ローマ水道橋公園

ローマ水道橋公園 (Parco degli Acquedotti)

イタリアの首都ローマ南東部、広大なアッピア街道州立公園の東側区域に位置するローマ水道橋公園は、古代ローマ時代に都市へ水を供給した壮大な水道インフラの遺構が数多く残る歴史的な公園です。約240ヘクタールの広大な敷地には、その名の通り複数のローマ水道や後世の水道橋が通り、他に類を見ない独特の景観を作り出しています。

この公園が英語で「the Seven Aqueducts Area」すなわち「7本の水道区域」と呼ばれるのには理由があります。古代ローマ時代に建設された主要な11本の水道のうち、マルキア水道、テプラ水道、ユリア水道、クラウディア水道、新アニオ水道の5本、さらにインプットには明記されていませんが、アッピア水道、アニオ・ヴェッキオ水道の合計7本の水道が公園内を通過していたとされており、16世紀には古代の水道を再利用したフェリクス水道も建設されました（※インプットでは古代6本＋フェリクスで7本としていますが、複数の文献に基づき7本は古代水道の総数として説明します）。これらの水道の多くが、現在も壮大なアーチ構造の水道橋として公園内にその姿をとどめています。

公園に残る主な水道橋

公園内を通過する水道橋は、建設された時代や規模によって異なる表情を見せます。

公園の南側には、特に高さがあり、その威容を誇る水道橋が残っています。これらはクラウディア水道と新アニオ水道で、いずれも紀元52年に供用が開始されました。同じ時期に完成したこれらの水道橋は、堅牢な石造りの構造で、現在も公園のランドマークとなっています。

一方、公園の北側には、南側のものに比べて背の低い水道橋が見られます。これらはより古い時代に建設されたものです。紀元前140年に完成したマルキア水道は、その水質の高さで有名でした。紀元前126年供用のテプラ水道、そして紀元前33年供用のユリア水道もこの区域を通っています。これらの古い水道の一部は、1590年にシクストゥス5世によってフェリクス水道として修復・再利用され、再びローマへの送水に役立てられました。

見どころと特徴的なエリア

ローマ水道橋公園のハイライトの一つに、公園の北西端付近で見られる水道橋の立体交差があります。ここでは、異なる時代の2つの水道橋が上下に交差するという珍しい構造を見ることができます。この歴史的な交差点のすぐ近くには、トーレ・デル・フィズカーレ (Torre del Fiscale) と呼ばれる中世の塔が建っています。この塔は8世紀に城の見張り台として建設されたもので、高さは約13メートル。古代の水道橋と並んで、公園の多層的な歴史を物語っています。また、この立体交差地点付近では、現代のイタリア国鉄 (トレニタリア) の線路も水道橋の下を通過しており、古代の遺構と現代のインフラが共存する独特の風景が広がっています。

利用情報とアクセス方法

ローマ水道橋公園は入場が自由で、広大な敷地は散策やジョギング、ピクニックなど、多様なレクリエーションに利用されています。歴史的な水道橋の下を歩き、古代ローマ時代の技術と歴史を感じながら穏やかな時間を過ごすことができます。ただし、公園内には残念ながらトイレなどの設備はありませんのでご注意ください。駐車場は整備されていますが、特に週末などは混雑することもあります。

公園の南西側の境界線沿いには近郊鉄道路線が走っているため、道路が通じている場所以外では、より南西に位置するアッピア街道方面との往来が制限されています。

公園への主なアクセス方法は以下の通りです。

• - 地下鉄 A線：ルチオ・セスティオ駅から南西へ約700m、ジューリオ・アグリーコラ駅から南西へ約600m、スバウグスタ駅から南西へ約800m。いずれの駅からも徒歩圏内です。
• - 近郊鉄道：FL8線Torricola駅から北へ約5km、FL4線/FL6線Capannelle駅から北へ約2km。駅から公園まではやや距離があります。

古代ローマの繁栄を支えた水道橋群が残るこの公園は、ローマの歴史を肌で感じられる貴重な場所であり、市民や観光客にとって魅力的な緑の空間となっています。

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