ロム (ブルガリア)

ロム（ブルガリア語: Лом）は、ブルガリア北西部に位置する歴史ある町であり、その周辺を含む基礎自治体の中心です。モンタナ州に属し、雄大なドナウ川の右岸に広がっています。特に、ロム川がドナウ川に合流する地点に近く、この地理的な利便性が古くから町の発展に寄与してきました。

ブルガリアの首都ソフィアからは北へ約162キロメートルに位置しており、近隣の主要都市としては、ヴィディンから南東に約56キロメートル、モンタナからは北に約50キロメートル、そしてコズロドゥイからは西に約42キロメートルの距離にあります。ドナウ川沿いにおけるブルガリア国内の港湾都市としては、ルセに次いで2番目に重要な役割を担っています。

歴史の変遷

ロムの起源は古く、古代トラキア人によって「アルタネス」という名で建設された町に遡ります。その後、ローマ帝国の支配下に入ると、この地にあった町と要塞は「アルムス」と呼ばれるようになりました。この「アルムス」という名称が、現在の町名「ロム」および近隣を流れるロム川の名前の由来となったとされています。

中世においては、この場所に特に大きな町が存在したことを示す明確な証拠は乏しいとされています。オスマン帝国時代に入る前までにはある程度の拡張が見られたと考えられますが、長きにわたり、より力を持っていたヴィディン、ニコポル、シリストラといった都市の陰に隠れた存在でした。現在の町の直接的な基礎は、1695年にオスマン帝国のカラ・ムスタファ・パシャらが築いたオスマン人の村にあるとされます。彼らは1683年のウィーンでの敗北後、ドナウ川を下ってこの地にたどり着きました。

「ロム・パランカ」という名前が初めて文献に登場するのは1704年で、それ以前は単に「パランカ」と呼ばれていました。1798年には山賊による襲撃を受けるといった困難も経験しました。しかし、1830年以降、ドナウ川での交易が活発化するにつれて、ロムの重要性は徐々に高まっていきます。特にソフィアへ通じる陸路との結節点となったことは、町の発展に大きく貢献し、やがてオーストリアのウィーンとブルガリアを結ぶ主要な交易ルートの一部となりました。

19世紀半ばには商業が非常に栄え、1869年には120軒の店舗、148軒の交易所、175軒の食料品店、34軒のカフェやバー、6軒のホテル、2軒の製粉所が存在した記録が残っています。町はかつての要塞「カレ」を中心に広がり、ヴィディンスカ、ベログラトチシュカ、ソフィイスカという三つの主要な城門（カピー）を持っていました。ロムの交易商たちは、この地域で最も多くの物品を売買していたと言われています。1800年には約7,500人の住民がいたとされています。

ロムは、ブルガリア民族復興期（18世紀後半～19世紀末）において、文化・社会活動の中心地として重要な役割を果たしました。1856年には、ブルガリアで最初のチタリシテ（公民館）が設立され、知識の普及や文化振興に貢献しました。また、1858年にはブルガリアで初の婦人会が結成されるなど、女性の社会活動の面でも先駆的な存在でした。古くから演劇活動が盛んな町としても知られています。

第二次世界大戦終結まで、ロムは重要な交易都市としての地位を保ちました。1944年以降は工業化が進められ、砂糖、缶詰、製粉といった産業が発展しました。現在も、ブルガリア北西部の主要な拠点港の一つとしての機能を持っています。

主な見どころ

ロムとその周辺には、訪れるべき場所がいくつかあります。

• - プラジャ（Плажа）: 町の中心部から約3キロメートルの距離にある、ドナウ川沿いに約500メートル続く石の浜辺です。
• - 歴史博物館: かつて役場として使用されていた建物を利用しており、ロムの豊かな歴史を紹介しています。
• - 古代ローマ時代の遺跡: 町の長い歴史を示す古代ローマ時代の建築物の痕跡を見ることができます。
• - ポストヤンストヴォ: ブルガリア国内で最も古い歴史を持つ公民館（チタリシテ）の一つです。
• - かつての教育学学校の建物: 歴史的な建築物として保存されています。
• - ボルンスカ聖堂: 町の信仰の中心である正教会の聖堂です。
• - ツェコ・ヴォイヴォダのモニュメント: 19世紀のセルビア解放の戦いに参加し、功績が認められた人物を記念する像です。

宗教

住民の多数はブルガリア正教の信徒です。その他にプロテスタントなどの宗教も存在します。

ロムにちなむもの

南極大陸のサウス・シェトランド諸島、リヴィングストン島にあるロム峰（Lom Peak）は、このブルガリアの町ロムにちなんで名付けられました。

ロム基礎自治体は、中心となる町ロムの他、複数の町村や集落を含んでいます。

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