ロス154

ロス154は、いて座に位置する赤色矮星であり、地球から約9.7光年（約3パーセク）の距離にあります。視等級は10.495等と暗く、肉眼での観測は困難です。観測には口径6.5cm以上の望遠鏡が必要となります。

発見と観測

ロス154は1925年にアメリカの天文学者フランク・エルモア・ロスによって発見されました。彼は変光星をまとめた星表にこの星を加えました。翌年にはエドワード・エマーソン・バーナードがこの星の固有運動を測定し、自身の星表に記載しました。1937年にはウォルター・オコンネルが南アフリカのイェール望遠鏡でロス154の写真乾板を作成し、年周視差を測定した結果、当時知られていた恒星の中で6番目に近い恒星であることが判明しました。

特徴

ロス154は、くじら座UV型の閃光星として知られており、平均で約2日間隔で太陽フレアによる変光を繰り返します。過去には、視等級が0.4等上昇した観測例もあり、典型的なフレア発生時には3等から4等も明るさを増します。また、恒星の表面磁場は2.2 ± 0.1kGと非常に強力です。

ロス154はX線を放出しており、複数のX線天文衛星によって観測されています。X線による光度は約9×10^27エルグ/秒です。

スペクトル分類はM3.5Veで、水素核融合反応を起こしている主系列星です。質量は太陽の約0.17倍、半径は約0.24倍、光度は0.0038倍と、太陽と比べてかなり小さいです。恒星内部の対流は非常に遅く、自転速度から推定される年齢は数億年とされています。ヘリウムより重い元素の割合は太陽の約半分です。

周辺環境

ロス154に最も近い恒星はバーナード星で、約5.41光年離れています。2016年現在、ロス154の周囲には惑星は発見されていませんが、周辺で過剰な赤外線が観測されており、これは原始惑星系円盤の残骸である可能性が示唆されています。赤色矮星の場合、周辺のガス円盤は1億年以上経過すると恒星風によって消滅すると考えられています。

ロス154の銀河座標における固有運動は[U, V, W]=[–12.21, –1.04, –7.20]km/sで、どの運動星団にも属していません。銀河系の中心からは27,650光年から30,600光年の範囲を、軌道離心率0.052で公転しています。その低い空間速度から、太陽と同じく種族Iの恒星に分類されています。約15万7000年後には、地球から6.39 ± 0.10光年（1.959 ± 0.031 パーセク）まで接近すると予測されています。

ロス154は、その活発なフレア活動や比較的近い距離から、天文学者にとって興味深い研究対象となっています。

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