ワタリ (囲碁)

囲碁における「ワタリ」とは、自身の石を盤端に沿って、相手の石の下をくぐるように打つことで、離れている味方の石同士を繋げる手筋です。動詞では「ワタる」「渡る」と表現されます。この技術は、盤面の端に近い場所で使われるのが特徴で、中央で石を繋げる場合は「ワタリ」とは呼びません。

ワタリは、自身の石を安全に確保するための重要な手段です。例えば、相手の石に分断されそうな状況で、ワタリを打つことで、孤立していた石が繋がり、全体として強固な形を築くことができます。しかし、ワタリが必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。単に石を繋げるだけで、地を増やす効果が薄い場合もあり、このような働きが少ないワタリを「貧乏ワタリ」と呼ぶことがあります。ワタリは、石の連絡を目的とするだけでなく、全体のバランスを考慮して使うことが重要です。

以下に、ワタリの具体的な例をいくつか示します。

例1

[図] 黒石が二つ、白石に挟まれている状況。

この状況では、黒1またはaにコスむのが良い手です。このコスミによって、左右の黒石が繋がり、安全な形になります。もし、bの位置にケイマで打ってしまうと、aまたは1にツケられて、石が繋がらなくなってしまいます。

例2

[図] 白石に黒石がアテられている状況。

この状況では、黒1のアテコミが手筋となります。もし、白が2の位置で切ってきた場合、黒は3にサガることで、全体が繋がり、白石を分断することができます。

例3

[図] 黒石が離れており、間に白石がいる状況。

ここでは、黒1のケイマが味の良い連絡の手筋となります。もし、白がaに打ってきた場合、黒はbにハネることでワタリが成立します。逆に、黒1でcに打ってしまうと、白aに切られてしまい、黒の形に弱点が生じてしまいます。

例4

[図] 小目一間高ガカリ定石の状況。

この例は、小目一間高ガカリ定石の一部です。黒1のツケから黒3にツギ、ここに黒石が来たことで、黒5のワタリが成立します。この後、白がaにハネてきたとしても、黒はbの位置で切ることができ、白石を取ることができます。このように、ワタリは定石の中でも重要な役割を果たします。

ワタリは、単に石を繋げるだけでなく、その後の展開に影響を与える重要な手筋です。実戦では、様々な状況に応じて、適切なワタリを選択する必要があります。ワタリの理解を深めることで、より高度な囲碁の戦略を立てることができるでしょう。

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