ロバート・ド・ヴィアー (アイルランド公)

ロバート・ド・ヴィアー：栄光と没落の貴族

ロバート・ド・ヴィアー（Robert de Vere, 1362年1月16日 - 1392年11月22日）は、イングランドの貴族であり、アイルランド公爵、ダブリン侯爵、そして第9代オックスフォード伯爵という称号を持ちました。彼はリチャード2世の寵愛を受け、急速に権力を掌握しましたが、その後の失脚と亡命、そして不慮の死は、彼の人生の明暗を象徴しています。

生い立ちと台頭

1362年、ロバートは第8代オックスフォード伯爵トマス・ド・ヴィアーの一人息子として生まれました。ヴィアー家は古い歴史を持つものの、特筆すべき功績や豊富な所領を持っていたわけではありません。ロバート自身も凡庸な人物と評されていましたが、1380年代にリチャード2世と親密な関係を築いたことが、彼の運命を大きく変えました。

国王の寵愛を受けたロバートは、異例のスピードで昇進します。1385年にはダブリン侯爵に叙せられ、イングランド初の侯爵位を得ました。さらに翌年にはアイルランド公爵に叙せられ、アイルランドにおける国王と同等の権限を与えられました。この地位は、彼に富と権力をもたらしましたが、同時に多くの政敵を生むことにもなりました。

訴追と失脚

ロバートの急速な台頭は、グロスター公トマス・オブ・ウッドストックら訴追派貴族の警戒心を呼び起こしました。彼らは1387年、ロバートを反逆罪で訴えようと画策します。これに対し、ロバートはリチャード2世の支援を受け、チェスターで兵を挙げ抵抗を試みました。しかし、同年12月19日のラドコット・ブリッジの戦いで敗北し、大陸への亡命を余儀なくされました。

1388年2月、訴追派貴族の主導により非情議会が招集され、ロバートは他の国王側近たちと共に反逆罪で訴追され、死刑判決を受けました。彼はすでにイングランドを離れていたため、処刑を免れましたが、帰国することは叶いませんでした。

亡命と死

亡命生活を送っていたロバートは、1392年にルーヴァンで猪狩り中の事故により亡くなりました。子供がいなかったため、オックスフォード伯爵位は叔父のオーブリー・ド・ヴィアーが継承しました。

爵位

1371年9月：第9代オックスフォード伯爵
1385年12月1日：ダブリン侯爵（一代限り）
* 1386年10月13日：アイルランド公爵（一代限り）

家族

ロバートは2度結婚しました。最初の妻はフランス貴族クシー卿アンゲラン7世・ド・クシーの娘フィリッパ・ド・クシーでしたが、領地継承の見込みがなかったため離婚しました。その後、アグネス・ド・ラーンスクローナと再婚しましたが、いずれの結婚でも子供は生まれませんでした。

ロバート・ド・ヴィアーの生涯は、リチャード2世の治世における権力闘争と、貴族社会の栄光と没落を描き出しています。彼の急速な台頭と悲劇的な最期は、歴史の教訓として語り継がれています。

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