ロドス島の巨像

ロドス島の巨像：古代世界の驚異

ロドス島の巨像は、紀元前3世紀頃にエーゲ海に浮かぶロドス島に建造された巨大な彫像です。この彫像は、太陽神ヘーリオスを象ったもので、古代世界の七不思議の一つとして知られています。現在ではその痕跡は残っていませんが、古代の記録や伝説を通じて、その壮大な姿が語り継がれています。

巨像の概要

一般的に、巨像の高さは約34メートルとされています。台座を含めると約50メートルにもなり、これは現代のニューヨークにある自由の女神像に匹敵するほどの大きさです。太陽神ヘーリオスは、同じ太陽神であるソルやアポロンと同一視されたため、「アポロの巨像」とも呼ばれることがあります。日本語では、ヘーリオスの巨像、ロードスの巨像など、さまざまな表記が用いられています。

建造の背景

巨像の建造は、ロドス島が紀元前305年に経験した歴史的な出来事と深く関係しています。アレクサンドロス大王の死後、マケドニア帝国は後継者争いで分裂し、ディアドコイ戦争が勃発しました。この戦争で、ロドスはエジプトを領有するプトレマイオス1世側につき、プトレマイオスの敵であるアンティゴノス1世の攻撃を受けました。アンティゴノス1世の息子デメトリオスは、4万の兵を率いてロドス島を包囲しましたが、ロドスの堅牢な防御に阻まれました。

デメトリオスは、巨大な攻城塔「ヘレポリス」を建設して攻撃を試みましたが、ロドス守備隊の反撃によって失敗に終わります。その後、プトレマイオス1世の援軍が到着したため、デメトリオスは撤退を余儀なくされました。この勝利を記念し、ロドスの人々は太陽神ヘーリオスに感謝の意を表すため、巨像を建造することを決意しました。

巨像の建造

巨像の建造は、リンドスのカレスという彫刻家が指揮を執りました。彼は、以前に巨大なゼウス像を制作したリュシッポスの弟子でした。巨像は、まず港の入り口付近に15メートルの大理石の台座が設置され、その上に鉄製の骨組みが組まれました。外装には、デメトリオス軍が残していった武器や攻城塔を溶かした青銅板が用いられました。巨像の組み立ては、盛り土の傾斜路を利用して行われ、建設が進むにつれて傾斜路の高さが調整されたと考えられています。巨像は着工から12年後の紀元前284年に完成しました。

地震による倒壊

しかし、巨像は完成からわずか58年後の紀元前226年に発生した地震によって倒壊してしまいます。膝の部分から折れてしまった巨像の残骸は、その後約800年間にわたり放置され、多くの人々が見物に訪れました。大プリニウスの記述によると、巨像の指だけでも、当時の多くの彫像よりも大きかったとされています。654年、ロドス島を征服したムアーウィヤの軍によって、巨像の残骸はエデッサの商人に売却され、解体されて青銅のスクラップとなり、900頭のラクダで運ばれました。

巨像に関する伝説

巨像の倒壊後、その姿は伝説となり、さまざまな誤解や誇張が生まれました。最も有名な伝説の一つは、巨像が港の入り口をまたぐように立っていたというものです。しかし、現代の研究では、その大きさや構造上の問題から、港をまたぐ姿勢は不可能であったと考えられています。また、巨像が手に持っていた器から、港に侵入する船に煮えた油や鉛を注ぎ落としたという伝説も存在します。

シェイクスピアの戯曲「ジュリアス・シーザー」にも、この伝説に基づいた台詞が登場します。また、自由の女神像の台座にはめ込まれた詩「The New Colossus」では、ロドス島の巨像と自由の女神像が対比されています。

再建の可能性

巨像の再建に関する議論は、以前から存在します。巨像が再建されれば、ロドスの観光事業に大きな影響を与えることは間違いありませんが、莫大な費用がかかるため、何度か計画が持ち上がってはいるものの、実現には至っていません。

ロドス島の巨像は、その壮大な姿と短くも劇的な歴史を通して、古代世界の驚異を象徴する存在として、今もなお多くの人々の想像力を刺激し続けています。

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