ヴィッラフランカの戦い (1744年)

ヴィッラフランカの戦い：1744年、オーストリア継承戦争下の激戦

ヴィッラフランカの戦いは、1744年4月20日に、オーストリア継承戦争の一環として勃発しました。スペインとフランスの連合軍がサルデーニャ王国へ侵攻したことがきっかけとなり、イギリス・サルデーニャ連合軍との間で激しい戦闘が繰り広げられました。この戦いは、当時のヨーロッパの勢力図を大きく揺るがすことになります。

戦争の背景：イタリア戦線の状況

1744年のイタリア戦線は、スペインにとって非常に厳しい状況でした。モンテマール公爵率いるスペイン軍は、オーストリア軍の攻勢に押され続け、ナポリ王国さえも脅かされる事態となっていました。イギリスは、地中海の制海権を掌握し、スペインの海上輸送を妨害、ジェノヴァを封鎖しました。スイスもまた、軍の通過を拒否し、国境を閉鎖するという措置を取りました。フェリペ王子の軍勢は、同盟国であるフランス領を通過し、サヴォイアを容易に制圧したものの、補給が滞り、サルデーニャ軍が待ち構えるアルプス山脈への進軍は困難を極めました。

2月22日、フランス・スペイン連合艦隊は、トゥーロンの海戦でイギリス艦隊に勝利し、一時的に制海権を奪取しました。これにより、フェリペ王子の軍勢は十分な補給を受けることが可能となりました。その後、コンティ公ルイ・フランソワ1世率いるフランス軍2万人がフェリペ軍2万人と合流し、ロンバルディアへと進軍、南方にいるスペイン軍との合流を目指しました。4月1日、連合軍はヴァル川を渡り、抵抗を受けることなくニースに入城。ヴィッラフランカは、その隣に位置していました。

戦闘の経過：激戦の末、連合軍が撤退

サルデーニャ王カルロ・エマヌエーレ3世の弟であるスーザ侯爵ヴィットーリオ・フランチェスコ・フィリッポ・ディ・サヴォイア率いるサルデーニャ軍は、ヴィッラフランカの高地に陣を構えました。侵攻してくる敵軍は、サルデーニャ軍の砲火に晒されながら、断崖絶壁を登らなければなりませんでした。港に停泊していたイギリス船11隻からは、大砲80門が陸揚げされ、11の砲台に配備されました。サルデーニャ軍は、歩兵14個大隊を有していました。イギリス軍もマシューズ提督の指揮下、正規軍、海兵隊、砲兵隊などを上陸させ、サルデーニャ軍の守備を強化しました。

コンティ公は4月14日に攻撃を開始しましたが、嵐によって中止を余儀なくされました。その後、4月19日から20日にかけての夜、ヴィッラフランカの陣地に対し強襲を仕掛けました。初期の攻撃では、フランス軍とスペイン軍が大きな成功を収め、サルデーニャ軍の5個大隊を壊滅させ、スーザ侯爵自身も捕虜となるという事態に陥りました。しかし、副官のチンザノが指揮を引き継ぎ、モント・グロス、モント・ルージェ、モント・リューゼといった要地の占領を阻止しました。特に、サルデーニャが雇ったスイスのカルベルマッテン連隊は、モント・リューゼの維持に大きく貢献しました。16時までにサルデーニャ軍は態勢を立て直し、コンティ公は攻撃に使える兵力を使い果たしてしまいました。チンザノは擲弾兵部隊などを率いてヴィッラフランカを奪還し、ニースへの通路を確保しました。夜にはサルデーニャ軍は元の陣地に戻りました。

戦闘後：戦略的撤退とその後

戦闘の結果、守備軍は大きな損害を受けました。死傷者は1,000人以上、捕虜は1,500人に達しました。一方、スペイン・フランス連合軍の損害は3,000人以下、捕虜は433人でした。戦闘に適する兵士が約5,000人しかいなかったため、チンザノはイギリス艦隊の助けを借りてヴィッラフランカを放棄することを決断しました。4月21日夜、ヴィッラフランカの駐留軍はイギリス船4隻の護衛を受けた33隻の船に乗り込み、翌朝に出航しました。チンザノはヴィッラフランカの城塞に340人の駐留軍を残しましたが、彼らは4月27日に降伏しました。コンティ公は、リグーリア海岸の征服に数ヶ月を要すると判断し、7月にアルプス攻略を選択。その結果、イタリア戦線の突破とクーネオの包囲という結果をもたらしました。

ヴィッラフランカの戦いは、戦略的な勝利とは言えないまでも、その後の戦局に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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