ローラ・T100

ローラT100：F2カーが挑んだF1の世界

ローラT100は、イギリスのローラ・カーズ社が1967年に製造したフォーミュラ2（F2）のレーシングカーです。設計は名匠エリック・ブロードレイの手によるもので、その高いポテンシャルから、F1世界選手権への参戦も果たしました。

F1世界選手権とドイツグランプリ

1967年のF1世界選手権、第7戦ドイツグランプリでは、ローラT100が3台もエントリーするという注目を集めました。ドライバーはデヴィッド・ホッブスとブライアン・レッドマン（共にF2仕様）、そしてヒューベルト・ハーネ（F1仕様）です。エンジンはホッブスとハーネがBMW製、レッドマンがコスワース製と、異なる組み合わせが用いられました。

予選では、ハーネが14番手タイムを記録するも、ポールポジションのジム・クラーク（ロータス）とは28.7秒もの差がありました。ホッブスはさらに遅れて21番手、レッドマンは予選を走らず最後尾からのスタートとなりました。決勝では、ハーネがリタイア、ホッブスはレッドマンのマシンを駆り10位でフィニッシュしました。一方、レッドマン自身はレースに出走しませんでした。

続くレースとマシン性能

数週間後、レッドマンはF2仕様のT100でインターナショナル・ゴールドカップに出場しましたが、エンジントラブルにより1周でリタイアという結果に終わります。続くスペイングランプリではF1仕様のT100で8位に入賞。優勝者クラークから2周遅れという結果でしたが、他のドライバーも相次いでエンジントラブルに見舞われる中、T100の安定性とレッドマンのドライビングスキルが光る結果となりました。このレースには、ジョー・シフェールとハーネも出場しましたが、それぞれエンジントラブルでリタイアしています。

1968年シーズンと期待の終焉

1968年には、ジョン・サーティースがレース・オブ・チャンピオンズにBMWエンジン搭載のT100で出場予定でしたが、オイル漏れのためスタート直前に断念せざるを得ませんでした。また、スペイングランプリではホルヘ・デ・バグラチオンがコスワースエンジン搭載のT100でエントリーしていましたが、マシンの準備が間に合わず出走できませんでした。

ローラT100：F1への挑戦とその後

ローラT100は、F2マシンとして設計されたにも関わらず、F1の舞台でその存在感を示しました。しかしながら、当時のF1トップチームの技術力や資金力と比較すると、その性能には限界があったと言えるでしょう。数々のレースで、ドライバーの技量とマシンの潜在能力を試される厳しい戦いとなりました。それでも、幾多の困難を乗り越え、F1の世界でその名を刻んだローラT100は、モータースポーツ史に貴重な1ページを添えたと言えるでしょう。様々なドライバーが様々な仕様で挑戦したこのマシンは、開発陣とドライバーの情熱と努力が凝縮された、まさに挑戦の歴史そのものであったと言えるのではないでしょうか。

もう一度検索