ヴァシリー・シナイスキー

ヴァシリー・セラフィモヴィチ・シナイスキー（Vassily Serafimovich Sinaisky）は、1947年4月20日にロシア・コミ共和国で生まれた、ロシアを代表する指揮者、ピアニストです。

経歴

シナイスキーは、レニングラード音楽院でイリヤ・ムーシンに師事し、指揮法を学びました。その後、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団でキリル・コンドラシンの助手を務め、指揮者としてのキャリアをスタートさせました。1973年には、西ベルリンのカラヤン・コンクールで金メダルを受賞し、国際的な注目を集めました。

1991年から1996年まで、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務め、その後もラトビア交響楽団の首席指揮者、オランダ・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者などを歴任しました。また、ロシア国立交響楽団（旧ソ連国立交響楽団）の音楽監督にも任命され、2002年までその任を務めました。

1996年からはBBCフィルハーモニックの首席客演指揮者を務め、定期的にプロムスにも出演しています。ボリショイ劇場の首席客演指揮者、音楽監督（2010年 - 2013年）も務め、ウェールズ・ナショナル・オペラとは、チャイコフスキーのオペラ『イオランタ』を度々上演しています。近年では、イングリッシュ・ナショナル・オペラで『カルメン』や『ばらの騎士』を指揮し、高い評価を得ています。2007年1月から2011年まで、マルメ交響楽団の首席指揮者を務めました。

シナイスキーは、シャンドス・レコーズと契約し、BBCフィルハーモニックを指揮して、バラキレフ、リャードフ、シュレーカー、シマノフスキ、シチェドリンなどの作品を録音しています。また、ショスタコーヴィチの映画音楽シリーズにも取り組んでいます。

2022年ロシアのウクライナ侵攻の影響

2022年2月28日、シナイスキーは、自身が首席指揮者を務めるチェコのヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団の公式サイトで、ロシアのウクライナ侵攻を非難する声明を発表しました。その中で、「何千人もの人々に悲しみと悲劇をもたらすだけの、主権国家への卑劣な侵略であるように感じる」と述べています。また、自身の祖父がウクライナ人であること、ウクライナの指揮者や作曲家との親交などを通じて、ウクライナ人の祖国に対する愛情や「純粋で、力強く、明るい性格」を感じていると語りました。

同年6月3日、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団は、同月4日に予定されていたコンサートを中止しました。楽団は、シナイスキーの健康上の理由であるとしていますが、これに先立ち、テレグラムチャンネル「Культурный фронт Z(Cultural Front Z)」が、シナイスキーを「ろくでなし」「自ら非難する国で金儲けを続けている」などと非難する投稿をしていたことも報じられました。投稿者は、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団の共同出資者であるロスネフチ会長のイーゴリ・セーチンに「公演の中止」を促すよう訴え、複数のメディアがシナイスキーを非難する報道を行いました。公演中止発表後、投稿者は閲覧者に「応援してくれてありがとう」と感謝の言葉を述べています。

もう一度検索