ヴィテルボのアンニウス
ヴィテルボのアンニウス（Annius of Viterbo, 1432年 - 1502年11月13日）は、本名をジョヴァンニ・ナンニといい、ドミニコ会修道士、学者、歴史家として知られています。しかし、現在では古代の文献を捏造した偽書制作者として悪名高い人物です。
アンニウスは、ドミニコ会に入り、説教師、著述家として名を馳せました。その才能は、シクストゥス4世やアレクサンデル6世にも認められ、重用されました。アレクサンデル6世からは、聖庁主管にも任命されています。チェーザレ・ボルジアによって毒殺されたという説も存在します。
アンニウスは、東洋の言語に通じていたとされています。しかし、ウォルター・スティーヴンスは、「彼のセム文献学に関する専門知識は、かつては素晴らしい教会の歴史家として称賛されたものの、完全な作り物であった」と指摘しています。アンニウスは、エトルリア語を読解できるとも主張していました。
アンニウスの最も有名な著作は『古代雑篇』"Antiquitatum Variarum"です。この著作の中で、彼はギリシア・ラテンの世俗著述家によるものとされる文書や断片を公表しました。これらの文書は、当時知られていた「古代史」に新たな解釈を加えるものでした。アンニウスは、これらの文書をマントヴァで発見したと主張しました。
その他の著作には、シクストゥス4世やキリスト教の君主たちに献呈された黙示録注解『来るべきキリスト教徒のトルコ・サラセン人たちに対する勝利』"De futuris Christianorum triumphis in Turcos et Saracenos"や『トルコ帝国論』"Tractatus de imperio Turcorum"などがあります。彼は、ムハンマドを反キリストとみなし、キリスト教徒によるユダヤ教徒やイスラム教徒の征服後に世界の終わりが訪れると主張しました。
アンニウスは、聖書の解釈にも独自の視点を持っており、『マタイによる福音書』と『ルカによる福音書』における系譜の違いについての考察は、彼の代表的な業績の一つです。
未発表の著作としては、エトルリア人の歴史に関する『エトルリア人の古事と業績に関する七十巻』"Volumen libris septuaginta distinctum de antiquitatibus et gestis Etruscorum"、年代記の校正に関する『年代記の印刷上の修正について』"De correctione typographica chronicorum"、そしてエウセビオスの著作のアナクロニズムを修正しようとした『新年代記』"Chronologia Nova"があります。
しかし、アンニウスが最も悪名を馳せたのは、古代ローマの地誌と歴史に関する文書群です。1498年にローマで出版された『最古の著述家たち』"Auctores vetustissimi"は、古典時代のものとされた17の文書の集成でしたが、実際には、すべてアンニウス自身による捏造でした。例えば、ロムルスによるローマの地図も、アンニウスが捏造した文書に基づいた解釈によるものです。これらの偽造文書の一部は、ヴィテルボがエトルリアのFanum voltumnaeの地であることを立証しようとする意図があったとされています。
教皇の公営質屋であるモンテ・ディ・ピエタを擁護するため、アンニウスは1495年に『モンテ・ディ・ピエタについて』"Pro Monte Pietatis"を出版し、ユダヤ人の高利貸しを批判しました。
『古代雑篇』は、当初は多くの信奉者を得ましたが、すぐにアンニウスが意図的に改竄・捏造を行ったとする批判にさらされました。その内容は、ベロッソス、クィントゥス・ファビウス・ピクトル、カトー、マネトなどの著作であるとされていましたが、実際にはアンニウス自身による捏造でした。
アンニウスによる「歴史家」の偽造文書は、多くの場合、彼自身が注釈を加えたり、加えなかったりしたものの、長い間疑われることはありませんでした。偽造文書の権威を崩壊させたのは、ヨセフ・ユストゥス・スカリゲルによる功績が大きいとされています。
16世紀半ばには、アンニウスの捏造が明らかになり始めました。1565年から1566年にかけて、人文主義者のジローラモ・メイは、ヴィンチェンツォ・ボルジーニとの間で史料批判論争を行いました。ボルジーニは、フィレンツェがアウグストゥスによって創設されたと主張し、その根拠をアンニウスが提示した碑文に求めました。しかし、メイは、アンニウスの史料の正当性を疑い、アンニウスの史料が捏造であることを指摘しました。
アンニウスの生涯は、ルネサンス期の神話、アレゴリー、そしてエトルリアに対する関心を理解する上で重要な要素を提供します。
アンニウスの生涯と盛期ルネサンスにおける神話とアレゴリーに対する影響、そしてエトルリアに対する初期の興味についてのさまざまな側面からの論考はAnnio da Viterbo, Documenti e ricerche. Rome: Multigrafica Editrice, 1981に掲載されています。
Benjamin Anderson, curator. The invention of Antiquity:"The landscape of ancient Rome" Bryn Mawr exhibition, 2004
Auctores vetustissimi 1498 Woodcut of Rome illustrated in Bryn Mawr's copy
"Annius of Viterbo" ("It would appear that he was too credulous, and really believed the texts to be authentic.")
Encyclopaedia Britannica 1911: "Viterbo"
Dennis E. Rhodes, "Four Italian Judaica incunabula: Pro Monte Pietatis"
Guy Shaked, "Girolamo Mei's biography" - ウェイバックマシン（2005年4月2日アーカイブ分）
"L'appartamento Borgia in Vaticano"
Nicholas Temple, "Heritage and Forgery: Annio da Viterbo and the Quest for the Authentic”, Public Archaeology (Vol.II/3), 2002
* Acadine Archive page
教会でのキャリア
アンニウスは、ドミニコ会に入り、説教師、著述家として名を馳せました。その才能は、シクストゥス4世やアレクサンデル6世にも認められ、重用されました。アレクサンデル6世からは、聖庁主管にも任命されています。チェーザレ・ボルジアによって毒殺されたという説も存在します。
言語学者としての側面
アンニウスは、東洋の言語に通じていたとされています。しかし、ウォルター・スティーヴンスは、「彼のセム文献学に関する専門知識は、かつては素晴らしい教会の歴史家として称賛されたものの、完全な作り物であった」と指摘しています。アンニウスは、エトルリア語を読解できるとも主張していました。
著作
アンニウスの最も有名な著作は『古代雑篇』"Antiquitatum Variarum"です。この著作の中で、彼はギリシア・ラテンの世俗著述家によるものとされる文書や断片を公表しました。これらの文書は、当時知られていた「古代史」に新たな解釈を加えるものでした。アンニウスは、これらの文書をマントヴァで発見したと主張しました。
その他の著作には、シクストゥス4世やキリスト教の君主たちに献呈された黙示録注解『来るべきキリスト教徒のトルコ・サラセン人たちに対する勝利』"De futuris Christianorum triumphis in Turcos et Saracenos"や『トルコ帝国論』"Tractatus de imperio Turcorum"などがあります。彼は、ムハンマドを反キリストとみなし、キリスト教徒によるユダヤ教徒やイスラム教徒の征服後に世界の終わりが訪れると主張しました。
アンニウスは、聖書の解釈にも独自の視点を持っており、『マタイによる福音書』と『ルカによる福音書』における系譜の違いについての考察は、彼の代表的な業績の一つです。
未発表の著作としては、エトルリア人の歴史に関する『エトルリア人の古事と業績に関する七十巻』"Volumen libris septuaginta distinctum de antiquitatibus et gestis Etruscorum"、年代記の校正に関する『年代記の印刷上の修正について』"De correctione typographica chronicorum"、そしてエウセビオスの著作のアナクロニズムを修正しようとした『新年代記』"Chronologia Nova"があります。
しかし、アンニウスが最も悪名を馳せたのは、古代ローマの地誌と歴史に関する文書群です。1498年にローマで出版された『最古の著述家たち』"Auctores vetustissimi"は、古典時代のものとされた17の文書の集成でしたが、実際には、すべてアンニウス自身による捏造でした。例えば、ロムルスによるローマの地図も、アンニウスが捏造した文書に基づいた解釈によるものです。これらの偽造文書の一部は、ヴィテルボがエトルリアのFanum voltumnaeの地であることを立証しようとする意図があったとされています。
教皇の公営質屋であるモンテ・ディ・ピエタを擁護するため、アンニウスは1495年に『モンテ・ディ・ピエタについて』"Pro Monte Pietatis"を出版し、ユダヤ人の高利貸しを批判しました。
捏造の発覚
『古代雑篇』は、当初は多くの信奉者を得ましたが、すぐにアンニウスが意図的に改竄・捏造を行ったとする批判にさらされました。その内容は、ベロッソス、クィントゥス・ファビウス・ピクトル、カトー、マネトなどの著作であるとされていましたが、実際にはアンニウス自身による捏造でした。
アンニウスによる「歴史家」の偽造文書は、多くの場合、彼自身が注釈を加えたり、加えなかったりしたものの、長い間疑われることはありませんでした。偽造文書の権威を崩壊させたのは、ヨセフ・ユストゥス・スカリゲルによる功績が大きいとされています。
16世紀半ばには、アンニウスの捏造が明らかになり始めました。1565年から1566年にかけて、人文主義者のジローラモ・メイは、ヴィンチェンツォ・ボルジーニとの間で史料批判論争を行いました。ボルジーニは、フィレンツェがアウグストゥスによって創設されたと主張し、その根拠をアンニウスが提示した碑文に求めました。しかし、メイは、アンニウスの史料の正当性を疑い、アンニウスの史料が捏造であることを指摘しました。
アンニウスの生涯は、ルネサンス期の神話、アレゴリー、そしてエトルリアに対する関心を理解する上で重要な要素を提供します。
参考文献
アンニウスの生涯と盛期ルネサンスにおける神話とアレゴリーに対する影響、そしてエトルリアに対する初期の興味についてのさまざまな側面からの論考はAnnio da Viterbo, Documenti e ricerche. Rome: Multigrafica Editrice, 1981に掲載されています。
外部リンク
Benjamin Anderson, curator. The invention of Antiquity:"The landscape of ancient Rome" Bryn Mawr exhibition, 2004
Auctores vetustissimi 1498 Woodcut of Rome illustrated in Bryn Mawr's copy
"Annius of Viterbo" ("It would appear that he was too credulous, and really believed the texts to be authentic.")
Encyclopaedia Britannica 1911: "Viterbo"
Dennis E. Rhodes, "Four Italian Judaica incunabula: Pro Monte Pietatis"
Guy Shaked, "Girolamo Mei's biography" - ウェイバックマシン（2005年4月2日アーカイブ分）
"L'appartamento Borgia in Vaticano"
Nicholas Temple, "Heritage and Forgery: Annio da Viterbo and the Quest for the Authentic”, Public Archaeology (Vol.II/3), 2002
* Acadine Archive page
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