バレエ・リュス・ド・モンテカルロ

バレエ・リュス・ド・モンテカルロは、芸術プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフの死去（1929年）に伴い、彼の率いたバレエ・リュスが解散した後、その系譜を受け継ぐ形でモナコのモンテカルロで組織されたバレエ団です。

ディアギレフ亡き後、いくつかのバレエ・リュス復活計画が持ち上がりましたが、1929年秋に始まる世界恐慌の影響で多くは実現しませんでした。しかし、1930年にパリとロンドンで行われたガラ公演「バレエ・リュス・ア・パリ」が契機となり、ロシア歌劇団を率いていたヴァシリー・ド・バジル大佐と、モンテカルロ歌劇場バレエの芸術監督を務めていたルネ・ブルムが手を組み、1931年にバレエ・リュス・ド・モンテカルロの結成を発表。翌1932年には本格的な公演活動を開始しました。

設立当初、芸術監督にはジョージ・バランシンが就任しましたが、間もなくレオニード・マシーンがその任を引き継ぎました。このバレエ団の大きな強みの一つは、モンテカルロ歌劇場に残されていた、オリジナルのバレエ・リュスで使用された衣装や美術の一部を活用できたことでした。

ダンサーとしては、旧バレエ・リュスで活躍したアレクサンドラ・ダニロワやアリシア・マルコワに加え、後に「三人の赤ん坊バレリーナ（ベイビー・バレリーナ）」として名を馳せる、当時まだ幼かったイリーナ・バローノワ、タマーラ・トゥマーノワ、タチアナ・リアブーシンスカといった新星が登場しました。男性ダンサーには、ヴォイジコフスキやリシーンらがいました。振付は主にバランシンとマシーンが担当しました。

彼らの諸作品は観客に熱狂的に受け入れられ、特に1933年以降は興行的に大成功を収めました。しかし、順調に見えた活動も長くは続かず、1936年には主宰者間の対立からバレエ団は二つに分裂します。一つはバジル大佐が率いる「バレエ・リュス・ド・コロネル・ド・バジル（後にオリジナル・バレエ・リュスと改称）」、もう一つはルネ・ブルムが率いる単数形の「バレエ・リュス・ド・モンテカルロ」となりました。

バジル大佐の率いたバレエ団は、その後も活動を継続しましたが、1952年に解散しました。一方、ブルムの率いたバレエ団は、第二次世界大戦勃発時にアメリカに滞在しており、そのまま活動拠点を移しました。ブルムの引退やマシーンの退団を経て、ディアギレフ時代の伝統から離れ、次第にアメリカ的な特徴を強めていきました。このバレエ団は1960年代に活動を停止しています。

バレエ・リュス・ド・モンテカルロの系譜は、1985年にモナコで「バレエ・ド・モンテカルロ」として再設立され、バレエ・リュスやジョージ・バランシン作品の上演を活動の中心としています。

代表的なレパートリーには、分裂前の時期（1932-1936）の「前兆」「美しきドナウ」「コレアルチューム」「幻想交響楽」などがあり、分裂後のバレエ・リュス・ド・モンテカルロ（ブルム系）では「ロデオ」などが挙げられます。

日系アメリカ人バレリーナのソノ・オーサトもこのバレエ団に所属していました。

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