ヴィチナンキ

ヴィチナンキ（[vɨt͡ɕiˈnaŋkʲi]）は、ベラルーシ、ポーランド、ウクライナといった東ヨーロッパ地域に伝わる、伝統的な切り絵の技法、およびその芸術形態を指します。それぞれの国や地域で、異なる歴史や文化を背景に独自の発展を遂げてきました。

ベラルーシ

ベラルーシでは、「vycinanka」「vycinanki」「vyrazanka」「vystryhanka」など、複数の綴り方が見られます。ヴィアチェスラフ・ドゥビンカ氏は、ベラルーシにおけるヴィチナンキ復興の立役者として知られています。彼はハサミを使った切り絵のフォークアートを再興させ、国際的な大会で数々の賞を受賞。カレンダー、名刺、メモ帳、葉書など、様々な物を装飾した作品を何千枚も制作しました。その功績が認められ、2024年にはベラルーシのヴィチナンキがユネスコの無形文化遺産に登録されました。

ポーランド

ポーランドでは、ヴィチナンキは19世紀半ばに人気のフォークアートとして確立しました。その起源は、羊飼いが樹皮や皮革から模様を切り抜いたことに遡ると言われています。色鮮やかなヴィチナンキは、家具や屋根の梁の装飾として用いられたり、窓に吊るされたり、贈り物として贈られたりしました。地域によってその形態は異なり、例えば、クルピエ地域で作られるヴィチナンキは一般的に単色ですが、ウォヴィチ地域で作られるものは多色であることが特徴です。技法も様々で、紙の切り取り、切り抜き、パンチ、破り、彫るなどの技法に加え、「ナレピアンキ」と呼ばれる、何層にも重ねて接着する技法も用いられます。題材としては、クジャク、雄鶏などの鳥類、円形や星形のメダル、花、そして復活祭やクリスマスなどの年中行事がモチーフとしてよく用いられます。一部の町や村では、最も美しいヴィチナンキを作るための競技会も開催されてきました。農村で親しまれてきた伝統的な遊びは、世代を超えて受け継がれ、切り絵がより詳細で複雑になるにつれて、新しいテーマやアイデアが生まれていきました。2010年に開催された上海国際博覧会では、ポーランドのパビリオンがヴィチナンキのデザインをモチーフにしたことで話題となりました。

ウクライナ

ウクライナでは、ヴィチナンキは15世紀末から16世紀初頭に始まったと考えられていますが、装飾に不可欠な要素になるには時間を要しました。19世紀には、ウクライナの農村地域全体に装飾的な切り絵が広がりました。「vytynanky」という言葉は20世紀初頭に普及しましたが、「stryhuntsi」「khrestyky」「kvity」など、地域によって異なる呼び方も存在します。モチーフは多岐にわたり、人物、動物、植物を様式化したものが一般的です。民族誌学者や美術史家がヴィチナンキを研究し、芸術家がその中にインスピレーションを求めたことで、記事や論文が発表され、ヴィチナンキが収集されるようになりました。その後、ヴィチナンキは、ウクライナの伝統的な陶磁器、刺繍、絨毯などとともに、装飾や応用芸術の展覧会で展示されるようになりました。

祭や祝日に作られるヴィチナンキは、日常的に使用されるものよりもデザインが凝っています。クリスマスや復活祭では、天使や教会の形をした切り絵が壁に飾られます。結婚式では、鳩、花、生命の木をモチーフにしたヴィチナンキがよく見られます。

ヴィチナンキは、それぞれの地域で独自の発展を遂げ、人々の生活や文化と深く結びついてきた、貴重な文化遺産と言えるでしょう。

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