ローマ皇帝一覧

ローマ皇帝：共和制から帝政へ、そして東西分裂

古代ローマ帝国の皇帝一覧は、現代的な視点から「正当」と見なされる皇帝を年代順に並べたものです。しかし、「ローマ皇帝」という呼称は現代的なものであり、当時の呼称や制度上の位置付けは時代によって変動しました。

アウグストゥス以降、ローマでは個人に専制的な権限を与える体制が確立されました。共和制ローマから君主制への移行は、議会政治から個人による支配への転換を意味します。しかし、アウグストゥスは元老院への配慮から共和制を建前上維持し、「共和制における独裁」を目指しました。そのため、王号などの君主号を拒否し、既存の役職や特権を独占、元老院を監督するプリンケプス・セナートゥスの終身称号を受けました。

初期のローマ皇帝も同様の戦略を取りました。独裁的な要素を持ちつつも、元老院が一定の力を維持する体制は「プリンキパトゥス（元首政）」と呼ばれ、単なる専制君主制とは異なるものと評価されています。元首政は約300年間続きましたが、セウェルス朝末期の混乱をきっかけに「3世紀の危機（軍人皇帝時代）」が到来し、帝国は荒廃しました。

この危機の中で台頭したディオクレティアヌスは、より強固な君主制を構築。強力な官僚制を整備し、皇帝が官僚を通じて人民を支配する体制を確立しました。また、プリンケプスに代わり「我らの主」を意味するドミヌス・ノステルを用いたことから、この時代以降の帝政は「ドミナートゥス（専制君主制）」と呼ばれます。

ディオクレティアヌスは、皇帝権を東西に分ける二分統治（テトラルキア制）を開始しました。東方正帝と西方正帝、そしてそれぞれの副帝という四皇帝体制です。当初は職務分担でしたが、結果的にローマ帝国の政治的分裂、西ローマ帝国と東ローマ帝国の成立につながりました。しかし、両帝国は法律上は一つの国家であり、東西の皇帝は同等の権限を有し、どちらかが亡くなれば、生き残った皇帝が両地域を統治することになっていました。

西ローマ帝国は476年（または480年）に滅亡しましたが、東ローマ帝国は存続し、中世、近世を経てオスマン帝国によって滅ぼされるまで続きました。西ローマ帝国滅亡後、法律上は東ローマ皇帝がローマ帝国全土を統治することになり、皇帝権は再統一されたと見なせます。

「正当な皇帝」の定義は複雑です。ローマ法には皇帝の正当性を定める規定はありませんでした。皇帝は様々な権限を独占した結果として成立したものであり、その選出基準も多様でした。

主な選出基準は以下の通りです。

1. 元老院からアウグストゥスの称号を正式に授与された者
2. 現職皇帝から共同統治者または補助者として権限を与えられた者
3. 上記2点に該当しないが、帝国全土を統治できるだけの権力を掌握した者

これらの基準に基づいて、歴史家は「正当な皇帝」を判断しますが、その判断は主観的であり、時代や地域、歴史家によって異なっています。

本記事で紹介する皇帝一覧は、一般的に正式な皇帝として認識されている者を列挙したものです。しかし、この一覧もあくまで一つの見解であり、様々な解釈が存在することを理解する必要があります。帝政ローマ前期、ユリウス＝クラウディウス朝、四皇帝の年、フラウィウス朝、ネルウァ＝アントニヌス朝、五皇帝の年、セウェルス朝、軍人皇帝時代、帝政ローマ後期、テトラルキア時代、コンスタンティヌス朝、ウァレンティニアヌス朝、テオドシウス朝、そして東西ローマ帝国の皇帝たち。彼らの複雑な歴史を理解することで、ローマ帝国の興亡をより深く知ることができるでしょう。

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