ワン・ヒット

ローリング・ストーンズ「ワン・ヒット」：複雑な人間関係と豪華ミュージシャンが織りなす1曲

1986年発表のアルバム『ダーティ・ワーク』に収録され、シングルカットもされたローリング・ストーンズの楽曲「ワン・ヒット(One Hit (To the Body))」。この曲は、バンド内におけるミック・ジャガーとキース・リチャーズの対立が深刻化した時期に制作されました。そのため、ロン・ウッドも作曲に携わっており、楽曲制作過程における複雑な人間関係の一端を垣間見ることができます。

楽曲のベースは、ウッドのアコースティックギターから構築されました。彼は、リチャーズ所有のマーティンD-18（1967年製）を使用しています。そして、ギターソロには、伝説的なギタリスト、ジミー・ペイジが参加。ストーンズとペイジは長年の繋がりがあり、ペイジがスタジオミュージシャンだった1960年代半ばには、ストーンズの当時のマネージャー、アンドリュー・ルーグ・オールダムのプロジェクトにも参加しています。さらに、1965年頃、ブライアン・ジョーンズの後任としてペイジにストーンズへの加入を打診していたという逸話も残っています。しかし、「ワン・ヒット」が、ペイジが初めてストーンズのレコーディングに参加した作品となりました。

バックコーラス陣も豪華です。アメリカのソウル歌手であるボビー・ウーマックとドン・コヴェイに加え、女優のビヴァリー・ダンジェロ、そしてブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドのメンバーで、後にスプリングスティーンの妻となるパティ・シャルファも参加しています。多様な音楽的バックグラウンドを持つミュージシャンが集結したことで、楽曲に深みと奥行きが加えられています。

ラッセル・マルケイ監督によるプロモーションビデオも制作されました。このビデオでは、ジャガーとリチャーズが当時の険悪な関係を反映するかのように、互いに体を激しくぶつけ合うシーンも収録されています。また、プロデューサーのスティーヴ・リリーホワイトによる「ロンドン・ミックス」バージョンも存在し、12インチシングルとしてリリースされました。さらにシングル盤のジャケットには、衝撃的なグロテスクなイラストが使用されたことでも話題となりました。

ライブパフォーマンスでは、1989年の「スティール・ホイールズ／アーバン・ジャングル・ツアー」と1995年の「ヴードゥー・ラウンジ・ツアー」で披露されましたが、これらのライブ音源や映像は、公式ライブ作品には収録されていません。これは、当時の複雑なバンド内状況や、楽曲自体の持つ特殊性などを反映しているのかもしれません。

楽曲を支えたレコーディングメンバーは以下の通りです。

リードボーカル：ミック・ジャガー
エレキギター（リズム）、アコースティックギター、バッキングボーカル：キース・リチャーズ、ロン・ウッド
ベース：ビル・ワイマン、ジョン・レーガン
ドラムス：チャーリー・ワッツ
キーボード：チャック・リーヴェル
バッキングボーカル：ボビー・ウーマック、ドン・コヴェイ、パティ・シャルファ、ビヴァリー・ダンジェロ
* エレキギター（リード）：ジミー・ペイジ

「ワン・ヒット」は、ローリング・ストーンズの複雑な人間関係、そして豪華なミュージシャン陣の共演によって生まれた、唯一無二の楽曲と言えるでしょう。その音楽性だけでなく、制作背景やプロモーションビデオ、ライブパフォーマンスといった様々な側面から、この楽曲の魅力を探求していくことは、ストーンズの歴史を理解する上で非常に重要な意味を持つと言えるでしょう。

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