ロデオ (コープランド)

ロデオ (Rodeo)

『ロデオ』は、アメリカ合衆国の著名な作曲家アーロン・コープランドが1942年に作曲したバレエ音楽、およびそこから抜粋された演奏会用組曲です。この作品は、副題に「バーント牧場での求愛（The Courting at Burnt Ranch）」とあるように、アメリカ西部にある牧場を舞台にした物語が描かれています。

作品の背景と初演

本作は、当時世界的に有名だったバレエ・リュス・ド・モンテカルロ（モンテカルロ・ロシアバレエ団）からの委嘱を受けて制作されました。作曲は1942年6月に開始され、同年9月には管弦楽化が完了しています。作曲の初期段階では弦楽合奏での演奏が想定されていましたが、最終的にはより豊かな響きを持つ通常の管弦楽編成に変更されました。

バレエの初演は、作曲年の10月16日、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にて華やかに行われました。この歴史的な舞台では、後に著名な振付家となるアグネス・デ＝ミルが振付と主演を務め、指揮はフランツ・アラースが担当しました。初演は観客から熱狂的な支持を受け、大成功を収めています。

バレエは全2幕で構成され、女性主人公がカウボーイたちの社会で自己の居場所を探し、最終的に愛を見つける過程を描いています。

演奏会用組曲

バレエ本編の人気を受けて、コープランド自身はバレエ音楽の中から4つの舞曲を選び出し、「ロデオより4つのダンス・エピソード（Four Dance Episodes from Rodeo）」と題した演奏会用の組曲を編纂しました。この組曲は以下の4つの楽章から構成されています。

1. カウボーイの休日（Buckaroo Holiday）
2. 畜舎の夜想曲（Corral Nocturne）
3. 土曜の夜のワルツ（Saturday Night Waltz）
4. ホーダウン（Hoe-Down）

組曲の初演は2段階で行われました。まず、1943年5月28日にボストン・ポップス・オーケストラによって3つの楽章が先行して演奏されました。その後、翌6月にはニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の野外コンサートにおいて、アレクサンダー・スモーレンスの指揮により組曲全曲が初めて演奏されました。

楽器編成

『ロデオ』の管弦楽編成は、作品の活気と色彩を表現するために比較的規模が大きく、多様な楽器が用いられています。

木管楽器：フルート3（うち2人はピッコロ持ち替え）、オーボエ2、コーラングレ1、クラリネット（B♭管）2、バスクラリネット1、ファゴット2
金管楽器：ホルン4、トランペット（B♭管）3、トロンボーン3、チューバ1
打楽器：ティンパニ、グロッケンシュピール、シロフォン、シンバル、トライアングル、ウッドブロック、むち、バスドラム、スネアドラム
その他：ハープ1、チェレスタ1、ピアノ1
* 弦楽器：弦五部（ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

ピアノやチェレスタ、そして多数の打楽器の使用が、作品に独特のリズム感と鮮やかな響きを与えています。

有名な終曲《ホーダウン》

組曲の中でも特に有名なのは、終曲にあたる《ホーダウン》です。この楽章は、アメリカの古くから伝わる民謡「ナポレオンの退却（Bonaparte's Retreat）」のメロディーを基にしており、カウボーイたちが集まって踊る様を彷彿とさせる、非常にリズミカルでエネルギッシュな音楽です。

コープランド自身もこの《ホーダウン》を気に入っており、1946年にはこの部分だけを独立させた弦楽合奏のための編曲を制作しています。さらに後年には、ヴァイオリンとピアノのためのアンコール・ピースとしても編曲されました。

クラシック音楽の世界を超えて、《ホーダウン》はポップカルチャーにおいても広く知られています。1972年にはイギリスのプログレッシブ・ロックバンド、エマーソン・レイク・アンド・パーマー（ELP）が、ロック・アレンジを施した演奏をアルバム『トリロジー』に収録し、話題となりました。また、1990年代からは全米畜産業者牛肉連盟のテレビCM「Beef: It's what's for dinner」のサウンドロゴとして長年使用され、アメリカ国内でこの旋律が非常に広く認知されるきっかけとなりました。日本でも、かつてユニバーサル・スタジオ・ジャパンで上演されていたアトラクションの音楽として使用されたことがあります。

『ロデオ』、特にその組曲は、コープランドが追求した「アメリカ音楽」の象徴的な例として、今日でも世界中のオーケストラの演奏会で頻繁に取り上げられ、多くの人々に愛され続けています。広大な大地を感じさせる開放的な旋律と、躍動的なリズムが魅力的な作品です。

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