に戻ります。

会場に戻ったロキに対し、神々は静まり返ります。ロキは、かつてオーディンと交わした「血の盟約」を盾に、オーディンに自分の席と酒杯を用意させます。そして、ロキは宴の参加者たちへの攻撃を開始します。

まず、ブラギを臆病者と罵倒し、他の神々が仲裁に入ろうとするも、ロキは彼らの過去の過ちや秘密を暴露し、次々と侮辱していきます。イズン、ゲフィオン、オーディン、フリッグ、フレイヤ、ニョルズ、テュール、フレイ、ビュグヴィル、ヘイムダル、スカジ、シヴ、ベイラといった、そうそうたる神々がロキの攻撃対象となりました。

そこへ、東方遠征から帰還したトールが現れます。トールはロキを威嚇しますが、ロキは彼がウートガルザ・ロキの策略に嵌った過去を暴露します。しかし、最終的にロキは「全てが火に包まれる」という終末の予言を残して、宴の場を去ります。

ロキの捕縛とラグナロク

韻文部の後に続く散文部では、ロキが捕縛される挿話が語られます。この出来事は、『スノッリのエッダ』第1部『ギュルヴィたぶらかし』第50章で詳細に描写されています。ロキの捕縛は、北欧神話の終末、ラグナロクへと繋がる重要な出来事となります。

『ロキの口論』は、ロキというトリックスターの性格を鮮やかに描き出し、神々の葛藤や秘密を暴露することで、物語に深みを与えています。また、この物語は、北欧神話がラグナロクという破滅的な結末に向かっていく上で、重要な役割を果たしています。

この詩は、ロキの口論を通じて、神々の完璧ではない側面を浮き彫りにし、彼らの人間らしさを強調しています。同時に、ロキの存在が、神々の世界に混乱と変化をもたらす触媒として機能していることを示唆しています。

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