ローマ水道

古代ローマの驚異：ローマ水道

ローマ水道は、古代ローマ時代に建設された都市給水システムであり、その技術と規模は古代世界における驚異の一つです。紀元前312年から3世紀にかけて、都市や工業地帯に水を供給するために数多くの水道が建設されました。これらの水道は、古代ローマの偉大な業績として、その滅亡後1000年以上も匹敵するものがないほど高度な技術を用いていました。驚くべきことに、一部の水道は現代でも利用され、2000年以上も水を供給し続けています。

ローマ水道の技術

ローマ人は帝国中の主要都市に水道を建設し、中でもローマは最大の水道網を有していました。ローマ市内には、総延長350キロメートルに及ぶ水道が張り巡らされていましたが、そのほとんどは地下に埋設されていました。地下に建設することで、水路への動物の死骸の落下や敵の攻撃から守ることができました。最長のものは、2世紀に建設されたカルタゴのハドリアヌス水道で、その長さは141キロメートルに及びました。

ローマ水道の技術は非常に高度で、1キロメートルあたり34センチメートルというわずかな傾斜を利用し、重力のみで大量の水を効率的に運ぶことを可能にしていました。フランスのポン・デュ・ガールでは、1日に2万立方メートルもの水を供給しており、ローマ市全体では11本の水道で100万立方メートルもの水が供給されていました。これは、現代の東京の人口一人当たりの水使用量をはるかに上回る量です。この水準の水道が再び建設されるようになったのは19世紀後半になってからのことです。また、50メートル以上のくぼ地では、サイフォンの原理を利用して水を高所に持ち上げる技術も用いられていました。これらの技術は、現代の上下水道でも応用されています。

ローマ水道の構成

水道施設は、地下や地上の導水渠、連続アーチ構造の水道橋、不純物を除去する沈殿池、そして末端の分水施設などから構成されていました。これらの施設は石、ローマンコンクリート、レンガを用いて建設され、導水渠の内部には水密性を高めるために水硬性セメントが使われていました。市街地の分水施設から供給された水は、陶管、鉛管、青銅管などを通じて公衆浴場、邸宅、公共施設、噴水などに配水されていました。古代ローマの建築家ウィトルウィウスは、「水は鉛によって有害になる」と述べていたにもかかわらず、鉛管が使われることが多かったため、鉛中毒の原因になったという説もあります。

メンテナンス

ローマ水道は高度な建築技術だけでなく、故障や堆積物の除去、カルシウム析出物の除去など、包括的なメンテナンスシステムを必要としていました。これにより、長期間にわたり安定した水の供給が維持されました。

ローマ水道の衰退と現在

ローマ帝国の滅亡とともに、ローマ水道は徐々に破壊され、メンテナンス不足により機能が低下していきました。水の供給が途絶えたことで、かつて100万人以上の人口を誇ったローマ市の人口は中世には激減しました。しかし、ヴィルゴ水道など一部の水道は今でも利用されています。これらの遺跡は、ローマ水道の技術と歴史を今に伝える貴重な遺産です。

ローマ水道の一覧

ローマ市内を流れる水道

ローマの莫大な人口を支えるために、11本の水道が建設されました。これらの水道は1日に合計で112万7220立方メートル以上の水を供給していました。これらの水道のうち、6本はローマ南東郊外のアッピア街道州立公園内を通っており、そこはローマ水道橋公園として知られています。

その他の地域の水道

ローマ人は帝国中の主要都市に水道を建設しました。現在でも、多くの場所でその遺跡が残っており、中には現役で使われているものもあります。

ポン・デュ・ガール（フランス南部）
バルブガル水道（フランス）
アイフェル水道（ドイツ）
海辺のカイサリア（イスラエル-パレスチナ）
セゴビア旧市街と水道橋（スペイン）
メリダ（スペイン）
タラゴナ（スペイン）
ヴァレンス水道橋（トルコ-イスタンブール）
アウグストス水道（イタリア）
ハドリアヌス水道（チュニジア）

これらの水道は、ローマ帝国の技術力の高さを象徴するものであり、その歴史は現代の私たちにとっても多くの示唆を与えてくれます。

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