シャンドス

シャンドス・レコード：卓越した音響技術と幅広いレパートリーを誇る名門レーベル

シャンドス・レコードは、1979年にイギリスの実業家ブライアン・カズンズによって設立された、クラシック音楽専門のインディペンデント・レコードレーベルです。現在は、ブライアンの息子であるラルフ・カズンズがマネージング・ディレクターを務め、イングランドのコルチェスターにあるオフィスで収録が行われています。

レーベル名の由来

「シャンドス」という名称は、初代シャンドス公爵ジェームズ・ブリッジスに由来します。シャンドス公爵が所有していた邸宅「カノンズ」には、かつてヘンデルが宮廷作曲家として仕え、数々の名作を生み出しました。また、ロンドンのシャンドス・プレイス通りも公爵の名にちなんでおり、シャンドス・レコードは当初、その通り沿いの「シャンドス・ハウス」にオフィスを構えていました。さらに、BBCの音楽クラブ「シャンドス・クラブ」とヘンデルの「シャンドス・アンセム」も、レーベル名に影響を与えたとされています。

シャンドス・レコードの誕生

シャンドスは、1963年設立のバンド・ミュージック出版社「シャンドス・ミュージック」と、1970年設立のレコード制作会社「シャンドス・プロダクションズ」をルーツとしています。ブライアン・カズンズは、フリーの音楽プロデューサー兼エンジニアとして、シャンドス・プロダクションズでRCAのイギリスにおけるクラシック音楽レーベルのLP制作を手がけていました。1979年、RCAがロンドンでの業務から撤退したことを受け、ブライアンはシャンドス・レコードを設立しました。

シャンドス・サウンドの確立

1983年以降、CDの普及とともにシャンドスは業績を拡大しました。特に、専用の録音施設と高い技術力によって生み出される音質の高さは定評があり、「シャンドス・サウンド」と称されています。指揮者のジェフリー・サイモンは、ブライアン・カズンズを「常人には聞こえない音を聴き分けることができる優れたエンジニアだった」と評しています。

デジタル配信への先駆的な取り組み

2005年には、クラシックレーベルとして初めてMP3形式でのダウンロード販売を開始しました。シャンドスのダウンロードサイト「The Classical Shop」では、現在ではNaxos、LSO Liveなど、270を超えるレーベルの音源を販売しています。CD市場の縮小に伴い、社屋の移転やスタッフ削減を余儀なくされていたシャンドスにとって、このダウンロード販売は経営を立て直す上での大きな転換点となりました。

多彩なレパートリー

初期はイギリス音楽に特化していましたが、現在では、著名な作曲家の作品はもちろんのこと、ハーバート・ハウエルズ、ジェラルド・フィンジ、チャールズ・スタンフォード、アーノルド・バックスなど、あまり知られていないイギリスの作曲家の作品も数多く取り扱っています。リチャード・ヒコックス、ジャナンドレア・ノセダ、ネーメ・ヤルヴィ、ヴァーノン・ハンドリーといった著名な指揮者がこれらの作品を録音しています。

新人アーティストの発掘

シャンドスは設立当初から新人アーティストの発掘にも力を入れており、マリス・ヤンソンス、ナイジェル・ケネディ、キングズ・シンガーズといったアーティストが、後にEMIと契約する前にシャンドスで作品をリリースしました。

古楽、映画音楽、オペラへの展開

1989年には古楽専門レーベル「シャコンヌ」を設立し、パーセル・カルテット、コレギウム・ムジクム90といったアーティストの演奏をリリースしています。「シャンドス・ムービーズ」は映画音楽専門のシリーズで、過去の映画音楽のスコアを復元し、オリジナル版の録音を提供しています。また、「オペラ・イン・イングリッシュ」レーベルはピーター・ムーアズ基金の援助を受けて1990年に開始され、イギリス国外でも高い評価を得ています。

主要アーティストと独占契約

シャンドスは、チャールズ・マッケラス、レベッカ・エヴァンス、ジュリアン・ロイド・ウェバー、アランオピエ、タスミン・リトル、ブルース・フォード、バリー・バンクス、クリスティーネ・ブリューワー、レスリー・ギャレット、オラシオ・グティエレス、ネーメ・ヤルヴィ、サイモン・キーンリーサイド、宇田川杰子、アレクサンドル・ナウメンコなど、数多くの著名アーティストと作品をリリースしています。

また、BBC交響楽団、指揮者のリチャード・ヒコックス、ピアニストのジャン＝エフラム・バヴゼとは、録音に関して独占的なパートナーシップ契約を締結しています。

受賞歴

シャンドスは、グラモフォン賞の交響曲部門（2001年）、合唱曲部門（2003年）を受賞したほか、グラミー賞も5度受賞しています。特に、ベンジャミン・ブリテンのオペラ『ピーター・グライムズ』（1997年）とエンゲルベルト・フンパーディンクのオペラ『ヘンゼルとグレーテル』（2008年）で最優秀オペラ・レコーディング賞を受賞したことは特筆に値します。

シャンドス・レコードは、その卓越した録音技術と幅広いレパートリーで、クラシック音楽ファンに愛されるレーベルであり続けています。

外部リンク

Chandos web site (英語)
The Classical Shop (ダウンロードサイト)

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