ワークシェアリング

ワークシェアリングについて

ワークシェアリング（work sharing）は、労働者同士が雇用を共有する仕組みです。主に各人の労働時間を短縮することによって、雇用機会を維持または増加させることを目的としています。日本でも「ワーキングシェア」や「ワークシェア」という言葉が広く使われており、労働環境の改善を目指す試みの一部とされています。

ワークシェアリングの種類

内閣府によると、ワークシェアリングには主に二つのタイプがあります。

1. 雇用維持型
- 不況時においても雇用を守るために、一人当たりの労働時間を短縮して、企業全体での雇用を維持する方法。ドイツがこのモデルの代表例として挙げられます。

2. 雇用創出型
- 様々な業務に対して短時間労働を組み合わせることによって、新たに雇用機会を生み出す手法。オランダはこの手法で成功を収めています。

また、アメリカ合衆国内国歳入庁はワークシェアリングの形態を六つの類型に分けています。これには、週の労働時間の短縮やジョブシェアリングなどが含まれており、働き方の多様性を広げる役割を果たしています。

歴史的背景

ワークシェアリングの重要性が高まった背景には、労働市場の悪化や過労死、失業問題が存在します。これらの課題に対処するために、マクロ経済政策の一環としてワークシェアリングが注目されてきました。特に、急激な経済変動において雇用を安定させる手段として評価されています。

インサイダー・アウトサイダー理論

この理論においては、雇用が保証されている「インサイダー」と、労働市場から排除された「アウトサイダー」の二つのカテゴリーが存在します。インサイダーは安定した賃金を享受している一方で、アウトサイダーは就業機会を失って長期的な失業状態に苦しむことが多いです。これは、経済的な不均衡を生む要因ともなります。

ワークシェアリングの効果と課題

近年の研究によれば、ワークシェアリングを導入することで雇用が増加する傾向にあるとされています。しかし、その効果は他の政策や制度との相互作用によって変化し、単独での政策としての有効性には注意が必要です。また、ワークシェアリングは多様な働き方を可能にし、自己研鑽の時間を増やす一方で、給与の減少が生活水準に悪影響を及ぼすリスクも抱えています。

特に、日本においては、正規雇用者と非正規雇用者の待遇の差が問題視されており、制度を導入する際には双方の協議が不可欠です。現在、日本では短時間正社員制度が導入されつつありますが、労働効率の改善と公平感の確保が課題として残っています。

各国の取り組み例

イギリス

イギリスでは、1977年に早期退職制度が導入され、労働市場の調整を進めてきました。1987年にはフルタイム労働を分割する制度も導入されています。

オランダ

1980年代の不況を切り抜けるため、1982年に「ワッセナー合意」が結ばれた。この合意によって社会保障費の軽減や賃金抑制が合意され、ワークシェアリングが進展しました。

ドイツ

ドイツでは、労働組合の協力によって、企業が雇用を維持するための労使協定が結ばれています。これにより、不況時にも雇用が守られる取り組みが行われています。

米国

現在、米国においてはトヨタなどがワークシェアリングに取り組んでおり、その成果が注目されています。

日本

日本でも、大分県姫島村などではワークシェアリングが導入されており、一定の成果を挙げています。しかしながら、政策の提示や実施にあたっては多くの障壁があることから、さらなる議論と対応が求められています。

結論

ワークシェアリングは、労働者が直面する失業や過労の問題に対処するための一つの手段となりますが、その導入には政治的、社会的な合意が不可欠です。労働市場の変革を図る中で、今後の取り組みに対する注目が集まります。

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