ヴァシーリー・ポヤルコフ

ヴァシーリー・ダニーロヴィチ・ポヤルコフの探検

ヴァシーリー・ダニーロヴィチ・ポヤルコフ（ポヤールコフ）は、17世紀に活躍したロシアの探検家であり、アムール川流域の探検を通じて重要な地理的情報をもたらしました。彼はロシア人として初めてこの地域を探索した人物で、彼の探検はロシアの極東地域における支配の拡大に寄与しました。

ロシアの極東征服の背景

ロシアの極東への進出は1582年のシビル・ハン国征服から始まり、探検隊の活動はその後急速に拡大しました。特に、コサックたちは川を使ってシベリアを横断することにより、その支配範囲を広げました。早くも1639年にはイヴァン・モスクヴィチンがオホーツク海に到達し、続く1643年にはセミョーン・シェルコヴニコフがオホーツクに町を造りました。しかし、これまでの探検ではタイガに覆われた寒冷地域が多く、エニセイ川以東では農業が行えない土地が大多数でした。

例外的にダウリヤ地方が農業に適していたものの、そこに住む人々は中国や女真によって統治され、彼らに貢納を行っていました。そのため、ポヤルコフはこの地域の探検を命じられました。

ポヤルコフの探検隊

1640年、ポヤルコフはヤクーツクで「pismenyy golova」という役職に就いていました。彼は1643年にピョートル・ゴロヴィンというヴォエヴォダから指令を受け、「まだ貢納を行っていない人々を探し、関税を徴収せよ」という目標を与えられました。彼は133名の隊員を引き連れて出発し、レナ川からアルダン川、さらにウチュル川やゴナム川へと航行しました。進行中、彼らは何度も船を運びながら丘を越え、かなりの時間を失ってしまいました。結果、初冬の季節を迎えました。

ポヤルコフは49名の隊員を越冬隊として残し、さらに南下しました。12月にはアムール川の支流ゼヤ川周辺に到着し、そこには農業を営むダウール族の住居がありました。ポヤルコフは越冬のために要塞を築きましたが、住民からの食料調達において残忍な態度を示し、対立が激化しました。その結果、彼らは食料を得ることができず、飢えに苦しむ事態に陥ります。

極寒と戦い

1644年の春、彼らは生存者が40名ほどになっていましたが、北からの侵入者の噂が広がり、アムール川を下る際には多くの敵と遭遇しました。秋にはアムール川河口近くのギリヤーク族の地域に到達しましたが、過去の経路を戻ることは避け、安全な帰路を探さなければなりませんでした。

その冬、彼らは船を製作し、1645年にアムール川からオホーツク海へと向かいました。ウリヤ川の河口に到着した際には、六年前にモスクヴィチン一行が越冬した小屋の跡を見つけ、そこで再び越冬しました。1646年春、ポヤルコフは遺された隊員たちとともにアムールからヤクーツクへ戻ることに成功しました。この探検は、彼がヤクーツクを発ってから3年が経過していたことを示しています。

探検の成果とその後

ポヤルコフの探検によって得られた地理や民族に関する情報は非常に重要でした。彼は黒竜江沿岸の豊かさについて詳細に報告しており、特に食糧問題に苦しんでいたロシア政府にとって喜ばしい内容でした。

しかし、ポヤルコフの帰還後、彼には報酬が与えられることはなく、ヤクーツクのヴォイヴォダによってモスクワに送られました。その後の彼の運命については詳細が不明です。この頃、エロフェイ・ハバロフ率いる別の探検隊がアムール地域に派遣され、ポヤルコフの探検が清とロシアの国境を巡る緊張の始まりとなりました。

記念碑と評価

2001年にはロシア中央銀行がポヤルコフを記念した50ルーブルコインを発行しました。また、アムール州にはポヤルコフの名を冠した町も存在します。彼の記録は、極東シベリア史において欠かせない一部となっており、彼の業績は今なお評価されています。

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