ロジャック

ルジャック（ロジャック）～東南アジアの甘辛いフルーツサラダ～

ルジャック（インドネシア語でRujak、マレー語でRojak）は、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイなどで広く食べられているサラダです。ジャワ島を起源とし、古くから伝わる郷土料理であり、各地域で独自の進化を遂げています。特徴は、様々な果物や野菜を、甘辛いスパイシーなドレッシングで和えた点にあります。このドレッシングは、唐辛子、パームシュガー、ピーナッツなどをベースに作られ、ピリッとした辛さと甘みのバランスが絶妙です。

ルジャックの歴史と語源

ルジャックの起源はジャワ島にまで遡ります。901年の古ジャワ語の碑文に「ルルジャック」(rurujak) という言葉が見つかっており、非常に古い歴史を持つ料理であることがわかります。ジャワ島に住む人々の移動や交流を通じて、マレーシアやシンガポールなど周辺地域にも広まり、それぞれの地域で独自のレシピが発展しました。国や地域によって名称が異なり、インドネシアでは「ルジャック」または「ロジャック」、マレーシアやシンガポールでは「ロジャック」や「ロジャッ」などと呼ばれています。

文化におけるルジャック

インドネシア、特にジャワ島では、ルジャックは文化的に重要な位置づけを持っています。甘酸っぱい味は妊娠中の女性に良いとされ、妊娠中に酸っぱいものが食べたくなることを意味する「ngidham」や「nyidham」という言葉と結びついています。「ナロニ・ミトニ」や「トジュ・ブラン」といった出産前の伝統儀式では、ルジャックが欠かせない供物となります。この儀式で供されるルジャックは、通常のルジャックとは異なり、果物を粗く刻み、ブンタン（ブンタンは柑橘類の一種）を必ず入れるのが特徴です。また、ルジャックの味付けによって、生まれる子どもの性別を占うという言い伝えもあります。甘い味付けであれば女の子、辛い味付けであれば男の子と言われています。
北スマトラ州タパヌリ地方のマンダイリン人にとって、ルジャック作りは収穫後の特別なイベントであり、村全体でルジャックを楽しみます。

マレーシアやシンガポールでは、「ロジャック」という言葉は、多様な文化が混在する社会を象徴する言葉としても使われています。様々な要素が混ざり合った様子を表す比喩表現として用いられるのです。

インドネシアのルジャックのバリエーション

インドネシアには、地域や好みに合わせて様々なルジャックが存在します。代表的な種類をいくつかご紹介します。

ルジャック・ブア (Rujak Buah): シンプルなフルーツサラダで、パパイヤ、マンゴー、ヒカマ（メキシコサツマイモ）などが使われます。
ルジャック・ベベック (Rujak Bebek): ジャワ島西部で食べられているルジャックで、材料を細かく刻んだり、潰したりして作ります。ピサン・バトゥ（バナナの一種）やタマリンドジュースが使われることもあります。
ルジャック・ウ・グロ (Rujak U Gro): アチェ州の名物料理。熟していないココナッツ、パパイヤ、唐辛子、砂糖、パームシュガー、氷、塩、ライムで作る冷たいルジャックです。
ルジャック・クア・ピンダン (Rujak Kuah Pindang): バリ島で人気の屋台料理。通常のドレッシングではなく、スパイスを使った魚の出汁で果物を和えます。
ルジャック・チングル (Rujak Cingur): スラバヤ発祥の東ジャワ州の郷土料理。牛または水牛の唇肉を使った、肉の味が強いルジャックです。
ルジャック・ジュヒ (Rujak Juhi): ジャカルタのコタトゥア地区の中国系コミュニティ発祥の料理。塩漬けのコウイカを使ったルジャックです。
ルジャック・シャンハイ (Rujak Shanghai): ジャカルタの中国系コミュニティの料理。ゆでダコやクラゲなどを使ったルジャックです。
ルジャック・ソト (Rujak Soto): 東ジャワのバニュワンギの名物料理。牛肉のソトとルジャック・チングルを合わせた郷土料理です。
ルジャック・エス・クリム (Rujak Es Krim): ジョグジャカルタ名物のデザート。果物のルジャックにココナッツミルクのアイスクリームを添えたものです。

マレーシアとシンガポールのロジャック

マレーシアとシンガポールでも、ロジャックは人気があります。インドネシアのものとは異なる特徴を持ち、それぞれの地域で独自のレシピが発展しています。

ロジャック・ブア (Rojak Buah): きゅうり、パイナップル、ヒカマ、モヤシ、揚げ豆腐、油条などが使われます。
ロジャック・ペナン (Rojak Penang): ペナンで人気のあるレシピ。ミズレンブ、グアバ、イカのフリッター、蜂蜜などが使われます。
ロジャック・ママック (Rojak Mamak): ママッストールでよく提供される料理。茹でたジャガイモ、固ゆで卵、豆腐、エビのフリッターなどが使われます。
* ロジャック・バンドン (Rojak Bandung): コウイカ、空心菜、きゅうり、豆腐、ピーナッツ、唐辛子などを用いたシンガポールの料理です。

ルジャック（ロジャック）は、その多様なバリエーションと、甘辛い独特の味が魅力の料理です。東南アジアを訪れた際には、ぜひ地元で味わってみてください。それぞれの地域で異なる味や材料、そして文化に触れることができるでしょう。

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