ローシュ・ハッシャーナー

ローシュ・ハッシャーナー（Rosh Hashanah）は、ユダヤ暦における新年を祝う祭典です。ヘブライ語で「年の頭」を意味し、暦の上で新しい年の始まりを告げます。この祭りは、ティシュリー月（ユダヤ暦の7月）の1日から10日までの期間を指し、特に1日と2日が重要な日とされています。広義には、この10日間の期間は「畏れの日々（Yamim Nora'im）」と呼ばれ、ヨーム・キップール（贖罪日）へと続きます。

祭りの起源と聖書の記述

ローシュ・ハッシャーナーは、聖書（旧約聖書）のレビ記23章にその起源が記されています。神はモーセに対し、第七の月の一日を安息の日として守り、角笛を吹き鳴らして記念し、聖なる集会の日とするよう命じました。この日は、いかなる労働も禁じられ、神に捧げ物をすることが定められています。

祭りの中心となる儀式

ローシュ・ハッシャーナーの中心的な儀式の一つは、シナゴーグでラビが角笛（ショーファール）を吹くことです。安息日には楽器を演奏しないというミツワー（戒律）があるため、ローシュ・ハッシャーナーの初日が安息日に当たる場合は、2日目に角笛が吹かれます。角笛は、テキヤ、テルア、シェバリームなど、独特の吹き方が用いられます。この角笛の音は、人々の心を神に向けさせ、悔い改めを促すものとされています。

祝祭の過ごし方と習慣

イスラエルでは、ローシュ・ハッシャーナーの期間は、新聞や官公庁、ほとんどの会社が休みとなります。人々は家族や親しい人々と集まり、新年を祝います。

祭りの期間中には、特別な食べ物を楽しむ習慣があります。「年の頭」に因んで魚の頭を食べたり、甘い新年を願って蜂蜜をかけたリンゴやパン、ツィメス、柘榴などを食べます。また、ユダヤ教徒の間では、新年の挨拶として「シャナー・トバー（良い年）」という言葉が交わされます。ローシュ・ハッシャーナーを祝う手紙には、蜂蜜をかけたリンゴが描かれることが多く、この手紙はティシュリー月の初旬だけでなく、エルール月の月末頃から送られることがあります。

畏れの日々（Yamim Nora'im）

ローシュ・ハッシャーナーからヨーム・キップールまでの10日間は、「畏れの日々」と呼ばれ、敬虔なユダヤ教徒は悔い改めや和解を行います。この期間は、自己を見つめ直し、過去の過ちを反省し、新たな気持ちで新年を迎えるための準備期間です。

タシュリーフ（Tašlikh）

ローシュ・ハッシャーナーの1日の午後には、タシュリーフという特別な儀式が行われます。人々は水のある場所（海岸や橋の上など）に行き、ミカ書7章18節から20節の言葉を朗読し、ポケットの中のごみを捨てます。これは、過去の罪を水に流し、新しいスタートを切ることを象徴するものです。この習慣は15世紀に始まったとされています。

ユダヤ暦と日付の注意点

ユダヤ暦では、日没とともに日が改まります。したがって、ローシュ・ハッシャーナーの日付は、西暦の日付とずれが生じます。例えば、2016年のローシュ・ハッシャーナーの第1日は、10月2日の日没から10月3日の日没まででした。また、西暦におけるローシュ・ハッシャーナーの日付は毎年変動します。例えば、2021年のローシュ・ハッシャーナーは9月6日の日没から9月8日の日没まででしたが、簡略に9月7日から8日までと表記されることもあります。

ローシュ・ハッシャーナーは、ユダヤ人にとって非常に重要な祭典であり、新しい年の始まりを祝い、自己の反省と神への信仰を深める機会です。

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